注目は日大付属、女子校、臨海部…2022年中学入試「志願者動向」を模試結果から予測

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2021年12月03日 08:00  AERA dot.

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写真来年度も過去最高の受験率を記録するとみられる、首都圏の中学入試。その理由とは(※写真はイメージです/GettyImages)
来年度も過去最高の受験率を記録するとみられる、首都圏の中学入試。その理由とは(※写真はイメージです/GettyImages)
 今春の首都圏の中学入試は過去最高の受験率を記録しましたが、その傾向は来年度入試でも続くのでしょうか。大手進学塾などが行っている模試の結果は、受験者の動向を探る指標になります。中学受験の専門家たちは模試の結果をどう読み解いているのか。10月に行われた各塾の模試結果から、来年度の入試傾向や志願者数の増えそうな学校がどこかを聞きました。


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■中学受験率は「過去最高」を更新か


 首都圏模試センターの調べでは、中学入試は7年連続で受験生が増加し、2021年度の受験率は16.86%と、過去最高に達した。


 この傾向は来年度も続くのだろうか。今回取材した3氏(安田教育研究所代表の安田理さん、森上教育研究所代表の森上展安さん、首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さん)はいずれも、中学受験率は来年度も上昇し、記録を更新すると予測する。安田教育研究所の調べによると、今年10月に行われた4大模試(首都圏模試センター・四谷大塚・日能研・サピックス)の受験者の合計は4万7255人で、昨年同期の4万5693人と比較して1562人増、約3.4%増えている。安田さんは、「小規模塾の生徒のなかには、4大模試を受けていない生徒もいる。本番の入試では4%増くらいになるのでは」と予想する。


 さらに北さんは増加傾向について、次のように話す。


「6年生はもちろんですが、模試を受ける5年生も増えています。来年度はまずまちがいなく増えるでしょうが、再来年度も増加するでしょう」


 中学受験者数が増加傾向にある背景には、昨年同様、コロナ禍での公立と私立の対応の差があるとみられている。オンラインでいち早く授業を再開した私立に比べて、公立は後手に回り、その結果「私立に入れたほうが安心」という家庭が増加した。北さんは「コロナ禍が私立の追い風になった」と話す。


 森上教育研究所の調べによると、東京・神奈川の入試初日となる2月1日の午後や、2日以降の入試の受験者数が増えているという。



「第1志望とされる学校が多い2月1日午前に実施される入試の合格率は約3割にすぎません。21年度入試では、残り7割の受験生が途中であきらめることなく、最後まで受け続けた。何がなんでも私立に行きたいという意思の表れでしょう」(森上さん)


 もっとも安田さんは「コロナ禍以前から私学への傾斜は始まっていた」と、次のように分析する。


「ここ2年の増加傾向はコロナ禍で顕在化した公私の教育内容の差が理由でしょうが、それ以前から受験生は微増していた。大学入試改革がゆれ動いて不安が募り、保護者や受験生は『私学のほうが入試改革に、より敏速に対応してくれる』という期待があったのでは。大学付属校人気も、それが要因のひとつでしょう。また、社会のグローバル化、デジタル化が急速に進んでいますが、英語、ICT(情報通信技術)教育は私学のほうが進んでいます」


■家計的に私立へのハードルが下がった


 森上さんは、「家計の面でも私立へのハードルが下がった」と分析する。夫婦共働き世帯は1990年代に専業主婦世帯を上回り、今では2倍以上の差になっている。


「中高で私学に進学するためには、年収800万円以上が必要と言われていますが、給与自体は上がらなくても、2人が働くことで2倍になる。さらに2020年からは私立高校向けの就学支援金制度の額が増加し、実質無料となるケースも。家計的に中学3年間だけ乗り切ればなんとかなるという意識で私立中学を志望する家庭も増えているのでは」


