安倍元首相、二階元幹事長の選挙区が消滅?「1票の格差」でちゃぶ台返しの細田議長案に批判

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2021年12月05日 08:00  AERA dot.

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写真安倍晋三元首相と二階俊博元幹事長
安倍晋三元首相と二階俊博元幹事長
 総務省が衆院小選挙区の定数是正について「国勢調査人口(確定値)に基づく計算結果の概要」を11月末に発表し、波紋を呼んでいる。


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 これまで衆院選挙区画定審議会で議論されてきた、「1票の格差」問題。人口比を反映した「アダムズ方式」を採用して15都県で「10増10減」の定数見直しが必要であるとしている。


 小選挙区が増えるのは、東京都が5、神奈川県が2、埼玉県と千葉県と愛知が1。減るのは、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、長崎県で各1となっている。


「これがそのまま採用されてしまったら、どうなるのか。党内争いにも発展しかねない」


 自民党幹部はこう言い、苦悩の表情だ。


 小選挙区から複数の自民党党候補が手を上げた際の調整は、10月の衆院選でも大きな火種となっていた。宮城県をはじめ、10の県で定数がそれぞれ1減るとなれば、当然ながら調整が必要となる。


 山口県は4つの小選挙区が3つに減る。人口比から、山口3区と4区が中心となり大きく区割りが変更される見込みという。


 山口4区は安倍晋三元首相のおひざ元。3区は林芳正外相が参院から鞍替えして、初当選したばかり。山口2区は安倍元首相の実弟、岸信夫防衛相と大物がずらりと並ぶ。保守王国の山口県は現在、4つの小選挙区すべてを自民党が独占。それなのに誰か一人が、小選挙区から立候補できない見込みだ。山口県の自民党県議は声を潜めてこう言う。


「前々から予測はしていたが、実際に総務省から公表され現実のものとなった。3区と4区が1つの選挙区という区割りになる可能性が高いとみられている。つまり、安倍氏か、林氏のどちらかが押し出される。地元では表立って話す人はいません。しかし、ヒソヒソ話では『安倍氏は2度、首相になった。次に期待できるのは林氏だ』と林氏を推す声があるのは事実」


 和歌山県も小選挙区が3から2に減る。和歌山3区は二階俊博元幹事長の地元だ。




 現在の和歌山1区は、県庁所在地で都市部の和歌山市が中心でそこは大きく変わらず、和歌山2区と3区で1つの小選挙区となるとみられる。


 2区は自民党の石田真敏元総務相の選挙区だ。つまり、二階氏か石田氏か、どちらになるかの調整が必要となる。


「大物の中の大物、二階先生と大臣経験のある石田先生。地元の県連で調整できるレベルの話ではありません。ただ、世耕弘成参院議員がそろそろ衆院へ鞍替えするのではないかという話もあります。世耕氏が衆院に鞍替えし、二階先生、石田先生のどちらも引退という案を口にする人はいますね。正直、恐れ多くて、この問題についておおっぴらに話をする地方議員はいませんよ」(和歌山県の自民党県議)


 大物議員らの窮地に助け船を出そうとしているのが、細田博之衆院議長だ。


 12月1日の毎日新聞は、<細田博之衆院議長は11月30日、自民党の高木毅国対委員長と国会内で会談し、「3増3減」を軸とする法改正などの検討を要請した。党関係者によると、「3増3減」は細田氏の独自案とされ、東京都2増、神奈川県1増、長崎、愛媛、新潟3県各1減とする内容>と報じている。


 細田氏は「選挙博士」と呼ばれるほど、選挙制度、選挙区の事情に精通。2016年の衆院選改革法案「0増6減」の成立の時も、国会で細田氏が与党側の趣旨を説明した。自民党幹部はこう解説する。


「選挙にはめっぽう詳しい細田氏。国会議員で選挙に関して細田氏と議論して勝てる人はいません。中選挙区時代から小選挙区になった経緯、背景、事情やご自身と関係のない選挙区までスラスラと話が出てくる。それくらいすごいです。10減を3減にし、長崎、愛媛、新潟が対象と細田氏が高木氏を呼び出し、案を伝えたことは今後、大きな影響があるでしょう」


 一方で、野党立憲民主党の幹部はこう憤慨する。


「細田氏が3減と指摘している長崎、愛媛、新潟は比較的、自民党には影響が少ないところばかり。長崎は4つの小選挙区のうち1つ、新潟は6つのうち4つ、野党側が勝っている。自民党のお家騒動に発展しかねない、山口や和歌山は除外している。細田氏が選挙にとても詳しいことは有名ですが、衆院議長が自民党を利する案を持ち出すというのはおかしい。10増10減でやるべきだ」



 衆院の選挙制度は衆院選挙区画定審議会で長く審議され、2016年の法改正で、2020年の国勢調査後に「アダムズ方式」を採用することが決まっている。自民党で20年以上、政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信さんはこう指摘する。


「審議会で議論を尽くして、決めたこと。人口の増減から1票の格差がきちんとしたデータから算出されているわけで、それに反する改正案にするのは、世論の反感を買い、次の衆院選で自民党は議席を減らしかねない。今回の総務省の発表で一番、ドキドキなのは安倍氏でしょう。林氏が次の首相を狙っているので、自民党内でも安倍氏の情勢が厳しいという話を聞きます。当然、安倍氏が譲れば比例1位という処遇になる。同じように中曽根康弘元首相が昔、中選挙区から小選挙区に移行した時、選挙区事情で終身比例1位となった時期があったが、エコヒイキが過ぎると批判を浴びました。それが頭にありますから、安倍氏も簡単にはおりませんよ。岸田首相もこの問題は頭が痛いところでしょう」


 (AERAdot.編集部 今西憲之)


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