Qualcommがソニーと提携してカメラ機能を強化、Appleなどに対抗する狙いも

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2021年12月04日 07:51  ITmedia Mobile

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写真Qualcommは、米ハワイ州でSnapdragon Tech Summitを開催。フラグシップモデル向けのSnapdragon 8 Gen 1を発表した
Qualcommは、米ハワイ州でSnapdragon Tech Summitを開催。フラグシップモデル向けのSnapdragon 8 Gen 1を発表した

 Qualcommは12月1日に、自社イベントのSnapdragon Tech Summitを開催。フラグシップモデルなどに採用される最上位のプロセッサ「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。3桁の型番が付与されていた従来のSnapdragonから命名規則を改め、数字で性能の高低を表すとともに、世代を明確にした格好だ。



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 Snapdragon 8 Gen 1は、4nmプロセスのKryoコアを採用。GPUのAdrenoも進化した。CPUは20%、GPUは30%性能が向上しつつ、それぞれ電力も改善されている。より大きく進化したのが、画像処理をつかさどるISP(Image Signal Processor)や、第7世代のAIエンジンだ。CPUやGPU以上に、カメラやAIといった今のスマートフォンに求められる性能にフォーカスして、性能を向上させたのがSnapdragon 8 Gen 1の特徴といえる。



 こうした中、同イベントではQualcommとソニーの提携も発表された。背景には、垂直統合型の開発体制でカメラ機能を強化するAppleなどの競合他社に対抗する思惑がありそうだ。



●ISPやAI処理能力を大幅に強化したSnapdragon 8 Gen 1



 Qualcommは12月1日から2日かけ、自社イベントのSnapdragon Tech Summitを米ハワイ州で開催した。初日の基調講演で披露されたのが、フラグシップモデルなどの最上級スマートフォンに搭載されるSnapdragon 8 Gen 1だ。同チップを搭載したスマートフォンは、2021年末から登場する見込み。ソニー、シャープといった日本メーカーはもちろん、モトローラやOPPO、Xiaomi、ZTEといった日本でおなじみの海外メーカーも、Snapdragon 8 Gen 1を採用する。



 Snapdragon 8 Gen 1は、CPUやGPUの性能以上に、ISPの進化やAIの処理能力向上に比重が置かれたプラットフォームだ。これは、最新のスマートフォンに求められるニーズを色濃く反映した結果といえる。例えば、ISPは18ビットに対応しており、Snapdragon 888と比べて4000倍を超えるカメラデータを、毎秒最大3.2ギガピクセルで撮影することができる。8K HDRに対応していたり、ビデオ撮影用の新たなBokeh Engine(ボケエンジン)を搭載したりするのも、撮影を重視していることの表れだ。



 同様にAIの処理能力も大きく向上した。第7世代のAIエンジンを搭載したことで、テンソル(Tensor)アクセラレーターが2倍に高速化。共有メモリも2倍にサイズが拡大した。ソフトウェア面での改良も加え、Qualcomm Neural Processing SDKの性能を2倍に上げた。ハードウェアとソフトウェアをともに2倍ずつ改善することで、AIの処理能力はSnapdragon 888から約4倍に向上。イベントで公開された各種ベンチマークの結果も、それを裏付ける。



 カメラとAIは、ともに最新のスマートフォンで重視される機能の1つだ。特にハイエンドモデルでは、いかに高画質な写真や動画が撮れるかが差別化の軸になっている。ISPだけでなく、AIを活用したノイズ削減やズーム、HDRなども、スマートフォンのカメラでは重要な要素だ。単純な処理能力の高低ではなく、メーカーが重視するユースケースに特化した機能を進化させているのが、Snapdragon 8 Gen 1といえる。



 実際、iPhone用のAシリーズを自社で設計するAppleや、Pixel 6シリーズから自社で設計したプロセッサの「Tensor」を採用したGoogleも、ISPやAIの処理能力に注力している。米国の制裁が続き、自社でのプロセッサ開発が難しくなってしまったHuaweiも、KirinシリーズはISPやAIの強化に重きを置いていた。同様に、QualcommもISPやAIエンジンの改良に注力していたが、Snapdragon 8 Gen 1でもその傾向に変わりはない。



●カメラセンサーとISPの連携強化を狙う、Qualcommとソニー



 プロセッサ単体で性能を向上させるだけでなく、スマートフォンやさまざまなモバイルデバイスに必要なキーデバイスを巻き込んでエコシステムを拡大しているのも、Qualcommの戦略だ。同イベントでは、Qualcommとソニーが米サンディエゴにジョイントラボを設立することを発表した。ソニーの持つイメージセンサーと、Qualcommのプロセッサをより緊密に連携させるのが、その目的だ。



