サービス業の母親は死産リスク1.76倍 「命の格差」が生まれる背景は

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2021年12月03日 07:00  AERA dot.

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写真今や、第1子出産前後の就業継続率は5割を超える。職場における母性保護の促進に向けた、企業の努力や社会の変化が必要だ
今や、第1子出産前後の就業継続率は5割を超える。職場における母性保護の促進に向けた、企業の努力や社会の変化が必要だ
 母親の職業により、死産リスクに差があることがわかった。最も高かったのは「サービス業」だった。原因と、必要な対策は何か。AERA 2021年12月6日号の記事を紹介する。


【図表】職種別の死産リスクはこちら
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 1.76倍──。全ての職業の中で最も死産リスクが高かったのは「サービス職」で、「管理・専門・技術職」に従事する女性と比べて1.8倍近い差があることが疫学研究で明らかになった。


「想像の域ではありますが、サービス職は介護職員や美容師、ウェートレスなど対人業務と考えられる仕事が多くあります。そのため、おなかが張ったとか休憩が必要な時、自分のタイミングで休息を取りにくい環境にあり、それが胎児の健康に影響を与えたのかもしれません」


職業と疾病リスク関係


 大阪医科薬科大学医学部の鈴木有佳助教(社会・行動科学教室)は、そう話す。母親の職業と死産リスクについて、国の約530万人分のデータを使った日本で初めての疫学研究で、注目を集めている。


 そもそも、職業と疾病リスクには密接な関係があるとされ、「健康格差」と呼ばれる。例えば、サービス業で働く人は肉体労働に就いている人より脳卒中の発症率が高いとの報告があり、職場環境や行動、ストレスの影響と考えられる。鈴木助教たちの研究チームは、母親の職業によって子どもの死亡リスクも同様に異なるのではないかと考えた。


 厚生労働省が5年ごとに実施する人口動態職業・産業別統計の1995年度から5回分の「出生票」と「死産票」、それと95年以降の人口動態調査の「死亡票」データを用い、妊娠12週以降の「自然死産リスク」と出生後1年未満の新生児・乳児の「死亡リスク」を解析した。


 その結果、対象者のうち自然死産は1.1%、新生児・乳児死亡は0.2%と判明。母親の職業と「死亡リスク」には関連は見られなかったが、「死産リスク」には差が認められた。


 サービス職に次いで死産リスクが高かったのは、保安や農林漁業、運輸などに従事する「肉体労働職」の母親で、管理・専門・技術職の1.54倍。一見、サービス業より肉体労働の方が死産リスクは高いと思われるが、鈴木助教によれば肉体労働はサービス業より自分のタイミングで休息を取りやすく、妊婦への身体的負担が重い作業は法律で制限されている可能性が考えられる。これらが複合的に影響し、サービス業より低リスクになったのではないかという。



体調に合わせた休憩



 一方、管理・専門・技術職が職業の中で最も低かったのはなぜなのか。鈴木助教は、職場での裁量権に注目する。


「管理・専門・技術職は仕事への要求度が高い一方、裁量権があることが多く、仕事の順番などを自分でコントロールでき職種性ストレスはそこまで大きくならないことがわかっています。それらが、死産リスクを低くした可能性が考えられます」


 ちなみに、職を持たない無職の母親の自然死産が最も低かったのは、自分の体調に合わせ休憩を取りやすいなどリスクの上昇を抑えられる環境にあるからだろうという。ただし、この研究の「職業」は、出産時の職業であり妊娠時の職業でないことには注意が必要だ。


 健康格差は「命の格差」ともいわれる。だがそれは、「自己責任」という風潮が根強い。健康は極めて個人的な事情を抱えているので、健康管理は自分の責任だという意見だ。しかし、と鈴木助教は強調する。


「変わるべきは、働く妊娠中の母親ではなく企業や社会です」


 妊娠中の母親はおなかの赤ちゃんを守るため、自ら置かれた環境で、できる限りの対策はしているはず。それでも職種によって死産リスクに差があった。そうであれば、命の格差を少しでも縮めるには、企業と社会が変わることが大切、と語る。


「企業は、作業の軽減だけでなく休憩や休暇の取りやすさを含め、柔軟性のある措置をとる必要があります。今は、女性は妊娠中も働き子どもを産んで育てていく社会になっています。社会全体で妊婦を守り、死産を少しでも減らす仕組みをつくることが重要です」


(編集部・野村昌二)

※AERA 2021年12月6日号


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