駅の“アナログSNS・伝言板”が復活 独特の「余白」が新たなコミュニケーションの形に

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2021年12月05日 11:30  AERA dot.

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写真京成佐倉駅に設置された伝言板。「彼女できました!!」という報告には、「おめでとう・」「やったね!!」など祝福する声が続いた(photo:京成佐倉駅提供)
京成佐倉駅に設置された伝言板。「彼女できました!!」という報告には、「おめでとう・」「やったね!!」など祝福する声が続いた(photo:京成佐倉駅提供)
 かつてはいろんな駅で見られた黒板の伝言板。最近見なくなったと思ったら、コロナ禍の京成佐倉駅で復活していた。見るだけでほんわかする。AERA 2021年12月6日号の記事を紹介する。


【写真】昔は書く側だったという佐倉駅の藤澤駅長
*  *  *


「先に帰ります」


「アルバイト行ってきた」


「彼女できました!!」


 千葉県の京成佐倉駅の伝言板には、この夏そんな文字がいくつも躍っていた。かつてはどの駅にも設置され、遅刻しそうなときや、落とし物を駅員室に届けたことを伝えるメッセージなどでにぎわっていた伝言板だが、携帯電話の普及とともにその姿は消えていった。


■いつの間にか消えた


 それが、静かに“復活”していた。


「駅装飾について職員たちと話し合うなかで、昔あったものを再現したいというアイデアが出ました。そこで生まれたのが伝言板です」


 そう説明するのは、駅長の藤澤弘之さん(55)。36年前に京成成田駅で勤務していたときは、まだ現役だった伝言板だが、いつの間にかなくなっていたという。


「コロナで生活が制限される今は、人と人とのつながりを直に感じづらい。そうしたことを思い出せるような場所になればと思ったんです」(藤澤さん)


 温かみを感じられるように、既製品を使うのではなく、職員で手作りした。板に黒板素材のシートを貼り、駅員室にある窓の桟にはめこんだ。白、ピンク、黄色のチョークと黒板消しを添えて、新型ウイルスが猛威をふるっていた5月2日から10月31日まで設置した。


“伝言板世代”ど真ん中の高齢者からは、「懐かしい」の声が上がった。一方、駅を利用する学生のなかには、伝言板なんて見たことも聞いたこともない、という人もいたという。藤澤さんは言う。


「でも、順応性が高いし、SNSに書き込むことも慣れている世代です。その日学校であったことや、部活動の試合結果を書いてくれるようになりました」


■「余白」に人間味が出る


 当初はネガティブな内容や落書きがされないか、心配する気持ちもあったという。だが、伝言板に並んだのは、テストが赤点だったこと、近くで猿が出たことを注意するメッセージなど、ほのぼのする言葉や役立つ情報が多かった。時々、若者の間で流行(はや)った、性表現の「大人な隠語」が見え隠れしたが、それはいつの時代でもあったこと。7月25日には、兄妹でオリンピック金メダルを獲得した阿部一二三・詩選手らを祝う声や、彼女ができた報告を祝福する声もあふれた。




「インターネットやSNSと違うのは、書いている人の姿が見えること。だから変なことを書く人がいないんです」(藤澤さん)


 かつて伝言板を使っていたという女性(62)は、「余白」に魅力があったと回顧する。


「たった一言でも、書いた人や伝言の受け手に思いを巡らせることができました。仲の良い同僚かなとか、若いカップルかなとか、いろんな物語や余白を想像するのも楽しかった。書き込める範囲や時間が限られているから、そこに人間味を感じられたんです」


 現代ならではの使い方とも言えたのが、SNSと伝言板を組み合わせて、両方を効果的に使う人もいたことだった。藤澤さんは振り返る。


「書き込んだ内容を写真に撮って、ツイッターに載せて楽しんでいる方も見かけました。漫画『シティーハンター』を模倣して、『XYZ』と書く方もいたり。盛り上がりは想像以上でした」


 ツイッターにアップされた伝言板の写真にも、さまざまなリプライが集まった。インターネットとアナログを掛け合わせるのは、新たな“余白”の楽しみ方の一つともいえる。(編集部・福井しほ)

※AERA 2021年12月6日号


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