山本耕史が水戸黄門役! 加藤シゲアキも華麗すぎ! 原作は、冲方丁が若き日の徳川光圀と異能の子どもたちを描き出す、傑作時代小説

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2021年12月04日 17:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『剣樹抄 不動智の章』(冲方丁/文藝春秋)
『剣樹抄 不動智の章』(冲方丁/文藝春秋)

「水戸黄門」の名で知られる天下の副将軍・徳川光圀。彼の姿を想像しようとすると、どうしたって、全国各地を巡り歩いてはひたすら世直しする老人の姿が思い浮かぶだろう。だが、NHKで放映中のBS時代劇「剣樹抄〜光圀公と俺〜」で今話題なのは、山本耕史演じる若き日の光圀の姿だ。光圀はとにかく強く、優しく、美しい。特に、加藤シゲアキ(NEWS)演じる妖しい美貌の敵役との殺陣さばきは、ずっと見ていたいと思わされるほど、華麗なのだ。

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 そんなドラマの原作は、冲方丁氏による『剣樹抄』(文藝春秋)。このたびシリーズ第2弾となる『剣樹抄 不動智の章』(文藝春秋)が刊行された人気作だ。冲方氏といえば、『マルドゥック・スクランブル』などのSFや、『十二人の死にたい子どもたち』などのミステリーのほか、幅広いジャンルの作品で知られる稀代のストーリーテラーだ。特に、本屋大賞を受賞した『天地明察』や老齢の光圀の姿を描いた『光圀伝』など、冲方氏の描く歴史小説に魅了されたことのある人は、この作品にも必ず惹きつけられる。また、「他の作品は未読」という人も、克明に描かれる江戸の街並み、迫真の立ち回り、登場人物たちの複雑な心理描写に、虜にさせられるに違いないだろう。

 物語の主人公は、天涯孤独の少年・六維了助(むいりょうすけ)。4歳の時に父を旗本奴に殺され、育ての親をも明暦の大火で失った彼は、ある事件をきっかけに、光圀によって剣の腕を見出される。異能の才をもつ捨て子を密偵として育てる幕府の隠密組織「拾人衆」に加わることになった了助は、仲間とともに火つけ盗賊「極楽組」を追うことになるのだ。

 シリーズ第1作は、名探偵・光圀と、了助ら少年少女探偵団が悪をやっつける江戸時代版「明智小五郎と少年探偵団」といった物語だが、第2作で中心となるのは、了助の葛藤だ。了助は、自身と光圀の因縁を知り、光圀に対する強い憤りを抑えきれなくなる。光圀はかつて許されることのできない過ちをおかしていた。そして、それを長らく了助に告げることができずにいた。ずっと苦悩し続けてきた光圀。光圀の了助への思い。了助の光圀への思い。光圀の秘密が明かされる場面は、2人の慟哭が聞こえてくるかのようだ。

 そして、了助は、光圀が黙っていた事実に衝撃を受けたまま、気持ちの整理ができぬまま、旅に出ることになる。

「旅に出ることで報いを果たせ。怨みを晴らすことにもなろう」

 そう言って了助を半ば拉致するように連れ出したのは、剣豪・柳生義仙(やぎゅうぎせん)。どうして了助を連れて2人の旅に出ようとするのか。彼の目的は一体何なのか。訝しがりながらも、了助は因縁を晴らすため、もっと強くなるため、義仙から技の磨き方、心の鍛え方を学びとろうとする。そして、義仙との旅の中で、了助は、「拾人衆」の仲間たちがどんなに自分の支えになっていたのかにも気付かされていくのだ。すべてを吸収し、すべてに学ぼうとする健気な了助を応援せずにはいられないのは私だけではないはずだ。

 日光道中へと進む了助と義仙。「極楽組」を追う果て、了助はどう変化していくのだろうか。光圀と一体どのような再会を果たすのか。若き光圀のカッコ良さはさることながら、了助の真っ直ぐさにも胸打たれる。疾走感たっぷりの展開にページをめくる手が止められない。ドラマ化で話題の今、この大江戸諜報劇を小説でも体験してみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

(※小説では「光圀」の表記は「光國」)

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