【BLOSSOM BASEBALL CLUB】部員不足の2チームが合併、そして子ども達の集まるチームへ

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2021年11月22日 17:54  ベースボールキング

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東京都北区にある滝野川もみじ小学校。秋晴れの日曜の朝、決して広くない校庭には野球を楽しむたくさんの子ども達とお父さんコーチの姿がありました。ここで練習を行っているのはBLOSSOM BASEBALL CLUBの子ども達。部員不足により長らく合同で練習していた2チームが合併して誕生したチームです。部員不足に苦しんだチームに、なぜこんなに多くの子どもが集まったのでしょうか? その理由を2人のコーチに伺いました。



子ども達が楽しみながら行うウォームアップ
練習内容はオーソドックス。4年生以上と3年生以下で2グループに別れ、それぞれがノック、バッティング練習などを行い、それが終わると入れ替わります。目についたのは子ども達の楽しそうな表情。内野ノックでは「自分のところに打って!」と各ポジションの子ども達が大声でアピール。ノッカーを務めるお父さんコーチの表情もどこか楽しそう。



現在の部員は女の子2名を含む34名。練習は基本的に土日の8時〜13時までの5時間で、そのうちの90分をパルクールやリズムトレーニング、コーディネーショントレーニングなどを取り入れたウォームアップに割いています。

「野球のウォームアップが自分が子どもの頃からずっと変わっていないことが疑問でした」
そう話してくれたのは、現役時代は亜細亜大学、JR東日本で活躍したお父さんコーチの片山純一さん。
「ウォームアップにたっぷり時間をかけることによって、正直それが野球にどのように活きているかは今の段階では分かりません。ただ明らかにこの1年で子ども達の体のバランスがよくなりました。はじめは横に動くこともできない子も多かったですから。パルクールなんて1年前は誰もできなかった動きが1年経ってみんなできるようにもなりましたから。基本的な運動能力の向上には間違いなく繋がっていると思います」



JR東日本東北で活躍したお父さんコーチの田中純平さんはこう話します。
「こういうトレーニングに時間を費やしたことが、中学、高校で野球に限らずどんなスポーツをやるにしても活きてくると思っています。色んな体の動かし方をすることで将来の可能性を高めてほしいですし、夢に挑戦してほしいと思っています。もちろんそれが野球だったら嬉しいですけどね」

ちなみに、パルクールもリズムトレーニングもコーディネーションも、子ども達が楽しみながら色んな体の動き方を覚え、それによりケガの防止や運動能力を高める効果があるといわれているトレーニング。このチームではそれを指導者ライセンスを取得したお父さんコーチたちが指導しています。


見直した指導方針、口コミで広がった「楽しさ」
そもそも、前身の2チームである西ヶ原ボーイズと滝野川中央クラブは人口の多い東京都北区でなぜ部員不足になってしまったのでしょうか? 田中コーチはその理由をこのように話しくれました。
「まだまだ罵声や暴言が飛び交うチームが多いんです。それでもやりたいと思う子は強いチームを選択して入部します。でも本当は野球をやりたいと思っても、ちょっと怖い、入りづらいなと思われている家庭が多いと感じています。そうなると一定の子ども達が強いチームに集まるだけになり、そうでないチームには人が集まらなくなります。前身の2チームだけではなく、そういったチームは周りにもたくさんあります」



単独での練習もままならなくなり、2チーム合同で練習を行うようになったタイミングで指導方針の見直しに着手。そこで改めて、暴言・罵声の禁止、親の当番なし、子どもたちが野球を楽しくできる環境を作る、習い事の掛け持ちOKなどの新しいチーム方針が決まりました。

しかし、それだけで部員が増えたわけではありません。大きな要因の1つは前述のウォームアップでした。さまざまなトレーニングを取り入れたウォームアップとそれを楽しそうに行う子ども達の様子をInstagramなどで積極的に投稿。それが口コミで広まり、多くの保護者たちの関心を集めました。一月前にはじめて行われた体験会では「ウォームアップが楽しかったから」という理由で入部を決めた子もいたのだとか。

「投稿を見て興味を持ってくださった親御さんが増えましたね。野球をやりたかった、させたかったのにそれができなかった、そんな子どもと親御さんが多かったんだなと実感しています」(片山コーチ)。

前身の西ヶ原ボーイズから監督を務める野口修さんは、BLOSSOM BASEBALL CLUBに生まれ変わったことによる変化を次のように語ってくれました。
「最初は子ども達が戸惑う場面もありましたが、『野球がしたい』という純粋な気持ちがあればすぐに1つになれるんだなぁと改めて気づかされました。ユニホームも変わって選手も大人も表情が明るくなり、みんな新鮮な気持ちでやれています」。

ヒーローインタビューの練習


オーソドックスだと思っていた練習の最後に行わたのはヒーローインタビューの練習。
子ども達が見守る中、コーチに指名された子どもが朝礼台に上がってヒーローになりきってインタビューに答えるというもの。
一見お遊びのように見えますが、これは「アファメーション効果」が期待できるメソッドの1つ。アファメーションとは、コーチングの概念を作ったと言われている故ルー・タイスが用いた「自己肯定感のある言葉」を自分自身へ向けて語りかける自己変革法の1つ。子ども達が「場外ホームランを打った選手」「160キロを出した投手」などになりきってヒーローインタビューを受けることで、前向きな精神状態を作り出し、自分がなりきった人物そのものに近づくように自然と努力する習慣が芽生える効果などがあるとされています。



「そんな効果があるとは知りませんでした。楽しいからやっていたんですけどね」と笑う片山コーチ。
「今は『楽しい』を中心にやっていますけど、今後は『強い』と両立していきたいですね」。そんなふうに今後の目標を語ってくれました。(取材・文・写真:永松欣也)

BLOSSOM BASEBALL CLUBのHP(https://nishigaharaboys.1net.jp)

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