【独自】新生銀行TOBでSBIが仕掛けた周到な戦略 財務省、金融庁など「天下り19人リスト」入手

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2021年12月01日 08:00  AERA dot.

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写真会見するSBIホールディングスの北尾吉孝社長
会見するSBIホールディングスの北尾吉孝社長
 新生銀行は紆余曲折の末にインターネット金融大手のSBIホールディングスに対する買収防衛策を取り下げ、SBIの傘下に入る見通しとなった。買収劇の勝敗のカギを握ったのは、政府判断だ。この結末に至るまでにはSBIの周到な「天下り戦略」が透けて見える。


【入手】財務省、金融庁、SESCなどのSBIグループ「天下り19人」リストはこちら
 ことの発端はSBIが9月に突如、新生銀行の株式につき、金融庁の認可を得た上で、48%を上限に1株2千円という破格の金額で取得し、子会社化するという「株式公開買付(TOB)」の発表だった。


 敵対的買収を仕掛けられた新生銀行の経営陣は反発。両者の溝が埋まらぬまま、新生銀行は10月21日、TOBへの条件付き反対を発表した。


 だが、SBIが一切の歩み寄りを見せなかったため、新生銀行は、11月25日に臨時株主総会を緊急で招集し、買収防衛策(SBI以外の株主に1株あたり普通株0.8株を付与する新株予約権の割当)を審議する方向で調整していた。可決されれば、TOBが成立してもSBIの保有比率は最大30%程度にとどまり、SBIの買収工作を防御できるはずだった。


 ところが、新生銀行は24日夕刻、SBIによるTOBに対抗するための買収防衛策を一転、取り下げ、臨時株主総会を中止すると発表した。この間に一体、何があったのか。そのカギを握ったのは政府判断だった。


 政府は新生銀の前身で1998年に経営破綻した日本長期信用銀行に公的資金を注入した経緯があり、預金保険機構とその子会社の整理回収機構を通じ新生銀株を計2割超持つ。


「約2割の議決権を持つ政府が新生銀行の防衛策に賛成しない方針を示したことで、新生銀行の防衛策提案が否決される公算が高まり、取り下げざるを得なくなりました。新生銀行内ではこの政府判断に衝撃が走りました。SBIとの全面対決を回避し、協調的な姿勢に転じざるを得ませんでした」(金融庁関係者)


 今回のSBIによる新生銀行のTOBに対する政府判断の背景を官邸関係者がこう解説する。


「今回の判断は北尾吉孝社長が長年、培ってきた政権幹部や金融庁との太いパイプが少なからず影響した可能性が高い。具体的にはSBIは金融庁、財務省などあらゆる省の幹部らを次々と天下りさせてきたことで、今回の政府判断に影響を及ぼしたことは否定できない。こうしたSBIによる大規模な天下り“工作”は、さすがにやり過ぎという声も出ています」




 新生銀行はSBIが会長に推薦していた五味廣文元金融庁長官(元SBI社外取締役)ら役員の受け入れ、事業運営への協力にも合意。事実上、SBIの北尾会長の軍門に下ることになった。


 AERAdot.編集部が入手した政府が作成したSBIグループへの再就職状況一覧によると、前出の五味氏だけではなく、元金融担当相の竹中平蔵氏、元財務省事務次官の福田淳一氏、元農林水産省事務次官の末松広行氏もSBIホールディングスの社外取締役に就任。他にも防衛装備庁長官、財務省財務官、総務省統括審議官、金融庁検査局主任統括検査官2人、金融庁監督局主任統括検査官、財務省関東財務局長2人、証券取引等監視委員会(SESC)統括検査官4人など計19人の「天下り」の名前がずらりと記されている。


 経済産業省の官僚だった古賀茂明氏はこう語る。


「SBIグループへ天下り19人は、福田財務事務次官から金融庁の検査官レベルまで幅広く、尋常じゃない。すぐに天下らず、どこかをかませて受け入れるなど法にのっとっているでしょうが、逆に言えば、天下り規制はザルだということ。まず、人数で多すぎますね。しかもSBIを取り締まる立場の金融庁やSESCなど監督官庁からの天下りが多い。SBIは何を狙ってこれだけ多くの天下りを受け入れたのか。SBIは菅政権時代から地銀の再編を仕掛けており、そうした政治的な背景も考える必要があるでしょう。SBIへ金融庁、SESC職員の天下りがこれだけ多いという実態を見たら、誰でもズブズブの関係だと思うでしょうね。新生銀行の件でも、金融庁長官の五味さんをトップに送り込むには、裏ではいろんな調整があったのではないかと疑う人も多いと思います」


 SBIは北尾社長が掲げる「第四のメガバンク構想」の中核に新生銀行を置き、資本提携を進める地銀との関係強化などにより企業価値を高めると買収の意図を説明する。


「SBIの北尾社長は天下り人脈を駆使し、今回の新生銀行買収、ひいては『第四のメガバンク構想』の前進により、金融業界における存在感と発言力を高め、さらには『大阪・国際金融センター構想』への足掛かりにしたいという思惑が透けて見える。SBI社外取締役を務める竹中氏が率いるパソナグループもこのセンター関連の業務を受託しています。金融業界の覇権の一端を掌握しようとしているのではないか」(前出の官邸関係者)




 SBIは「第四のメガバンク構想」を掲げるものの、新生銀行が抱える約3490億円の公的資金返済の具体的な道筋は示していない。前出の古賀氏は警鐘をこう鳴らす。


「金融の世界も原発の世界と構造が似ています。電力も金融も規制が多く監督官庁が力を持っていますが、天下りを企業が受け入れることによってミイラ取りがミイラになってしまう。SBIがこうしてうまく立ち回ると他の金融業者も天下りを受け入れないと思うでしょう。政府は天下り規制の強化に踏み込むべきです」


 SBIホールディングスは19人の「天下り人脈」に対するAERAdot.の取材に対し、こう回答した。


「SBIグループでは事業拡大に伴い年間100名を大きく超えるキャリア(中途)採用を実施しており、その前職は様々であります。ご質問の金融当局出身者に関しましても、他のキャリア採用者と同様に、それぞれの経験や能力、人間性等に鑑み、(中略)採用しているものであり、特段の意図があるわけではございません」(コーポレート・コミュニケーション部)


(AERAdot.取材班)


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