 イメージセンサーで高いシェアを誇るソニーだが、それだけで写真を撮ることは不可能だ。対するQualcommも、SnapdragonにISPを内蔵しているものの、光を通すレンズや光を取り込むイメージセンサーがなければ、画像の処理ができない。イメージセンサーとISPは1つになって、初めてカメラとして機能するというわけだ。2社が研究レベルから提携することで、スマートフォンなどに搭載されるカメラの質を向上させやすくなる。



 Qualcommのモバイルハンドセットビジネス担当シニアバイスプレジデントのクリストファー・パトリック氏は、「最新のスマートフォンでは、イメージセンサーができることと、ISPやその周辺のアルゴリズムに、非常に強い関係性がある」と語る。イメージセンサーでトップシェアを誇るソニーとQualcommがタッグを組み、「共同で技術開発を行っていく」(同)のがジョイントラボ設立の狙いだ。



 パトリック氏が「お客さまがより簡単な取り組みで済むようになる」が語るように、ソニーやQualcommから部品を調達するメーカー各社にとっても、この提携はプラスになりそうだ。それぞれバラバラに開発されたプロセッサとイメージセンサーを購入し、自らで組み合わせるより、統合されたイメージセンサーとプロセッサを一式まとめて購入した方が、開発のハードルが下がるからだ。もちろん、メーカーごとの味付けをしなければ差別化ができなくなるが、浮いたリソースやコストを他社との差別化のための開発に回しやすくなる。



 ソニーのイメージセンサーは、スマートフォンでトップシェアを誇る一方で、サムスンなどの競合他社も徐々に力をつけている。Qualcommも、ハイエンドモデルではSnapdragonの採用率が高いものの、ミドルレンジやローエンドではMediaTekなどのプロセッサが強く、ハイエンドモデルでもSnapdragon以外のプロセッサが採用されるケースが徐々に増えている。



 クオリティーが高く、実装も容易となれば、ビジネス上の相乗効果が出る可能性もある。Qualcommとソニーがタッグを組めば、Snapdragonを採用した流れでイメージセンサーをソニーにしたり、逆にソニーのイメージセンサーを採用したいためにプロセッサをSnapdragonにしたりするといったケースも出てくるだろう。シェアの高い2社が組むだけに、そのインパクトは大きい。



●垂直統合モデルとの戦いでも重要性を増す、隣接分野とのパートナーシップ



 Snapdragon Tech Summitには、Androidを担当するGoogleのシニアバイスプレジデント、ヒロシ・ロックハイマー氏もゲストとして登壇。Qualcommのクリスティアーノ・アモンCEOは、「イノベーションはAndroidで最初に起こる」と語りながら、5Gやフォルダブルなどの新しいホームファクターが他社に先駆け登場したことを称賛した。ロックハイマー氏は、これに対し「Androidをオープンソース化したのは、自分たちだけでできないことを分かっていたから」とコメント。アモン氏もこれに同意し、「QualcommもGoogleも、誰もがイノベーションを起こせる水平モデルを選択した」と語っていた。



 一方で、Appleに代表される垂直統合型ビジネスモデルの方が、エコシステムまで含めた端末の作り込みをしやすいのも事実だ。実際、当のGoogleも、先に述べた通り、Pixel 6、6 Proには自社設計のTensorを採用。カメラやボイスレコーダーにTensorのAI処理を生かし、他社のスマートフォンを超える20倍の超解像ズームや文字起こし機能を実現した。ソニーとのジョイントラボは、水平分業モデルを維持しながら、こうした開発手法に対抗するための一手とも見ることができる。



 特にAppleのように端末の販売規模が大きいメーカーは、イメージセンサーを“特注”し、自社で設計したISPと合わせてカメラを徹底的に作り込むことができる。水平分業型のビジネスモデルでそれに近づくには、プロセッサを持つQualcommとイメージセンサーを持つソニーの協力が不可欠だ。



 Qualcommは同イベントでGoogle Cloudとの協業も発表しており、Googleの「Google Cloud Vertex AI NAS」を「Qualcomm Neural Processing SDK」に統合する。Qualcommは、OSバージョンアップを長期化する「Project Treble」など、その他の分野でもGoogleと提携しているが、Appleなどの競合他社と戦っていく上で、このようなパートナーシップの重要性がさらに増しているといえそうだ。


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