J2地力残留も見えた。降格有力候補だったSC相模原がここまで奮闘できたわけ

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2021年11月30日 06:41  webスポルティーバ

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 SC相模原が、J2残留に大きく近づいている。

 J2第41節、相模原はホームで松本山雅FCと対戦し、1−1で引き分けた。

 0−0で迎えた後半ロスタイム突入直前、途中出場のMF児玉駿斗がFKからのこぼれ球を押し込んで、相模原が先制。劇的勝利かと思われた試合は、ロスタイムにFKからのオウンゴールで追いつかれ、勝ち点2を失う結果となった。

 相模原を率いる高木琢也監督は「勝負の厳しさを感じた」と、惜しい引き分けを振り返っていたが、この結果により、最下位・松本のJ3降格が決定。相模原は残留争いのライバルに引導を渡す一方で、自らはJ2残留に十分な可能性を残した。

 順位のうえではJ3降格圏の19位ではあるが、今季最終節となる次節で自力での逆転残留が可能な位置につけている。




 時間を今季開幕前に巻き戻せば、相模原の評価はお世辞にも高いものではなかった。

 今季J2初昇格を果たしたばかりの相模原は、昨季J3の2位。いわば、J2最下位からのスタートだったのだから、無理もない。

 有り体に言えば、J3降格の有力候補だったわけだ。

 開幕戦からの10試合を2勝4敗4分けでしのぎ、J2残留圏となる18位以上を概ねキープし続けたことは、大健闘のスタートだったと言っていいのだろう。

 だが、第10節の勝利を最後に11試合連続で勝利から遠ざかり、J3降格圏に転落。以降は最下位がほぼ指定席となった。フロントの動きは早く、第16節を最後に三浦文丈監督を解任し、新たに高木監督が指揮を執ってはいたが、すぐに状況が好転することはなかった。

 ところが、高木監督就任後に戦い方の重心を後ろから前へ、すなわち、守備から攻撃へと移していった効果は徐々に表れ、少しずつ成績が上向き始める。

 順位こそ急激に上がることはなかったものの、着実に勝ち点を増やしていった様子は数字にはっきりと表れている。

 三浦監督が指揮した第16節までの1試合あたりの平均獲得勝ち点が0.68(16試合、勝ち点11)であるのに対し、高木監督に変わった第17節以降のそれは1.08(25試合、勝ち点27)。1試合あたり勝ち点0.5増は、かなり大きな違いである。

 第30節では、ついに残留圏の18位へ浮上。その後、再び降格圏に戻ってしまうのだが、ここからJ2残留が俄然現実味を帯びてきたことは間違いない。

 第41節終了現在、勝ち点38で19位の相模原は、次の最終節で東京ヴェルディと対戦する。相模原はこれに勝ち、勝ち点を41に伸ばしさえすれば、自力残留を決められる立場にいる。

 というのも、最終節では勝ち点41で16位のザスパクサツ群馬と、勝ち点39で18位の大宮アルディージャが直接対決するため、どちらかを必ず上回るからだ。

 いよいよ迎える決戦を控え、高木監督も「しっかり準備をして、何も忘れ物がない状態で戦いたい」と力強く語る。

 さらに言えば、勝ち点35で20位のギラヴァンツ北九州とは得失点差で9点差のリードがあり、相模原は最終節で負けたとしても、よほどの大敗でない限り、19位は確保できる。

 だとすると、J3の結果次第――J2ライセンスを持たないテゲバジャーロ宮崎が2位以内に入れば、J3からの昇格クラブがひとつ減る――で、残留の可能性も生まれる。

 宮崎は現時点で首位。最終節の結果次第で3位以下に転落もありうるが、そうした他力の要素も含めれば、相模原がJ2に残留する可能性はかなり高いと言ってもいいだろう。

 ぬか喜びは禁物だが、ドロ沼の最下位に沈んでいた時期を考えれば、相模原を取り巻く状況は見違えるほど明るくなっている。

 そんな変化の推進力となってきたのが、シーズン途中に加わった新戦力である。

 苦境にあえぐチームが経験のあるベテラン選手を新たに加え、周囲の選手への波及効果も含めて、戦力アップを図るケースはよく見られるが、相模原の場合、そうではない。

 相模原はこの夏、前述のMF児玉(名古屋グランパス→)をはじめ、DF木村誠二(FC東京→)、DF藤原優大(浦和レッズ→)、MF成岡輝瑠(清水エスパルス→)、MF松橋優安(東京ヴェルディ→)、FW兒玉澪王斗(サガン鳥栖→)と、20歳前後の選手を次々と期限付き移籍で獲得。彼らは一様にJリーグでの実績に乏しかったが、こうした若手を重用することで潜在能力を引き出し、チーム力アップへとつなげた。

 特に木村、藤原、成岡、松橋は完全に主力として定着し、シーズン終盤の残留争いに大きく貢献してきた。リーグ戦出場を重ねるなかで、一時は疲れからかパフォーマンスの低下も見られたが、現在は再びコンディションを上げ、チームのラストスパートに力を発揮している。

 彼らのような、まだ"色のついていない選手"が活躍することは、単純な戦力アップというだけでなく、相模原の魅力を高めることにもつながっていくのではないだろうか。

 期限付き移籍で加わっている以上、彼らが相模原で長くプレーする可能性は、おそらくそれほど高くない。相模原で活躍すればするほど、その可能性がさらに低くなるジレンマも、そこにはあるだろう。

 とはいえ、彼らは所属元での実績がほとんどない。つまりは、プロサッカー選手としての本格的なキャリアを、ここ相模原でスタートさせたと言ってもいい選手がほとんどだ。

 そんな選手たちが相模原でポテンシャルを引き出されたとの評価が定着すれば、この先、さらに才能豊かな選手が相模原でのプレーを希望してくるようになるかもしれない。

 たとえ"借りもの"であっても、そうやって相模原から育っていった選手が、いずれ日本代表で活躍するようにでもなれば、その後に続いてやってくる若い選手にも、そして相模原というクラブにも、自然と注目が集まるに違いない。

 J3降格候補として始まったシーズンもいよいよ大詰め。相模原は下馬評を覆し、J2残留を目前にしているばかりか、クラブの魅力度アップにも成功しようとしている。

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