クラウドファンディング実施中「シロナガス島への帰還」レビュー これは性癖のヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメだ!

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2021年11月28日 21:17  ねとらぼ

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写真ヒロインのねね子。内気だが超人的な記憶力を持つ天才少女
ヒロインのねね子。内気だが超人的な記憶力を持つ天才少女

 筆者がミステリADVゲーム「シロナガス島への帰還」をクリアして最初に抱いた感想は「これ性癖のヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメじゃん!」だった。



【ゲーム画面を見る】フェチシズム全開のおまけシナリオ



 ちなみに「ヤサイマシマシニンニクマシアブラマシカラメ」はとあるラーメン店での注文方法だが、それを知らなくてもこのレビューを読むのにまったく問題はない。要するに、作者こだわりの味付けやトッピングがマシマシ(大盛り)の大変ぜいたくなゲーム体験をさせてもらった、ということだ。



 では、「シロナガス島への帰還」の基本情報を簡潔に説明しよう。



 「シロナガス島への帰還」は鬼虫兵庫氏が文章・イラストまでほぼ完全個人制作で作り上げた、ポイント&クリック形式のミステリADVゲームだ(鬼虫氏の経歴に関してはIGN Japanのインタビューが詳しい)。



 主人公の探偵・池田戦は、完全記憶能力を持つ助手の少女・出雲崎ねね子とともに孤島「シロナガス島」へ赴き、そこで起きた殺人事件、そして島に隠された陰謀を解決する……という物語である。



 ちなみに、筆者がクリアまでに要した時間は6時間程度。伏線の回収も気持ちよく、一本のミステリ作品として軽い気持ちで遊ぶのに「ちょうどいい」ボリュームだと感じた。にもかかわらず、一体何が「マシマシだったのか。順を追って説明するので、それを読んでビビッと来た方はぜひこのゲームをチェックしてみてほしい。後述するが、12月5日まではNintendo Switchへの移植&ボイス追加のためのクラウドファンディングも実施中だ。



●マシマシその1 講談社ミステリの系譜がマシマシ!



 本作クリエイターの鬼虫兵庫氏は、2009年に講談社BOX新人賞の奨励賞的なものを小説家として受賞している。そして、講談社BOXの代表的作家と言えば「物語シリーズ」の西尾維新氏であり、当時その西尾維新氏も参加していた雑誌『ファウスト』は菅野ひろゆき氏、竜騎士07氏などのノベルゲームライターを積極的にフィーチャーしていた。



 「シロナガス島への帰還」の作風には、はっきりとそれらの系譜に連なるものを感じた。天才的な記憶力を持つ少女・ねね子とバディを組む設定は西尾維新氏のデビュー作『戯言シリーズ』を彷彿とさせるし(中でも1作目の『クビキリサイクル』(2002)は孤島を訪れる設定やクライマックスの盛り上がりなど本作にテイストがかなり近いと感じた)



 孤島で行われた研究というモチーフは「DESIRE」(1994)、傲岸(ごうがん)不遜な探偵像は「EVE burst error」(1995)という菅野ひろゆき(筆名:剣乃ゆきひろ)氏が執筆した2作、孤島と探偵の組み合わせとなると竜騎士07氏の「うみねこのなく頃に」(2007)からの流れを感じる。もちろん、「シロナガス島への帰還」がこれらの「パクリだ!」などと言いたいわけではなく、「これらの作品が好きだった人ならハマるかも!」ぐらいのことを言っていると思ってほしい。



 なにより、インタビューから察するに鬼虫氏は84年生まれの筆者とそこまで年齢も変わらないはずで、有り体に言えば「同じものを食べて育った感をめっちゃ感じる。ゼロ年代の空気を吸って育った子どもたちは多分同じ体臭を発するようになるのではないか。臭いで仲間が分かる。そういうことが言いたかった。



●マシマシその2 ミステリADVのド定番がマシマシ!



 本作のシステムである、画面をクリックして新しい手掛かりを探す「ポイント&クリック」形式のアドベンチャーは、現代でも「逆転裁判」シリーズなどに残っているが、どこをクリックすれば話が進むのかも自分で探っていく本作の手触りはどことなく古き良きPC-98の名作ADVゲーム群を感じさせる。



 そして中盤で出てくる「犯人選択」シークエンス。



 これがまた「ミステリ系のADVならこれ欲しいよね、分かってるー!」って感じなのである。やっぱり、この手のゲームだと筆者の世代的には「かまいたちの夜」(1994)を思い出してしまう。そういえば、「かまいたちの夜」の2と3も孤島が舞台だ。鬼虫氏、これもきっと好物でしょ?



