実力派女優・萩原みのり、コンプレックスが原動力に「まだまだ売れていない」

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2021年12月01日 10:00  ドワンゴジェイピーnews

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2021年の出演作品は10本を超えるなど、確かな演技力で映画、ドラマに引っ張りだこの萩原みのり。最新作映画『成れの果て』でも、自身の過去にあった悲惨な事件の加害者になった男性が、姉と婚約したことを知り、陰鬱な気持ちを爆発させる難役を繊細な演技で好演した。充実一途に感じられる萩原だが「まだまだ自信が持てない」と意外な言葉が口をつく。10年近いキャリアを持つ萩原が抱えている思いとは――。

演じることで初めて理解できる感情もある

地上波連続ドラマ初主演を果たした『RISKY』を始め、『白い濁流』、『お茶にごす。』など作品ごとにまったく違う顔を見せる萩原。その振れ幅の大きさは、若手女優のなかでも群を抜くほど変幻自在だ。映画『成れの果て』で演じた小夜も、心に大きな傷を残した事件に関与した男性が姉の婚約者になったことを知り、ある衝撃的な行動をとってしまう――といった、一筋縄ではいかないキャラクターだ。


これまでドラスティックな役柄を数々こなしてきた萩原をしても、本作の台本を読んだときは「役を受けるべきか悩んだ」とコメントするほど、小夜がとった行動について理解ができなかったという。そんななか、「とにかく小夜という女性の側に寄り添いたい」というシンプルな思いを拠り所にオファーを受けた。

半信半疑で臨んだ現場。実際小夜という女性を演じると、「台本を読んで頭のなかで想像していたよりも、比べ物にならないぐらい苦しかった」という。しかしその一方で「演じてみたことによって、台本では理解できなかった小夜の最後の選択も腑に落ちるところがあったんです」と、現場で役柄を含め、作品を作り上げていく醍醐味も実感することができた。


現場での変化「監督から演技のことで意見を求められるようになった」

2013年にドラマ『放課後グルーヴ』で女優デビュー以来、数々の映画やドラマに出演してきた萩原。特に近年は、主演作を含め出演ラッシュが訪れているが、現場での立ち振る舞いには変化が生じているのだろうか――。


「デビューしたてのころは、自分が思っていたことを口に出したり、監督に相談したりすることはまったくできませんでした。言われたことを、とにかくしっかりやるだけ」と振り返っていたが、そんななか「思ったことを言ってもいいタイミングは少しずつ増えてきたのかな……」と感じることも。

最初に変化を感じたのが、2017年に公開された映画『ハローグッバイ』での現場だったという。「あの作品では初めて台本の会議に参加させていただき、キャラクターを作る段階から一緒にやらせていただいたんです。すごく楽しくて、こういう時間が増えたらいいなと思っていました。そのときから少しずつ、監督が演技のことで意見を求めてくれるようになった気がします」。

本作でメガホンをとった宮岡太郎監督も萩原にいろいろと相談してくれる監督だったようで「私もメチャクチャたくさん相談しながら小夜という役に向き合っていけました」と充実した現場だったことを明かす。


一方で「監督から声を掛けていただけると話せるのですが、自分から率先してアイデアを試してみたり、監督に演技プランをぶつけてみたりする勇気はまだ全然ないんです」と苦笑いを浮かべる。


『表参道高校合唱部!』で感じた劣等感、一方で原動力にも

作品のために自分なりにしっかりと役を理解し、準備段階で疑問に思ったことや、感じたことは現場に持っていくという萩原。特に主演として真ん中に立つときは「絶対にモヤモヤした気持ちを残さず現場に立ちたい」という思いは強い。しかし、どうしても自分から率先して意見を言うことは躊躇してしまうというのだ。


その理由について問うと「売れていないからだと思います。自分のなかで、まだ何者でもない不安があるんだと思います」という答えが返ってくる。すでに映画やドラマでも主演作を始め、作品が途切れることがない印象を持つ萩原の口からこうした言葉が聞かれるのは意外に感じる。

「一番それを強く感じたのが『表参道高校合唱部!』というドラマの現場でした。あそこまで同世代が集まってお芝居をすることがなかったのですが、あのドラマを機に、共演したみんなが異常なスピードで進んでいくのを、一番後ろからただ立って見ていた感覚が強く残って……。すごくコンプレックスを感じてしまったんです」。


現場で味わった“何者でもない人”という感覚。撮影では「周りの奴らを見てみろ!もっとできているぞ」と毎日ダメ出しをされ、泣きながら現場に通っていた。「あのとき、毎日自分がどれだけ芝居ができていないのかを思い知らされました。悔しくて悲しくて、あれからしばらくはドラマが怖いと思ってしまっていました」。


しかし萩原は「でも、こうした感覚って私のなかでは大切なんです」と語ると「悔しいからこそ、次の仕事をメッチャ頑張ろうとか、絶対何者かになって、成長した姿を見せるんだと前に進めるんだと思うんです」と悔しさやコンプレックスが自身の原動力になっているという。


まだまだ「自信は持てない」というが、それでも丁寧に作品に取り組んだ経験は糧になっている。「テレビをつけて『表参道高校合唱部!』で一緒だった子たちが活躍していると、悔しい部分もありますが、すごく落ち着くしホッとした気持ちになれるんです。一時期あったドラマ恐怖症も最近では、また勝負したいと思えるようにもなってきています。もともと負けず嫌いな性格なので、やっぱり悔しいという思いは前に進む力になります」。


「まだまだ売れていない」と厳しい自己評価をした萩原。彼女にとって「売れる」とはどんな基準なのだろうか。


「結構そのことについて考えるんです。例えばSNSのフォロワーが100万人を超えたら“売れた”と言えるのか……とか。でも結局なにが答えなのか分からない。そんななか、一つ目標にしているのが、私のおじいちゃん、おばあちゃんがもっと安心して見られる作品に出られるようになること。そうしたら少しは気持ち的に楽になるのかなと思います。いま私が演じる役柄って、家族からすると苦しそうに感じるものが多くて、おばあちゃんも『のんちゃんはもっと明るい子なのにねぇ』って言うんです。あとは、おじいちゃん、おばあちゃんが高齢になってきているので、映画館に行かなくてもテレビで観られるような役、例えば朝ドラだったら、毎日観てもらえるじゃないですか。そういう作品に出られるようになったら、さらに自信が持てるのかもしれません」。

とは言いつつも、萩原だからこそ……というキレキレな役柄への期待も大きい。「そういう役が続くことに一時期悩んだこともあったのですが、先輩の役者に『この役をやらせたら右に出るものはいないよねって言わせるまでやり続けた方がいいよ』ってアドバイスされて、なんかそういうのって格好いいなと思ったので、そちらも突き進んでいきたいです」と目を輝かせる。



2021年を締めくくる映画『成れの果て』が公開を迎える。「私自身、どの取材でも『ぜひ観て欲しいです』と言えていないんです」と深いテーマが内在する作品のPRに悩ましい表情を浮かべると「でも小夜がとった『忘れなくてもいい』『許さなくてもいい』という選択肢は、きっといつかどこかで誰かの心を救うかもしれない。そんな思いで撮影に臨みました」と作品に込めた胸の内を語ってくれた。


取材・文:磯部正和

撮影:山田健史







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