公立校が集まってスタートした「Liga Agresiva」福岡リーグ

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2021年12月02日 22:04  ベースボールキング

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高校野球のリーグ戦であるLiga Futuraは、単なるリーグ戦という形式だけでなく、様々な革新的なトライアルをして注目を集めてきた。昨年までは大阪、新潟、長野の3府県で行われてきたが、今年からLiga Agresivaと名称を改め、14都府県に渡る12のリーグで80校以上の高校が参加。福岡県でも、今年からLiga Agresivaがスタートした。



■若い指導者が中心になって始動!
参加校は以下の9校
城南高校、中村学園三陽高校、福岡中央高校、大川樟風高校、田川科学技術高校、東鷹高校、嘉穂総合高校、福岡講倫館高校、明善高校

「公立高校の30代の若い指導者の先生を中心に、リーグを立ち上げました。このリーグは球数制限、低反発金属バットか木製バットの使用など、いろいろと新しい試みが盛り込まれています。福岡は野球どころで、高校野球への関心も高いのですが、昔のスタイルにこだわりを持つ方も多いです。そういう方から見れば、違和感があるかもしれませんが、高校野球の明日を見つめるうえでも、Liga Agresivaは重要だと思います」

福岡県立城南高校の中野雄斗監督は語る。福岡県でも私学が優勢で、公立高校にとっては甲子園への道は遠いが、実力アップと、野球を通した高校生の成長のために、必要な試みだという。

個人が成長できる。指導者の交流も
中野監督は、具体的なメリットとして2点を挙げた。

「1つは、個人の成長にフォーカスできるということです。やはり、公立高校はトーナメントに勝つという目的があると組織力の向上がメインになり、個人の技術的成長がしにくい状況があります。ただ、リーグ戦は個人の技術的成長にフォーカスできることからその点に期待しています。
2つは他校との交流です。定期的に他校の先生とお会いすることで、野球の技術であったりチーム運営であったり相談できることも多くなると思います。また、選手間も他校の生徒と関わることで野球のみならず視野が広がるきっかけになるものと考えています」

また福岡県立嘉穂総合高校の山口椋也監督も、
「リーグ戦のメリットは第一に選手の成長です。自分自身振り返ると、勝つことを第一目標に掲げ過ぎて、選手に考えさせることを怠っていたと思います。今回思い切って、選手に考える場面を与えて、どうしたらベストに近づけるのかを選手たちが思考することで、選手の大きな成長に繋がることを期待しています。
嘉穂総合高校野球部は合同チーム等を組みながら少ない人数で野球をしてきました。しかし、ここ数年ようやく単独チームで試合に出れるようになり、野球のできる有難さを感じながら日々取り組んでいます。日常生活の人間力が全て野球に繋がるということを意識しながら日々の生活を送ることはチームの徹底事項です。目立った選手はいませんが、その分、チーム力で勝利を目指します」
と語った。


選手たちが試合運びを考える
Liga Agresivaではアメリカの年齢別の球数、登板間隔を定めた「ピッチスマート」に準拠した球数制限、低反発金属バット、または木製バットの使用を定めているが、これに加えて各リーグで独自のルールを導入することもできる。福岡の場合、投手はストライク先行、打者は初球から打つ積極性を身につけるために1-1のカウントから始まることになっている。



また、試合は選手が主導して戦うこととし、監督、指導者はベンチを外れて試合を見ることにしている。ただしランナーコーチになることはできる。

10月31日、福岡県立城南高校グラウンドでは、城南高対福岡講倫館高、福岡講倫館高対大川樟風高、城南高対大川樟風高の3試合が行われた。

両校の指導者はネット裏の席で、試合を見ている。大きな声で選手に指示を送ることもなく、腕を組んで教え子たちの試合を見ていた。
また、指導者同士で意見交換をするシーンも見られた。城南高校の中野監督の言う通り、リーグ戦は高校指導者が交流を通じて治験を高める機会でもあるのだ。



各校の選手数にはばらつきがあり、選手の実力差もあると思われる対戦もあったが、好ゲームが続く。低反発の金属バットや木製バットを使用することで打球速度が落ちて、野手は思い切って突っ込むことができる。また投手も長打を過度に気にすることなくストライクゾーンに投げ込むことができる。
低反発のバットを使用することで思わぬ効果が表れるのだ。
口汚いヤジなどが飛ぶこともなく、和気あいあいとした雰囲気で試合が進行した。

「高校野球をする仲間」という一体感を醸成
高校グラウンドで行われる試合では、ホスト校が遠征する学校を受け入れていろいろなサポートもする。城南高校は選手数が多いこともあって、自分たちが出場しない試合も含めて、グラウンド整備を行っていた。
これに対して、ゲスト校の生徒からは「ありがとうございます!」という声が上がっていた。



このリーグ戦のポイントは、試合経験を積むだけではなく、他校の選手、指導者が交流し「高校野球をする仲間」という一体感を醸成することもある。
始まったばかりの福岡リーグだが「野球どころ福岡」の未来をに向けて、新たなムーブメントになりそうな気配がした。(取材・文・写真:広尾晃)

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