川崎フロンターレ・鬼木達監督の手腕を福田正博が評価。気になるMVP候補も考えた

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2021年11月27日 10:51  webスポルティーバ

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Jリーグクライマックス2021

福田正博 フットボール原論

■J1で2年連続4回目の優勝を決め、勝ち点は何と90超えが見えてきている川崎フロンターレ。充実した戦力にスポットが当たっているが、その戦力を整えたのは誰か。福田正博氏は「鬼木達監督はもっと評価されるべき」という。




 川崎フロンターレが4試合を残した時点でリーグ優勝を決めた。昨季の勝ち点83も驚異的だったが、今季はあと2試合を残した現時点での勝ち点は88。勝ち点90という夢の大台が現実的になるほどの強さだ。

 川崎のすごさはシーズン途中の夏場に、主力だった三笘薫(サン=ジロワーズ)や田中碧(デュッセルドルフ)が海外移籍で抜け、元日本代表の大島僚太も故障によって満足にプレーできない状況にあったなかでの2連覇ということ。ここに大きな価値がある。

 圧倒的な勝ち点でリーグ優勝を決めたが、試合内容を振り返れば、とりわけ後半戦は負けていても不思議ではない試合が少なからずあった。

 8月25日のアビスパ福岡戦に敗れ、開幕から19勝6分けの25試合負けなしが途絶えると、一時は横浜F・マリノスに勝ち点1差にまで詰め寄られた。9月22日からの鹿島アントラーズ戦、湘南ベルマーレ戦(9/26)、ヴィッセル神戸戦(9/29)の3試合では、3戦連続して先制点を相手に奪われる展開だったが、それを跳ね返して逆転勝利した。

 シーズン中に主力選手が入れ変わってもチーム力を落とさずに戦いきれたのは、フロントの的確な補強策と、鬼木達監督の選手起用の妙があったからこそ。

 後半戦は三笘の抜けた左サイドには新外国人のマルシーニョを補強し、田中碧の抜けたインサイドハーフでは旗手怜央が躍動。前半戦はジョアン・シミッチがつとめたアンカーには、神戸戦から大卒ルーキーの橘田健人がスタメンに定着した。

 ベンチスタートの選手たちが出場機会で躍動したのも、川崎の強さを支えた。鹿島戦では宮城天、湘南戦では知念慶がアディショナルタイムに勝ち越しゴールを奪った。

 また、小林悠もいた。今季は出場31試合で10得点を決めているが、このうちスタメンは11試合(8得点)。先発起用すればまだまだ衰えの見えない元日本代表FWを、多くの試合でベンチスタートさせられるほどの選手層を持っていたのが、1シーズンを通じてほかのチームを圧倒することにつながった。

「選手のクオリティが高く、選手層が厚かった」と理由づけするのは簡単だが、実際にそうしたチームを作り上げるのは容易ではない。どこのクラブも目指すべき姿を川崎が手にしたのは、フロント力、監督のマネジメント力によるところだろう。

 鬼木監督の手腕で言えば、降格のないレギュレーションで行なわれた昨シーズンの経験を、今シーズンにしっかりと生かした印象だった。昨季スタメン以外の選手たちも数多く試合に関わらせながら、チームとしての成熟度や連携力を高めた。そして、今季はその経験を踏まえてさらに進化させた。

 選手を前面に押し出す控えめなキャラクターな面もあってか、鬼木監督がクローズアップされることが少ない。しかし、鬼木監督が就任した2017年以降の5シーズンで4度目のリーグ制覇を達成した手腕は、もっと高く評価されるべきだ。

 鬼木監督は、2012年から2016年まで率いた風間八宏前監督体制をコーチとして支えたこともあって、2017年に監督に就いて以降は風間体制から攻守のバランスを整えて成功したと評価する向きもある。

 もちろん、そうした面も多少はあるかもしれないが、それだけではこの成功は手にできない。風間監督時代から選手も入れ替わっているなかで、攻撃面は風間監督時代のよいところを継承しながら、鬼木色も打ち出してきた。だからこそ、以前はタイトルに無縁だったクラブが、鬼木体制となってからリーグ優勝、天皇杯、ナビスコカップで6個のタイトルを獲得できたのだ。しかも、今季の天皇杯を制すれば、7つ目のタイトルを掲げることになる。

 その天皇杯の行方も気になるが、今シーズンのJリーグMVPを誰が獲得するかも注目している。

 昨季も川崎が圧倒的なシーズンを送って優勝しながら、MVPにはオルンガ(当時柏)が選ばれた。28得点でJ1得点王となったパフォーマンスは圧巻だったとはいえ、チームは7位。やはりサッカーは優勝を目指すチームスポーツである以上、基本的にMVPは優勝チームから選ぶべきだと思う。優勝争いが混戦になったのなら仕方ないが、昨年の川崎はそうではなかった。それだけに今年は川崎から選出されてほしいと思っている。

 川崎の誰がもらっても不思議はないが、個人的には谷口彰悟にMVPを与えたいものの、昨シーズンのプレーぶりのほうが受賞に値したという思いもある。家長昭博も候補ではあるが、一昨年に受賞している点がどう影響するか。三笘薫も在籍時の働きぶりはすばらしかったが、途中で移籍した選手がMVPではあまりにも寂しすぎる。脇坂泰斗も資格はあるだろうが、彼にはこのレベルで満足してもらいたくないので、時期尚早な気もしている。

 そのなかで最右翼はレアンドロ・ダミアンだろう。現在20得点もさることながら、副キャプテンを務め、前線からチームのために献身的に働いた。彼がいるからこそ、川崎の攻撃陣が機能した面は大いにあった。

 もうひとりの候補は、旗手怜央だ。前半戦は左サイドバックにチャレンジし、後半戦からは田中碧の抜けたインサイドハーフでチームを牽引した。活動量もさることながら、驚かされたのは彼のボールキープ力の高さ。それは家長レベルと言ってもいいほどで、旗手のところでボールが収まるから、攻撃が形になったシーンもあった。大卒2年目でMVP獲得となるのかは楽しみなところだ。

 その川崎にとって来シーズンの宿題は、アジア制覇になるだろう。国内では圧倒的な強さを誇りながらも、今季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)はベスト16で敗退。これで、鬼木体制で臨んだACLは、2017年ベスト8、2018年と2019年は2年連続グループリーグ敗退に続き、タイトル奪取とはならなかった。

 今年は、グループステージ6試合で27得点3失点と抜群の攻撃力を見せたものの、決勝トーナメントの蔚山戦(韓国)は堅守に苦しみPK戦で敗れた。決勝トーナメントは三笘や田中碧の移籍後にあったものの、仮に彼らがいても突破は難しかったように思う。

 ただ、そこで浮き彫りになった課題をしっかり解消していければ、来シーズンこそは悲願達成に近づくのではないか。自分たちのストロングポイントを最大限に活かして試合の主導権を握り、相手を押し込んでいく川崎らしいスタイルでアジアの頂点に君臨する。それをいまから期待してやまない。

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