 ちなみに、犯人選択システムはミステリ作品が「ゲーム」であることの最大の利点だと思っているので、この手のADVはもっと積極的に採用してほしい。これが小説だと目星を付けていた犯人と違う人物が真犯人でも「あー、犯人やっぱこいつね。そうだと思ってた!」と記憶を改ざんしがちだ。しちゃわない? 僕はする。ゲームだとそういう甘えを許さないのがいい(余談だが、筆者の思う犯人選択系ゲームの最高傑作はファミコンの「殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件」(1988)だ。きちんと推論を積み重ねたときにだけ到達できるエンディングとどんでん返しの真相がまたいいんだ。今年になって「ファミコン探偵倶楽部」がリメイクされたんだから「殺意の階層」もリメイクとかされないもんですかね?)。



 ちなみに、推理を展開する場面で主人公たちが滞在する館の「見取り図」が入る。これもまた分かってる!



 ときおり入る時間制限付き展開やホラー演出も、プレイヤーが飽きはじめる前の絶妙のタイミングで配置されており、とても良い。とあるシーンでのビックリ展開など、思い切り悲鳴を上げてしまった。



●マシマシその3 フェチシズムがマシマシ!



 クリエイターとしての鬼虫氏の強みは自分でイラストも描いているところだと思う。全てをほぼ一人で完結させられる作家は強い。なぜならフェチシズムのアクセルを全開にできるからだ。特にそれが感じられる真骨頂はクリア後のおまけシナリオ。本編と直接関係がない分はっちゃけられたのか、尋常でない「肋骨(ろっこつ)」への拘りを感じた。主要女性キャラのほぼ全員に肋骨が浮いている。実はこのキャラデザ、めちゃくちゃ「攻めている」のである。



 筆者も商業ライトノベルを描く人間なので説明すると、普通ならヒロインを複数配置する時に身長・体形などは全体でバランスを考えるものなのだ。なぜなら、キャラデザはできるだけ広くレンジを取った方が多くの読者に「引っ掛かる」確率が上がる。ところが本作では全員痩せ形で肋骨が浮き上がっている! まるで肋骨のバーゲンセール! こんなバランスのキャラデザ、まさしく個人制作でもなきゃできない。やりたい放題やる! という強い意志が感じられて大変良い。あえて写真を載せないが、「脇毛」にも強いこだわりを感じた。そこもちゃんと描くか!



●カラメその4 味付けとしての見事なコスパ戦略



 極め付きは、「シロナガス島への帰還」の優れたコストパフォーマンスだ。PC版は定価たったの500円である。しかも、本作は最初にリリースされてからも立ち絵に口パクアニメーションが追加されたり、もともとフリー素材だった音楽が専用のものに変更されたりするなどアップデートを続けており、そのコストパフォーマンスたるや天井知らずである。



その結果、作品は大ヒットを記録し、現在はNintendo Switchへの移植版発表と、それに伴い声優を追加するためのクラウドファンディングが12月5日まで実施中なのだが、あっという間に達成してしまい、ストレッチゴールが追い付かない状態だ。



 これも作者が「やりたいことをやりきった」結果だろう。なお、このクラウドファンディングでは限定デザインのサントラやパッケージ版、資料集などもリワードに入っているので、この作品の既存ファンだけでなく新規ファンも限定版を注文するぐらいの覚悟で一つ乗ってみるのはどうだろうか。



 ちなみに、鬼虫氏は現在、本作と共通のキャラクターも登場する続編「遙かなる円形世界(仮題)」を制作中。早くこのゲームのおかわりが食べられる日が楽しみだ。



【ライター:砂義出雲】



作家・シナリオライター。はてなダイアリー「やや最果てのブログ」の運営を経て、2011年に小学館ライトノベル大賞・優秀賞を受賞し『寄生彼女サナ』でデビュー。なんだかんだ10年以上業界の片隅でラノベを書いたりゲームシナリオを書いたりしてきました。映画とゲームとsyrup16gが生きる糧。人生ベストゲームは「Outer Wilds」です。



Twitter:@sunagi


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  • もやし小さい袋小一パックにサッポロ一番塩ラーメン。嬉笑
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  • 愛のためにシロナガス男、スパイダーマッ!
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