テレワーク導入に悩む「中小企業」を救済! 川崎商工会議所が試みる対策

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2021年12月01日 08:11  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
小規模事業者はコロナ禍の影響を強く受け、いま苦境に立たされている。例えばテレワーク推進に向けICTの活用を進めようにも、その糸口が見つからない事業者も多いだろう。そんなとき力になってくれるのが商工会議所だ。



川崎商工会議所は7月1日、NTT東日本とともに『テレワーク・オンライン会議等に関する導入相談』をスタートさせた。


○コロナ禍でNTT東日本と連携を強化した川崎商工会議所



事業者に対する経営相談を主な業務とし、個別相談や専門相談、助成金申請支援、市内の大手企業を退職したOB人材をアドバイザーとした技術支援などによって、小規模事業者を支える川崎商工会議所。コロナ禍においてはテレワーク支援が急務となり、令和3年度の主要事業として、特別相談窓口が設置される運びとなった。



「商工会議所の主要なお客様は、小規模事業者や個人事業主の皆さまです。『コロナ禍で接触を減らそう、テレワーク導入といわれても、環境も整備していないし、相談先も分からないと』いった声を多数もらいました。これは従来の窓口では対応ができない、特別な窓口を新たに設置しなければならないと思い、NTT東日本 川崎支店とともに、主要コロナ禍経営相談強化事業として『テレワーク・オンライン会議等に関する導入相談』を始めました」(川崎商工会議所 前野氏)。


もともと専門相談制度ではICTに関する相談は受け付けていたが、あくまでスポット対応であり、相談先が分からない、機器も一からそろえる、その後のフォローも必要、そんな事業者に対して計画立てて対応できる相談窓口はこれまでなかったという。



「NTT東日本 川崎支店の支店長さんは、川崎商工会議所の2号議員かつ情報メディア部会長を務めておりまして、中小企業支援についても意見交換しています。今回はテレワーク・オンラインに関する支援事業について相談する中で、『令和3年度から新規事業として本格的に設置しましょう』という話になりました」(川崎商工会議所 斉藤氏)。


NTT東日本はコロナ禍以前からテレワークを積極的に提案、推進してきたICTを広く提供し、BCP(事業継続計画)とダイバーシティを浸透させ、小規模事業者の働き方をより良いものに変えることを同社は目指す。

○テレワークのみならず非対面型ビジネスモデルに広く対応



テレワーク・オンライン会議等に関する導入相談は、コロナ禍経営相談の強化事業として執り行われるものだ。令和3年からはオンライン相談窓口も開設され、Webページから予約をすれば、対面せずとも相談できるようになった。



経営相談と同じように中小企業振興部の経営指導員が窓口を担当。事業者のヒアリングと適切な支援を提案する中で、「テレワーク環境の整備」が課題の場合は、NTT東日本 川崎支店と連携しつつコンサルティングを行うという流れになる。



「まずはNTT東日本のコンシェルジュが対応いたします。彼らは長年当社のサービスを取り扱っており、電話・インターネットの回線やクラウドサービスに関する情報などを展開できる人材が担当しております。やはりテレワークに関する内容が多いのですが、『業務を委託した海外とのコミュニケーション手段としてICTが必要』といったものもありました」(NTT東日本 細田氏)。


窓口が開設された7月15日にはキックオフセミナーと個別相談会も開催され、10月の段階で7件の導入相談があったそうだ。



「セミナーはWebと対面のハイブリッドで開催しまして、テレワークだけでなく、"非対面型ビジネスモデル"としてデジタル化の導入事例やサービスを広く紹介しました。ビジネスの立て直しを図ろうとする事業者の方が多いわけですから、事業再構築補助金とも絡む内容です」(川崎商工会議所 斉藤氏)。



参加者の顔ぶれはサービス業や製造業、不動産業などさまざま。これまでデジタル化せずとも事業が成り立っていたが、コロナ禍によって急遽非対面が求められる事態に直面し、戸惑いを感じているケースが多かったという。



「ウィズ/アフターコロナにおいては、皆さん『これまで通りやっても通用しない』ということが分かってきています。デジタル化は大企業だけの問題でなく、小規模事業者にその必要性をいかに訴えていくか、そこが課題です。素晴らしい技術やサービスを持つ小規模事業者はたくさんいます。ただ環境を整備するだけでなく、事業転換にも使えるという点も含めて伝えていくことが必要でしょう」(川崎商工会議所 前野氏)。



「ICTはあくまで手段の一つ。テレワークもまた、ICTで実現できるDX(デジタルトランスフォーメーション)のジャンルの一つと言えます」(NTT東日本 細田氏)。


○小規模事業者を支える商工会議所



商工会議所の会員には小規模事業者が多く、予算や人員に余裕があるわけではない。ICTの導入だけでなく、そのICT環境の維持・活用も支援しなければ事業の継続につながらないだろう。NTT東日本 川崎支店の細田氏は「小規模事業者の皆さまにコロナ禍の変化を乗り越えていただくためには、補助金もうまく利用しつつ、サポートできる環境を構築することが今後の課題」と話す。



「川崎支店には営業が約20名いますが、彼らだけで川崎市内の事業者さまに適切なソリューションを提供するのは困難です。川崎商工会議所さんとのお付き合いでは、新たな事業者さまを紹介されており、非常に意義があることだと捉えています」(NTT東日本 細田氏)。



それに対し川崎商工会議所の前野氏は、改めてNTT東日本との協力体制の重要さを強調した。



「我々はNTT東日本 川崎支店さんを全面的に信頼しています。事業者さんの相談に対する対応も迅速に行ってもらえ、結果も教えていただけているので、今後も信頼関係を築いていければなと思います」(川崎商工会議所 前野氏)。



商工会議所としての業務範囲は非常に広く、経営相談ではさまざまな対応が行える。だが会員組織であることも相まって、その認知度は思ったほど高くないのが現状だ。それこそ、日商簿記検定などで関わるぐらいがほとんどだろう。



しかし、このコロナ禍によって中小企業の課題解決を行う支援機関だということを改めて認識した人も多いのではないだろうか。経営者や個人事業主のみならず、これから商売を始めようという方や知り合いに経営者がいる人も、「気軽に経営相談できる商工会議所という存在がある」ということを知っておけば、いざというときの力になるはずだ。


最後にNTT東日本 川崎支店の細田氏は、小規模事業者に向けたICT導入支援の取り組みと、川崎商工会議所との提携について、次のようにまとめた。



「ICTの世界は日進月歩ですが、NTTグループ全体としても、中小企業をバックアップできる環境がだいぶそろってきたと感じます。ただ、ICTはあまりにも幅が広いがゆえに、情報がどこにあるか分からない、それをどう選んで良いか分からないという状況があると思います。ケースごとに個々の課題を掘り起こし、適切なサポートを提供するための窓口として、今後も商工会議所さんとの連携を強めていきたいですね」(NTT東日本 細田氏)。(加賀章喜)
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