読むと優しい気持ちになれる! 生きる意味を見出せない少年と、天真爛漫な異世界の住人の物語!

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2021年11月30日 17:41  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真『異刻メモワール』(るん太/KADOKAWA)
『異刻メモワール』(るん太/KADOKAWA)

 日々のしがらみやストレス、不安や悩みから、たまに周囲の人たちが自分とは違う生き物に見えることがある。人に囲まれていながら孤独であるというのは、1人であることよりはるかに心がすり減らされるものだ。その中で、いっそ誰か異世界に連れてってくれないかな、なんて現実逃避をしては引き戻されてため息……なんてことを繰り返している人も少なくないはず。

『異刻メモワール』(るん太/KADOKAWA)は、そういった寂しさを感じている人にぜひとも届いてほしい物語。『異刻メモワール』はコミックウォーカーにて連載されているマンガ作品で、『季刊SS』で連載中の人気イラストレーター・るん太さん初の商業マンガ本。独特な絵柄を存分に生かした世界観と繊細なストーリーで、多くのファンを魅了している。

 本作の主人公は、現世で居場所をなくし生きる意味を見出せない孤独な少年・トモ。ある日の下校中、トモはおなかをすかせている少年・リツに出会う。トモはたまたま持ち帰っていた給食のパンを手渡し、何気なく「どこから来たの?」と問いかけた――まではよかったのだが、気づくと見知らぬ世界へたどり着いていた。

異刻メモワール

異刻メモワール

 たどり着いた先は、トモのいた世界とはまったく違う、妖怪や怪獣、そしてリツが暮らしている不思議で奇妙な世界。トモを連れ込んでしまったリツは慌てて元の世界へ帰そうとするが、なぜか帰すことができない。そこで、トモが帰れる方法が見つかるまでの間、2人は一緒に暮らすことになったのだった。

 生きる意味を見いだせず自分の殻に閉じこもっているトモと違い、リツは天真爛漫で明るい性格。何事にも消極的なトモを少々強引に、それでいて優しく外へと連れ出し、楽しい時間を共有しようと動いていく。となり町への観光ツアーを開催したり、大家さんの洋服選びに付き合ったり……トモにとっては何もかもが非日常な中で、リツとの日常が紡がれていく。

異刻メモワール

 刺激的で新しいことだらけの毎日に、そしてリツの屈託のなさに触れ、トモの心にも少しずつ変化が現れ始める。第4話では悪夢にうなされていたトモが熱を出し、リツが症状に合わせて作ったという怪しげなスープを出してくれるのだが。トモはそれを飲み、始めは「おいしい」と嘘を言ってしまいそうになる。しかしふと思いとどまり、「すっごく変な味」と本音を話して笑うのだ。そしてそんなトモの反応に、リツは「あははは! そっかぁ!」と笑って返す。ほんの些細な出来事だが、その時のトモの表情を見れば、このやり取りからトモが何かを感じ取ったのだということが伝わってくる。

異刻メモワール

異刻メモワール

 こうしてトモの心を溶かしてくれる、明るく優しいリツ。しかし「ボクずっと昔独りぼっちだったことがあって」「時々怖くなるんだ」と、過去に何かがあったことも覗かせている。その詳細はまだ明かされていないが、リツの包み込んでくれるような優しさにはその独りぼっちが影響しているのかもしれない、と考えるとより興味が湧いてくる。さらに第6話では、トモにやたらと懐いてくる不思議な少年との出会いによって、更なる変化が起こり始める。リツが暮らす不思議な世界は、リツは、いったいどういう存在なのだろうか。

 このように、内容が非常に奥深く引き込まれるのはもちろん、本書は装丁にも趣向が凝らされている。タイトル部分には箔押しが、背の部分は和綴じのようなデザインが、遊び紙には世界観に合わせた装飾が、巻頭と巻末には4ページのカラーイラストが入っているというこだわりっぷり。さらに、紙もすべて手触りの良い温かみのある素材が使用されている。これはぜひとも紙の本として手にしてほしい……っ!

 どこまでも繊細で温かく、触れれば触れるほど優しい気持ちになれる『異刻メモワール』。2021年11月27日に1巻が発売したばかりだが、早くも続きが気になって仕方ない。この本でトモたちと異世界を疑似体験していくことで、きっと疲れた心に温もりが広がっていくのが分かるはず。

文=月乃雫


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