“純”食レポ番組が消滅危機もバラエティ&ドラマに継承 令和における鉄板コンテンツの現状

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2021年11月27日 08:40  ORICON NEWS

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写真『孤独のグルメ』松重豊&『相席食堂』千鳥 (C)ORICON NewS inc.
『孤独のグルメ』松重豊&『相席食堂』千鳥 (C)ORICON NewS inc.
 “グルメリポーター”と言われてあなたが思い浮かべる人は誰だろうか。「◯◯の宝石箱や」の彦麻呂か。「まいう〜」の石塚英彦か。ほかヨネスケ、故・阿藤快さん、斉木しげる、などお歴々も並ぶだろうが、タレントジャンルとしては“歴史がそこで止まっていること”に気づく。コロナ禍の影響もあり、『ぴったんこカン・カン』や『メレンゲの気持ち』など食レポが人気コーナーだった長寿番組も次々終了。メインコンテンツとしての食レポ番組は減少したかのように見えるが、よくよく観察すると、その形が変化(=進化?)し、生き残っていることが分かる。

【画像】念願の牛の“膵臓”を食す浜辺美波、フット後藤も「かわいい」連発の食レポに注目

■食レポ界は90年代にすでに完成? ブーム全盛を支えたグルメリポーター達が生み出した必勝法

 1980年代以降に巻き起こったグルメブームにおいて、彦摩呂や石塚、阿藤さんら“グルメリポーター”と呼ばれるタレントのジャンルを確立。街ブラをはじめとするグルメ番組を大きく盛り上げた。そのテクニックも様々だ。阿藤さんは「美味しい」という言葉ではなく“顔芸”で表現。これは石塚、彦摩呂、ギャル曽根、HIKAKINにも受け継がれている。

 『突撃!隣の晩ごはん』(85〜11年)のヨネスケは、口に合わないものを「なかなかですねえ」と味が個性的であることを象徴。斉木は美味しいという言葉を「おかわり!」という行動に置き換え。『おじゃMAP!!』の香取慎吾も同手法で表しており、画面から姿を消すと、次にはおかわりを手に持って現れ、「それだけ美味しいんだよ」とメッセージを伝えていた。

 「とくに彦麻呂さんの功績は大きい」とはメディア研究家の衣輪晋一氏。「食レポを披露しながら美味しそうに見えるコツを公開した彦麻呂さんの“チャート式食レポ”で、初めて食レポをする人でも、それなりの完成度を見せられるようになった。結果、“食レポ専任”のレジェンドは彦麻呂さん、石塚さんあたりで新顔は出現せず。今でも純粋な食レポをメインとした番組はあるが、複数番組を横断してキャスティングされる専任の食レポタレントはいなくなりました」(同氏)

■「お笑い」「ドラマ」がキーワード 付加価値としての食レポ番組がトレンドに

 専門の食レポタレントが生まれなくなり、コロナ禍でロケ番組が減少。では、グルメコンテンツは激減の一途かと言うと実はそうでもない。これまでは「料理」がメインのグルメ番組が多かったが、近年増加傾向にあるのが「お笑い」に特化したグルメバラエティと「飯テロ」と呼ばれるドラマジャンルだ。

 『相席食堂』では、あえて食レポをしたことのない芸能人に食レポをさせ、千鳥がツッコむという形式が笑いにつながり、元プロレスラーの長州力の「飛ぶぞ」など有名な台詞も生まれた。また、『有吉ゼミ』では人気コーナーとして激辛・デカ盛りチャレンジコーナーがあり、大得意ではない芸人が頑張るリアクションが面白い。『マツコ&有吉 かりそめ天国』では芸人の食レポにツッコミを入れる有吉やマツコデラックスが印象的で、おいしさを伝えるよりも笑いに特化した演出となっている。

