アメリカである女性がピアノを弾く動画に多くの人々が「美しい」「心が温まった」とコメントし、涙する人が続出している。演奏会場はコンサートホールではなく民家のリビングで、女性のピアノ演奏を聴いている観客は彼女の祖父で、一見すると自宅でピアノを弾く孫娘とその演奏を楽しむ祖父という日常のワンシーンだ。ただ一点だけ、祖父が孫娘のことを「見ず知らずの女性」と思っていることを除いては。愛する人の存在を忘れてしまっても、ピアノの音色が互いの間にある確かな絆を示してくれた。そんな穏やかで美しい瞬間をとらえた動画が見る人の心を温かくしている。『The Independent』などが伝えた。
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米カリフォルニア州ロサンゼルスでコンテンツクリエイターとして活躍するシェーラ・オーさん(Sheela Awe)は先月24日、TikTokに1本の動画を投稿した。
そこには滑らかな手つきでピアノを弾くシェーラさんの姿があった。画面上には「私の祖父は93歳で、アルツハイマー型認知症です。10分おきに私が誰なのか、どこから来たのかと尋ねます」と書かれている。シェーラさんの祖父は認知症の影響で、孫であるシェーラさんのことを忘れてしまっているのだ。
そんな祖父がシェーラさんの弾くピアノの音を聞き、誰が弾いているのかと隣の部屋からドアを開けてやって来た。ドアを開けて演奏者の顔をまじまじと見た祖父は、驚いてキョトンとした様子を見せている。
シェーラさんも「祖父は『ピアノを弾いているこの女性はいったい誰だ?』と思っているみたいです」と説明している。シェーラさんのことを忘れてしまっている祖父は、見ず知らずの人が家の中にいる状況に混乱しているようで、しばらくドアを開けたままでじっとシェーラさんのことを見つめていた。
その間、シェーラさんは祖父に声をかけることもなく淡々とピアノを演奏し続けていた。しばらくすると祖父はシェーラさんの方へ少し近づき、演奏する姿を立ったままじっと見つめた。この様子にシェーラさんは「祖父は演奏を楽しんでいるのだと思います」とキャプションを入れている。
そして立ち尽くしたままピアノを堪能していた祖父は、笑顔で左手の親指を立てて“サムズアップ”のポーズでシェーラさんのピアノを絶賛したのだ。
祖父にとっては自宅でピアノを弾く謎の女性という認識のはずだが、純粋にシェーラさんの弾くピアノに感動したようだった。祖父のサムズアップを受け、シェーラさんも演奏しながら笑顔を見せた。
その後、祖父はすぐそばにあったソファーに座ってシェーラさんの演奏を満喫しながら、うたた寝してしまったところで映像は終わっている。
この動画は今月16日の時点で220万件以上の「いいね」が寄せられており、コメント欄には「この動画を見て笑顔になれたよ」「純粋な交流に何だか涙が出ちゃう」「こういうちょっとした瞬間も大切にしたいよね」「本当に心温まる光景だよ」など感動の声が多数寄せられた。
シェーラさんも「これが幸せの瞬間を共有している私たちです。記憶が経験の一部となる必要はないのです。人生はあまりにも短い。愛する人と今この瞬間を愛し、大切にするために、心の余裕を持ちましょう」と思いを綴っている。
ちなみに音楽が認知症患者の記憶を呼び起こす事例として、アルツハイマー型認知症の元バレリーナが『白鳥の湖』を聞き、忘れたはずの振り付けを踊り出したこともあった。
今回シェーラさんのピアノを聞いて祖父が孫の存在を思い出したのかどうかは定かではないが、記憶のことなど関係なくシェーラさんと祖父はお互いに穏やかで優しい時間を楽しんだようだ。
画像は『Sheela Awe 2021年10月24日付TikTok「Family」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)