低反発バット導入など、早くも成果が表れる「Liga Agresiva」香川リーグ

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2021年11月25日 19:14  ベースボールキング

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高校野球のリーグ戦、「Liga Future」は、単なるリーグ戦ではなく、球数制限、低反発の金属バットの使用、スポーツマンシップの学びなど、高校野球の未来を考えた取り組みで注目を集めていた。昨年までは大阪、新潟、長野の3府県だったが、今年からLiga Agresivaと名称を改め、14都府県に渡る12のリーグで80校以上の高校が参加。香川県でも今年からリーグ戦が始まった。



公立5校でスタート。新ルールも設定
「昨年からスタートするつもりでいたのですが、新型コロナ禍もあって難しくなりました。今年は、体制を整えることができたので、5校でまずはスタートすることにしました」
幹事役を務める高瀬高校の杉吉勇輝監督は語る。

今季Liga Agresiva、香川リーグに参加した高校は以下の5校

多度津高校、高瀬高校、観音寺総合高校、琴平高校、丸亀高校

いずれも公立高校。香川県は高松商業高校に代表されるように、公立高校が強い土地柄ではあるが、5校はいずれも中堅校。ともにリーグ戦の趣旨を理解して参加した。

香川リーグのルールは以下の通り

・10/17(日)から11/14(日)までの約1ヶ月間、日曜日を中心に計6日間の日程で行う。
なお、11/21(日)を予備日とする(六大学野球のような対抗戦のイメージ)。

・背番号を付けて試合をする。背番号は試合ごとに変更しても構わない。

・1投手100球以内の球数制限を設ける。
100球に達した場合は、その打者の打撃が完了するまで投球することができる。

・バットは低反発の金属バット、もしくは木製バットを使用する。

・対戦校同士で協議し、1試合もしくは2試合を行う。試合は5回終了で成立とする。
1試合のイニング数、延長戦をするかどうかは対戦校同士で事前に決める。
コールドゲームは7回7点差とする。5回10点差によるコールドゲームは適用しない。

・大会同様、1試合目の開始前にジャンケンで先攻・後攻を決める。
後攻のチームが先にノックをする。

・リエントリーは可とする。
スターティングプレーヤーはいったん試合から退いても、いつでも一度に限り再出場す
ることができる。ただし、交代できるのは自身の元の打順を受け継いだプレーヤーに限
られる。

・DH制は可とする。なお、どのポジションにも適用可とする(1人のみ)。



バットが違うと野球が違ってくる!
Liga Agresivaでは、低反発の金属バット(BBCOR仕様)か木製、竹製のバットを使用することができる。香川の5校ではBBCOR仕様のバットを持っている高校はなかったが、まず高瀬高校が1本購入し、メーカーからの提供もあり、各校で持ち回りで使っていた。
それ以外は木製バット、竹製バットを使用したが、各校の指導者からは予想以上の効果があったと声が上がった。

香川県立琴平高校の山本雄一郎監督は、
「うちは竹バット使わせたのですが、打球が飛ばないので、野手が頑張って追いかけたら追いつくんですよね。守備範囲が広がります。最近は打球が速くて、投手なんか危ないなと思うことがあったのですが、怪我も防げるのでバットのメリットは感じますね」
と語る。

香川県立丸亀高校の桑嶋裕二監督も、
「低反発バット、木のバットを使うのがいいなと思いました。実際にやってみてバッターの技術の無さが際立ちますし、投手の球数が減りますし、エラーや四球も少なくなる。野球をやっていて大事なことを子供たちが分かるのがいいと思います。
これまでの試合は、エラーや四球がいっぱい出てもたまたま安打がカンカンと出て勝ってしまったら帳消しになってしまいましたが、このリーグ戦では野球の大事なことがすごく理解できました」と語った。




選手のモチベーションも上がった
リーグ戦最終日の11月14日、観音寺総合高校と高瀬高校は、丸亀市民球場で最終戦を行った。プロ野球や独立リーグも使用する本格的な球場での試合に、選手たちの士気も上がっているように感じられた。

香川県立観音寺総合高校の土井裕介監督は、

「いろんな制限があると言うのは、選手たちも考えるきっかけになりました。高校野球は春夏秋の3回の大会しかありませんが、練習試合ではなくリーグ戦で記録をつけることができましたし、わかりやすい目標があることで生徒のモチベーションも上がりました。また時期的にもすごいいい時期でしたね」
と成果を語った。



このリーグ戦を立ち上げるうえで主導的な役割を果たした香川県立高瀬高校の香川県立高瀬高校の杉吉勇輝監督は

「うちはBBCOR仕様の低反発バットを1本購入したのですが、こんなにも打てない子は打てないのかと言うことが分かったのも収穫でした。技術を磨かないと、と思いました。
内野手は前で守れましたし、外野も打球がひと伸びふた伸び違うので思い切って守ることができました。その他のことも含め、低反発バットに代えれば多くのことが解決するのではないかと思いました。
でも力のある子は低反発バットでも芯でとらえればフェンス近くまで飛ばしていましたから、スイングスピードをつけることができれば関係ないのだなとも思いました」
と手ごたえを語った。



競技人口減少の現実も
午後からは琴平高校グラウンドで、琴平高校と丸亀高校の試合が行われた。
甲子園出場4回を誇る公立の名門、丸亀高校は選手の体も大きく、投手も力のある球を投げていたが、琴平高校の選手も積極的にくらいついて、点差はついたものの緊張感のある試合が続いた。

また日曜日だけにネット裏、グラウンド横には熱心なファンが集まり、試合の推移を見つめている。選手の父兄と思われる男性が、リーグ戦のルールや考え方を周囲に説明している。こういう形でLiga Agesivaへの理解が広まることも有意義なことだ。

しかし各校ともに選手数は多いとは言えない。高瀬高校は24人の選手がいたが、他の3校は十数人。ダブルヘッダーをやるにはやりくりが必要になる。リエントリー制度はこれを想定して導入されたが、香川県でも競技人口が減少していることを実感した。

Liga Agresivaは、高校野球の「楽しさ」を実感し、選手たちに成長できる機会を与えるリーグ戦である。このリーグ戦を通じて、競技人口の拡大にもつながればよいと思った。(取材・文・写真:広尾晃)

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