ロッテの武器“機動力” 隙を見逃さず次の塁を狙う意識の高さ

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2021年11月29日 11:14  ベースボールキング

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3回ロッテ一死二、三塁、角中の中犠飛で中継が乱れる間に三走に続いて二走中村奨が生還。捕手甲斐 (C)Kyodo News
◆ マーティンが好走塁を連発

 2年連続2位になったロッテの走塁力は年々高まっている。

 ロッテの走塁面を語るうえで、リーグトップを誇ったチーム107盗塁に目がいきがちだが、本当に注目しなければならないのは“1つ先の塁を狙った積極的な走塁”、“相手の隙を突いた走塁”、“全力疾走”といった部分だ。

 “1つ先の塁を狙った”走塁は、ロッテの得意な攻撃のひとつになっている。1本の安打で一、三塁、一塁からホームに還ってきた。打者走者も、打った安打に満足することなく、外野手がホームに送球している間に一塁から二塁を陥れることが度々あった。

 チーム2位の27本塁打、75打点をマークしたマーティンの“1つ先の塁を狙う”姿勢は非常に素晴らしかった。ここでマーティンが魅せた好走塁をいくつか紹介したい。4月30日の楽天戦、中村奨吾が放ったレフトへの平凡なフライで一塁走者のマーティンが二塁へタッチアップすれば、5月16日の西武戦、センター前に安打を放つと、一塁ベースを回ったところでスピードを緩める動きを見せるも、センターの緩慢な動きを見逃さず二塁へ進塁する好走塁。

 5月28日の広島戦は、“これぞプロ”という素晴らしい走塁を1試合に何度も魅せた。初回、中村の左中間後方にあがった打球をレフトとセンターがぶつかりながら最後はセンターがキャッチすると、一塁走者のマーティンが二塁へ進塁。さらに5回にはレアードが放った打球が、風に流されたこともあり、セカンドの捕球体勢が崩れ、倒れこむように捕球したのを見て、三塁走者のマーティンが、捕手のタッチをかいくぐりホームインした。

 さらに、オリックスとのクライマックスシリーズファイナルステージでも、第3戦にエチェバリアの左飛で一塁から二塁にタッチアップし、佐藤都志也の適時打で同点のホームを踏んだ。本塁打、打点といった打撃だけでなく、走塁でもマーティンの貢献度は非常に高かった。


◆ 今季も魅せた!荻野の走塁力の高さ

 不動のリードオフマンで、今季盗塁王と最多安打の“二冠”に輝いた荻野貴司も、ベテランといわれる年齢になったがその“走塁力の高さ”は今季も健在だった。

4月7日のオリックス戦ではレフト前に放つと、レフトの動きがややゆっくりなのを見て、悠々と二塁へ進塁。続くマーティンのセンター前の当たりで俊足を飛ばして二塁から一気に生還した。5月29日の広島戦ではレアードの浅いレフト前の当たりで二塁からスライディングせずに楽々ホームイン。

 シーズン後半に入ってからも8月25日の日本ハム戦で三塁への強襲の安打を放つと、ボールがファウルゾーンに転々としている間に二塁へ。記録は三塁への二塁打となった。9月14日のソフトバンク戦では、レアードがセンター前に抜けそうな当たりをセカンドがキャッチし一塁へ送球している間に、二塁から一気に還ってきた。


◆ 走塁でも頼れるキャプテン

 キャプテンの中村奨吾も、4月24日のソフトバンク戦で角中勝也のセンターへのフライで、センター・柳田悠岐から中継に入ったショート・今宮健太への送球が乱れる隙に三塁走者に続いて二塁走者の中村も生還した。

 6月9日のヤクルト戦では、センター前に安打を放つと、センターが一塁走者のマーティンを刺そうと三塁へ送球している間に、打者走者の中村も二塁へ進塁する好判断を見せた。7月6日のソフトバンク戦でもレフト前に安打を放ち、二塁走者を刺そうとレフトがホームへダイレクト送球している隙に、中村は二塁へ。

 外野の送球や中継に入る内野の動きを見て、次の塁を狙う姿勢を最後まで見せ続けた。


◆ 控え選手、俊足ではない選手も次の塁を狙う意識

 主力選手だけでなく、控え選手やけして俊足とは言えない選手たちも、次の塁を狙う意識が非常に高かった。佐藤は5月7日のオリックス戦、三塁へ内野フライを打ち上げてしまったが、しっかり走っていた佐藤は三塁手が落球したときには二塁を陥れていた。8月19日の西武戦では、二、三塁の場面でライト前に安打を放つと、二塁走者を刺そうとライトがホームに送球しているのを見て打った佐藤は二塁へ。

 山口航輝と安田尚憲も、8月18日の西武戦で、エチェバリアのレフト正面のフライで二塁走者の山口が三塁へタッチアップすると、一塁走者の安田もショートが三塁へ悪送球するのを見て二塁へ進んだ。

 佐藤は「基本的には自分が打っているときは接戦なので、二、三塁とかだったら自分が二塁を狙うことでバックホームして、自分が(二塁に)いってカットして2点目が入ればいいですし、自分が走ってキャッチャーが間に合わないと思ってセカンドに投げてくれたら、点も入る。それがホームクロスプレーだったとしても一死二塁だったら、ヒットで帰れるチャンスがある。大塚コーチ、伊志嶺コーチにはしこたま言われていること。それだから実践しているというところ」と話せば、山口も「詰められるところ、もっと次の塁というのを狙っていかないといけないと思いますし、進塁しているのも普通なことだと思う。まだまだ高いレベルで次の塁を目指してやっていかないと思います」と当たり前のように口にする。

 俊足とはいえないレアードも全力疾走で次の塁を狙い続けた。9月3日の日本ハム戦で藤岡が放ったレフトへの浅いフライで、三塁から巨体を揺らしホームイン。レフトがホームに送球する間に安田も二塁へタッチアップした。

 さらにレアードはシーズン最終盤に、空振り三振に倒れるも、捕手が弾いているのを見て、一塁へ走り、振り逃げというのが何度かあった。10月25日の日本ハム戦では振り逃げで出塁すると、岡大海のセンター前の当たりでレアードは二塁から激走しホームインした。

 レアードに限らず“全力疾走”が功を奏し、セーフを勝ち取ることが多かった。角中は5月9日のオリックス戦、一塁ベース付近へのゴロを放つと、一塁手が後逸し、素早く二塁手がバックアップし一塁へ送球するも、全力疾走していたためセーフに。

 6月8日のヤクルト戦では、無死一、三塁から藤岡の遊ゴロでダブルプレーかと思われたが、一塁へ全力疾走していたこともあり一塁はセーフに。その後、藤岡は柿沼友哉の犠打で二塁へ進み、荻野の適時打で生還した。

 主力だけでなく、控え選手、足の遅い選手、さらにはファームも次の塁を狙う意識が徹底されており、その精度が年々上がり得点にも繋がっている。井口資仁監督が監督就任会見で「機動力を活かせる野球を目指していきます」と語たったが、あれから4年が経ち、“機動力”はマリーンズの攻撃におけるひとつの武器となった。

取材・文=岩下雄太

このニュースに関するつぶやき

  • 日本シリーズ延長戦の一部を見たけど、ヤクルトの走塁に歯がゆい思いをしたなー。延長だから慎重になるのもわかるけど。初球盗塁やエンドラン仕掛けたら相手焦るべ?それは意表突きすぎ?
    • イイネ!7
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