ロボットの視線は人にどのような影響を与えるか? 車のチキンレースで検証

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2021年11月29日 08:12  ITmedia NEWS

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写真EEGキャップを被る被験者とiCubロボット
EEGキャップを被る被験者とiCubロボット

 イタリア技術研究所(IIT)の研究チームが発表した「Mutual gaze with a robot affects human neural activity and delays decision-making processes」は、ロボットのアイコンタクトが人の社会的認知にどう影響するかを検証した論文だ。勝負をしている際に、相手のロボットから注視されると意思決定にどのような変化かが起きるのかを検証した。



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 人間の意思決定の多くは社会的な文脈の中で行われ、そのためには他者の意図を評価する。他人の心理状態を推測し、その行動を予測するために、人間は非言語的な手掛かりに大きく依存している。特に、アイコンタクト(相互注視)は、自分の状態や目標、意図、対話の意思などの情報を伝えられるため、人間関係における強力なコミュニケーションシグナルだ。



 この研究では、インタラクティブな環境下でヒューマノイドロボットが見せるコミュニケーション行動のうち、視線が人間の意思決定にどのように影響を与えるか、行動科学と神経科学の手法で検討した。



 具体的には、iCubロボットとチキンレースを行い、ロボットが被験者を直接見るか(相互注視)、もしくはロボットが横を向いて視線を避けるか(回避注視)が被験者の行動と神経活動に与える影響を脳波で測定した。



 実験内容は、被験者とロボットの車が向き合い、真ん中でぶつかるように走行し途中で直進か回避かを両者のタイミングで選択してもらうというもの。車は衝突し合うように、互いに向かって移動し始め、中央に到達する前に途中で止まり、画面が黒くなり、1秒間のFixation cross(真ん中に十字がある画像)が表示される。再び画面が黒くなり、両プレイヤーは直進か回避かを選択する。



 その間、被験者はロボットを見るように指示され、ロボットは被験者を相互注視するか、もしくは回避注視をするかをプログラムされる。



 実験の結果、ロボットの視線に応じて被験者の行動が変化すると分かった。まず、ロボットと視線を合わせる相互注視の場合は、回避注視よりも被験者の反応(直進か回避かの意思決定)が遅れると確認された。



 この反応時間の違いは、相互注視は回避注視に比べて判断しきい値が高くなり、より長く、より努力してタスクに集中することを示唆する。つまり、意思決定を吟味するということであり、この行動上の効果は、視線を合わせている間の脳波のアルファ波に現れている。



 行動決定の結果を被験者に知らせ、脳波信号のERP(事象関連電位)を調べた結果、回避注視を主に受けたグループは、相互注視を主に受けたグループよりも、結果に関連するERPの振幅が大きかった。



 つまり、回避注視を主に受けていたグループは決定後の結果に敏感だったということである。この結果は、回避注視にさらされると、被験者が社会的相互作用から離れやすくなり、自己中心的な情報に依存して意思決定を行うようになることが示唆された。



 以上の結果から、ロボットの視線は、応答時間、決定しきい値、結果に対する感度を変調させると実証した。このように、視線の動きだけでもアイコンタクトはロボットの社会的シグナルとして扱われ、人間の社会的認知に影響を与えた。



Source and Image Credits: Marwen Belkaid, Kyveli Kompatsiari, Davide De Tommaso, Ingrid Zablith, and Agnieszka Wykowska, “Mutual gaze with a robot affects human neural activity and delays decision-making processes”, Science Robotics 2021-09-29 6(58): eabc5044



 ※このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。


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