「尿素水不足」の韓国で食卓に欠かせないキムチも高騰 それでも文政権が中国に怒らない理由

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2021年11月27日 09:00  AERA dot.

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写真韓国のキムチづくり ※写真はイメージ(c)GettyImages
韓国のキムチづくり ※写真はイメージ(c)GettyImages
 中国の輸出制限に伴う尿素水不足で物流などへの影響が起きている韓国。11月21日、文在寅(ムンジェイン)大統領は国民からの質問に直接答える生放送のテレビ番組に出演し、尿素水不足の問題は「政府が機敏かつ迅速に対応し、問題のほとんどは解決した」と答えた。しかし、ソウル在住のフリージャーナリスト、キム・キョンチョルさんは「文大統領は自信満々に語っていましたが、まだ解決していない」と指摘する。キムさんに、韓国の今を聞いた。


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「いま韓国でみんなが困っているのは、白菜の値段がものすごく上がっていることです」


 キムさんはこう語る。韓国の家庭では11月下旬から12月上旬にかけて、1年分の白菜キムチを漬け込む一大イベント「キムジャン」が行われる。


「わが家では毎年、白菜を30本くらい買うんです。ところが、今年は秋雨の影響で品数が少ないうえに、尿素水騒動の影響でトラックの運送費が跳ね上がって、白菜の値段が例年の約2倍になっている。韓国の食卓にキムチは欠かせないですから、家計への影響は大きい」(キムさん、以下同) 


■空軍機で尿素水輸送のパフォーマンス


 中国が化学物質の一種である尿素の輸出手続きについて厳格化の方針を発表したのは9月。翌月になると、実質的に輸出が停止した。


 慌てたのは尿素を100%輸入し、そのほぼすべてを中国に頼ってきた韓国だ。


 影響が特に目立ったのは物流を担う運送業界。トラックなどのディーゼルエンジンを動かすには尿素を原料とする尿素水が必要だが、あっという間に品薄状態に陥った。価格も高騰。大勢のトラックドライバーが店頭から消えた尿素水を探し、さまよう事態となった。


「どこに行っても買えないので、海外のネット通販サイトで日本製や中国製の尿素水を買う動きがおきました。いちばん高値のときで通常の10倍くらいになった。いまは約5倍ですが、それでもかなり高い」


 今月10日、韓国政府は尿素水を緊急空輸するため、空軍の輸送機をオーストラリアに派遣した。



「運んできた尿素水は大きなタンクローリー1台分。価格にしたら3000万ウォン(290万円)くらいですが、それを買うために輸送機の燃料代だけで1億ウォン(970万円)かかった。文大統領はそういうパフォーマンスが好きなんです」


 同日、韓国外交部は、韓国企業が中国政府と契約していた尿素1万8700トンについて「輸出手続きが進められることを確認した」と発表した。


「それが先週から少しずつ入るようになりました。政府は、1日あたりの尿素水の生産量が使用量を上回っているから『供給はかなり安定している』と言う。でも、尿素水の流通は政府が取り仕切っていて、配給制のような状況です」


■品切れ状態のガソリンスタンドも


 現在、韓国政府は全国約100カ所の拠点ガソリンスタンドを設け、優先的に尿素水を供給している。


「価格は従来とほぼ同じなんですが、自由に買えるわけではなく、身分証明書を提示して購入頻度が調べられる。購入量も限られていて、トラックの場合、1回30リットルまでです」


 一般のガソリンスタンドはどうなのか。


「価格は拠点スタンドの約2倍です。しかも、高速道路のサービスエリアでさえ、いつ行っても品切れという声が上がっています。11月はまだ1回も尿素水が入荷せず、困っているガソリンスタンドもある。しかも、買い占めをしていないか、政府の取り締まりがすごく厳しい。一般のガソリンスタンドにはものすごく不満が溜まっています」


 さらに問題なのは、拠点ガソリンスタンドが都市部に偏っていることだ。


「韓国の田舎に行くと『村バス』というコミュニティーバスが走っているんですが、その運行が止まりそうなくらい尿素水の在庫がギリギリになっている。そんなニュースがたくさん出ています」


 キムさんは現状をこう見る。


「韓国政府は、尿素水の供給は需要を上回っているから心配ないと言っていますが、みんなトラックやバスを思うように走らせることができない。その結果として尿素水の需要が減って供給が上回っているように、数字的には見えるのです」



■日本は「わざとやった」が中国は違う


 さらに、キムさんは今後の景気についても心配する。


 韓国経済研究院が発表した「企業景気実査指数(BSI)」によると、製造業の展望値は11月と12月の2カ月連続で96.5(100より低ければ悲観的)と低いが、それは尿素水の不足などが原因だという。


「尿素には自動車用と産業用があります。韓国政府は産業用の尿素を自動車用にまわして尿素水を作っているため、製造業では尿素水が不足しています。しかし政府は毎日、輸入量、使用量、在庫量などの細かい数字を出して、まったく不足していない、と言い続けているのです」


 尿素水は住宅や道路の建設に必要なセメントの製造のほか、鉄鋼生産や火力発電所などでも使用される。


 一方、今回の尿素水問題は文大統領の支持率低下には結びついていないという。キムさんが文政権の支持者たちに聞くと、「尿素水問題は政府の責任ではない、民間業者の責任なんだ」という答えが返ってきたという。


「2年前、日本が半導体の製造材料について輸出管理を強化した際、日本に対してはあれほど怒ったのになぜ、中国には怒らないのか、と聞きました。すると、日本の場合、韓国を困らせるためにわざとやった行動だけど、中国の場合、国内で尿素が不足しているから仕方ない、と言うんです。そういうふうに中国の立場を理解している人たちがけっこういる。文政権も同じような考え方だと思います」


■「反中には何のメリットもない」


 日本は半導体の輸出管理を強化したが、韓国の半導体製造業で問題が起きるようなことはなかった。だが韓国政府は当時、「国際的なサプライチェーンを破壊するものである」と、激しく日本を非難した。


 反日をあおれば支持率の上昇につながるが、反中は支持率につながらない。それどころか、「いつも中国に媚びを売っているのにこういう事態になったじゃないか、と国民から責められかねないからだろう」と、キムさんは分析する。


 日本の化学産業に詳しい関係者はこう語る。


「日本は長年安定供給を最重要視し、尿素やその原料となるアンモニアを自前で作っているのが韓国との大きな違いです。手っ取り早く隣の国から運んでくればコストは安くすみますが、韓国は過度に中国に依存し、このような事態に陥ってしまった」


 韓国政府は今回の事態をやわらげるため、しばらくは割高なスポット価格で尿素を国際市場で買い続けることになるだろう。安い中国産に頼った結果、高い勉強代を支払うことになった。


(AERA dot.編集部・米倉昭仁)


このニュースに関するつぶやき

  • 要約すると、中国は宗主国だから仕方ない。理由は後から考えるけど日本が悪い。
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  • そりゃ宗主国さまですもの。
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