 「その片鱗は以前から見られました。2017年放送の『もしかしてズレてる?』では、揚げ物好きの浜辺美波さんが初の自撮り食レポに挑戦。とんかつを美味しそうに食べる浜辺さんの愛らしさ、初々しさ、食べっぷりが全面に押し出され、スタジオの後藤輝基さんがひたすら“かわいい”を連発。映像が終わると“うわ! もう終わってもうた!”と絶叫と悲壮感を見せ、笑いにつなげていました。あとおかずクラブのオカリナさん。You Tube『ときどきオカリナ』をされているのですが、ご飯を食べるだけの動画しかアップしておらず、それが“ただ食べてるだけ(笑)”とSNSやネット掲示板で面白がられて祭りに。食べる以外、何も起こらないにもかかわらず、逆にそれが笑いにつながり、チャンネル登録者数はなんと13.6万人です」(衣輪氏)

 そしてテレビ東京に代表される「飯テロドラマ」。『孤独のグルメ』をきっかけに、『きのう何食べた?』、『忘却のサチコ』など人気作が連発。これらは単に料理を題材にしたドラマというわけではなく、料理のカットが長くモノローグが多用されていることで一種の食レポの様相を呈している。

 「そもそもドラマとグルメの相性は良い。1970年代、ホームドラマは“めし食いドラマ”と呼ばれていました。例えば『寺内貫太郎一家』では、白米を豪快にかき込む、熱いお味噌汁をじっくり飲み干す、バリバリと沢庵を食すなど、“音”を“第三のおかず”として重要視。名脚本家・向田邦子さんが提唱された手法で、“音”の出る料理で、視聴者に飯テロをしていたのです」

「80〜90年代になると高級レストランでの食事シーンが多く出現。00年代では『のだめカンタービレ』などでのコンビニ飯、阿部寛さんの『結婚できない男』の一人飯。10年代では『逃げるは恥だが役に立つ』での新垣結衣さん演じるみくりの手料理などなど、時代に合わせて変化。それが現在は『孤独のグルメ』のヒットで、昔ながらの食レポ感がある演出ドラマが脚光を浴びるようになりました。グルメリポーター新スター不在の今、ドラマで食レポが表現されるのは自明の理だったのかもしれません」(同氏)

 食レポがメインでそこに番組のコンセプトを加えるのではなく、「お笑い」や「ドラマ」に食レポの要素を加える演出。食レポをメインとしないグルメ番組がトレンドになりつつあると言うのだ。

■コロナ禍で最も避けられるべき食レポコンテンツ…それでも渇望される理由とは

 ところで、コロナ禍で最も避けられるべきコンテンツがグルメコンテンツとも言える。食事をするには必ずマスクを外さなければならないし、そのまま味の感想を伝えるために話さなければならない。だがだからこそ、視聴者には「外食」への渇望があったとも言える。

 今では制限が緩和されつつあるが、外でなかなか食事をしにくい状況が続き、行きたくても行けないストレスがあった。そんな制限があったからこそ、より「外食」への渇望は高まり続けた。また店側のメリットも考えられる。コロナ禍で売り上げがままならない中で、「食レポ」で少しでも話題を、という希望も見出せた。その相乗効果によって食レポコンテンツは滅亡せず、また求められたのかもしれない。

 「食事」という普遍的でこれまで変わらないと思われていた“行為”。これがコロナによって制限されてしまった。「食レポ」における環境や注意点も変わってきた。アクリル板やソーシャルディスタンスにより、隣り合う共演者と協力して食レポすることができなくなり、むやみに大きな声を出すこともはばかられるようになった。

 見るからに食レポに向かない現在の環境。だがその中で「お笑い」と「ドラマ」形式が可能性を見出しているのが今という時代だ。コロナ禍だから…と様々な職種・ジャンルで嘆いている方は多いだろう。だがこれまでの経験を振り返れば、その財産を伝家の宝刀から“付加価値”に変えてのバージョンアップは可能かもしれない。

(文/西島亨)

このニュースに関するつぶやき

  • 活字離れはよく言われるが、映画やドラマも同じ流れで、複雑で繊細な話を視聴者が読み解けないから飯食ってるだけの作品が粗製濫造されるのもあろう。日本全体が無気力になってる表れよ。
    • イイネ!1
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