再出発のオリックス・榊原翼が再びの支配下を目指す「フラットにして、結果を出す」

2

2021年11月18日 21:20  ベースボールキング

  • 限定公開( 2 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ベースボールキング

支配下再登録を目指し秋季キャンプで体力づくりに専念するオリックス・榊原投手
◆ 6年目のリスタートへ

 25年ぶりのリーグ優勝を果たし、日本一を目指して日本シリーズに向かうオリックス。その一方で、次世代を担う若手選手たちの目は、来季に向けられている。

 育成選手から支配下登録選手となり、2019年に初勝利を含む3勝を挙げた榊原翼もそのひとり。5年目の今季、公式戦登板は1試合にとどまり、この秋、戦力外通告を受けた。球団からは育成選手として再契約を打診され、秋季キャンプに参加して再起を目指している。

 小春日和の高知市営東部球場。近くの畑にはコスモスが咲き乱れ、市民らの癒しの空間となっているが、19日まで練習に明け暮れる若い選手たちには、花を愛でる暇はないだろう。

 シーズンを控えた春季キャンプとは違い、秋季キャンプは技術を磨き体力を限界まで追い込める期間。榊原に与えられたテーマは、体力面の強化だ。隣接したサブグラウンドで、50メートルの往復ダッシュを山下舜平大らと繰り返す、ハードなトレーニングに必死の形相で取り組む。


 「苦しかった」。5年目のシーズンを、そう振り返る。

 2月28日。春季キャンプ最終日に行われた、ソフトバンクとの練習試合。オープン戦、公式戦につながる試金石となった先発マウンドだったが、先頭の周東佑京から5連打を浴び、いきなり4失点。制球が定まらず、取りに行ったストライクを痛打された。

 結局、3イニングを9安打、7失点。中嶋聡監督からは「何を目指しているのかが、ちょっと見えなかった。チャンスはゼロではないが、ふるいにかける今の段階では、結果がすべてになるところもある」と厳しい評価を受け、開幕メンバーからも外れた。

 飛躍の年と言われた20年、1勝4敗と伸び悩んだ。「オフの取り組み方が甘かった」という反省から、今年は山岡泰輔や杉本裕太郎らと行った恒例の広島県内での自主トレにも、新たな思いで取り組んだ。それだけに、結果が出ないことに悩み、深みにはまり込んでしまったのだろう。


 以前から課題とされてきた制球難。行き先はボールに聞いてくれ、と言わんばかりに腕を振って打者に向かう、気迫のこもった投球が持ち味。思い切って投げ込み、打者を抑えてきた。

 しかし、次第に腕が振れなくなってしまう。腕を下げて投球フォームも変えるなど、試行錯誤を繰り返した。同期入団の澤田圭佑から「こじんまりまとまっていて、バラ(榊原)らしくない」とアドバイスを受け、いい状態の時の腕の振りに戻し、浮上のキッカケはつかむことが出来た。

 ウエスタン・リーグで3勝を挙げた6月、一軍から声が掛かった。29日のロッテ戦(京セラドーム大阪)に先発し、2回1/3を投げて4安打、毎回の5四球で4失点。

 先発陣が充実し、中継ぎが不足していた一軍において、先発でリズムを作っていく榊原に与えられたチャンスは、この一度だけ。「一軍での一発勝負に負けてしまい、チャンスを逃してしまった。あれがすべてでした」と榊原。結局、今季、一軍での登板はこの1試合に終わった。

 「二軍戦でも、一軍の試合を想定してマウンドに登らないとダメだ」と、ウエスタンの試合で自らを奮い立たせたが、不甲斐ない試合が続いてしまった。「結果を残さなくては」という焦りからくる悪循環。ウエスタンでは14試合に登板し、4勝1敗、防御率6.27。そして10月5日、戦力外通告を受けることになる。

 「5年目ですし、2年連続して結果を残せなかったので」と、戦力外通告を受けるのではないかという危機感はあったそうだ。球団から育成での契約を打診してもらえたことで、今は「野球を続けさせてもらえることに、感謝しかありません」と喜ぶ。

 福良淳一GMは「悩んでいたようなので、自分のペースでやれるように、すっきりとさせてやりたかった」と、支配下から育成に切り替えた思いを語り、「1球、1球は素晴らしいものを持っている。早く帰ってきてくれたら」と期待を込めた。


 投球練習からは、約3カ月遠ざかっている。

 「全部を忘れて、一度、フラットにしてみようと考えています」。

 投球フォームの見直しや球種を磨くこと以上に、今の自分を見つめ直す。それだけ、悩みが深かったということだろう。

 育成2位、背番号「124」で入団。2年目につかんだ「61」とは別れることになるが、育成から支配下登録をつかむ術は知っている。

 「オフは、千葉に帰省する以外、大阪からは出ません」。球団施設のある大阪・舞洲で育成グループの一員として、ひたすら汗を流すつもりでいる。

 「結果を出すだけです」。

 大きな瞳が輝きを取り戻した。


文・写真=北野正樹(きたの・まさき)

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定