 ただ、受験生の増え方には偏りがある。森上教育研究所の調べによると、偏差値帯(四谷大塚の場合)を〔A65以上、B64〜60、C59〜55、D54〜50、E49〜45、F44〜40、G40未満、H非エントリー〕と分類した場合、Eより下の中堅校以下での増加が著しいという。


「通常、中学受験する際は小学3年の2月に入塾し3年間勉強しますが、昨年のコロナ禍での私立中の対応を見て、5年次に塾に駆け込んだ生徒もいたのでは。2年間の準備では上位・難関校には届かないため、中堅以下の学校の志望者が増えているのでしょう」(森上さん)



 北さんは、受験生の意識が二極化していると指摘する。


「従来通り難関校を狙う層と、偏差値や大学進学実績にとらわれないで、新しい教育に期待する層にわかれてきました」


 ここで10月模試の注目校を見てみよう。男子校では獨協(東京都文京区)が大きく伸びている。21年度から2月1日に午後入試を導入。併願ができるようになったことから、大勢の受験生が足を運び、立地や環境の良さなどが認識され、人気に火が付いた。同様に21年度から午後入試を導入した神奈川大附属(横浜市)も注目され、志望者数を伸ばしている。日本大学系の付属は21年度に引き続き好調。特に日大系付属の唯一の男子校、日本大豊山(東京都文京区)は連続で志望者を増やしている。ただ今後、日大の不祥事が付属校の志望者数にも影響するかは未知数だ。



■低迷していた女子校人気が復活


 一時期低迷していた女子校の人気も復活。歴史のある伝統校が盛り返している。特に山脇学園(東京都港区)の伸びが目立った。


「赤坂という立地に加えて、短大の施設を上手に活用し、イングリッシュアイランド、サイエンスアイランド、リベラルアーツアイランドという三つの教育プラットフォームを設置。SNSで盛んに発信するなど、デジタルの活用も進んでいる」(安田さん)


 そのほか学習院女子(東京都新宿区)、実践女子学園(東京都渋谷区)、三輪田学園(東京都千代田区)、跡見学園(東京都文京区)なども伸ばしている。



「コロナ禍で学校説明会ができなかったため、新たな学校を知る機会がなく、知名度のある伝統校に人気が集まった。今は伝統校もあぐらをかいていないで、ICTを積極的に取り入れるなどしています」(安田さん)


 一方、北さんは女子校の人気回復について、コロナの影響を指摘する。


「保護者に聞くと、授業の再開よりも、先生方がオンラインを駆使して生徒と学校とのつながりを保ったことへの感謝が大きかった。女子校は生徒のメンタルケアをきめ細かく行っており、それが評価されたのではないでしょうか」(北さん)



■湾岸エリアの学校に注目


 共学校の注目は、広尾学園小石川(東京都文京区)の躍進だ。今年改組したばかりだが志願者を大幅に伸ばし「安全校として併願するのは危険」という存在になっている。今年共学化し校名を変えた光英VERITAS(千葉県松戸市)や、昨年から共学化・校名変更した品川翔英(東京都品川区)も志望者を集めた。



「国際系を標ぼうする学校は、安定しています。志願者が目立って増えているわけではありませんが、高止まりしているのが三田国際学園(東京都世田谷区)、開智日本橋学園(東京都中央区)、東洋大京北(東京都文京区)。いずれも共学化してから今年初めて卒業生が輩出して実績を上げており、さらに人気が出そうです」(北さん)



 もうひとつの注目が、開発が目覚ましい湾岸エリアの学校だ。今年共学化した芝浦工業大学附属(東京都江東区)、かえつ有明(同)、青稜(東京都品川区)、安田学園(東京都墨田区)など臨海部周辺の学校が志望者を集めている。


「臨海部は人口が増えており、所得が高く教育熱心な層が多い。これからも伸びていきそうです」(安田さん)


 来年度も志願者が増え、今年度以上に競争が激化しそうな中学入試。しっかりと志望校の動向をキャッチして対策を講じたい。


(柿崎明子)


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