高津臣吾監督「いろいろな方針や目的がある」。ヤクルトが日本一で証明したチームビジョンと青木宣親が語っていた理想の野球

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2021年12月06日 06:41  webスポルティーバ

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 ヤクルトとオリックスの日本シリーズは、6試合中5試合が1点差という球史に残る激闘となった。戦前の予想を覆したヤクルト投手陣の健闘が光ったが、山本由伸をはじめとしたオリックスの強力投手陣から少ないチャンスを着実にモノにした打撃陣の集中力も見事だった。




■村上宗隆、塩見泰隆、宮本丈...躍動した2017年ドラフト組

 11月20日、ヤクルトとオリックスの日本シリーズ第1戦。この日、ヤクルトのスタメンには2017年のドラフトで指名を受けた3人の選手の名が並んだ。

1番 センター・塩見泰隆(ドラフト4位/JX−ENEOS)
4番 サード・村上宗隆(ドラフト1位/九州学院高)
8番 ライト・宮本丈(ドラフト6位/奈良学園大)

 ほかにも2017年ドラフト組では、金久保優斗(ドラフト5位/東海大市原望洋高)がベンチ入りを果たし、大下佑馬(ドラフト2位/三菱重工広島)は登録選手として日本シリーズに参加した。

 塩見はシリーズが始まる前、「僕のなかでドラフトの同期は特別というか、思い入れがすごく強いです」と語った。

「日本シリーズのメンバーに同期が結構入っているので、そこはうれしいです。僕が出塁して、ムネ(村上宗隆)がホームランを打って、苦しい場面で勝負強いタケシ(宮本丈)が打ってくれたらいいな、という思いはずっとあります」

 そう語る塩見だが、彼らの日本シリーズへの道のりは決して順風満帆ではなかった。

 塩見は、二軍やオープン戦の成績と一軍での結果の落差が激しく"二軍の帝王"と呼ばれた時代もあった。その理由は、ケガに泣かされたこと、そしてプロ野球選手であることのプレッシャーに押しつぶされていたことだった。

 昨年3月「今年はポジティブなプレーが多くなっています」と、塩見はメンタル面での手応えを感じていた。

「これまではプロだから打たないといけない、守らないといけない、走らないといけないという意識が強すぎて、思いきったプレーができませんでした。でも、思ったんです。子どもの頃にあれだけ楽しかった野球を、高いレベルの世界でプレーできる。それは幸せなことで、プロだからこそ楽しむことが大切なんじゃないかと。人生は一度きりなので、野球を楽しもうという気持ちでプレーします(笑)」

 その後も紆余曲折はあったが、今シーズンは1番に定着。身体能力の高さを生かしたプレーで、クライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージではMVP級の大活躍を見せた。

 日本シリーズでも「積極的にいくのが自分の持ち味なので、どんどん仕掛けていきたい」と、塩見は初球からフルスイングしながらも、粘り強い打撃で相手投手に球数を投げさせるなど、1番打者としての役割をきっちり果たした。

 宮本は練習熱心な選手で、春と秋のキャンプになれば朝早くから夜遅くまで、室内練習場の灯りが落ちるまでバットを振っていた。本職のセカンドには不動の山田哲人がいるため出場機会は限られているが、練習を怠ることはなかった。

「今のところ生きていく場所は代打なので、チャンスをもらった時は『簡単に終わらない』という意識で打席に立っています」,

 そう語る宮本は、今シーズンは絶対的な投手を打つことでインパクトを残した。阪神のロベルト・スアレスに唯一の黒星をつけ、広島の栗林良吏から本塁打を記録した唯一の打者となった。日本シリーズ第6戦では、オリックスのエース・山本由伸からライト前ヒットと2つの犠打を決めるなど、しぶとく粘り強い打撃でチームに欠かせない存在となった。

 村上は初めての日本シリーズでも持ち味を発揮。2本の本塁打を放つなど、4番としての責任を果たした。

 シリーズ第4戦(東京ドーム)の第1打席、村上は宮本の登場曲で打席に向かったのだが、そこには同期への思いが詰まっていた。

 宮本は第1戦の2回裏に、オリックス・若月健矢の大飛球をフェンスに激突しながら好捕したが、頭部を強く打った影響で、第4戦はベンチ入りメンバーから外れていた。

「全員がチームに欠かせない存在というか、それぞれ立ち位置までできている。1番の塩見さんが塁に出れば盛り上がりますし、タケシさんが打ってつないでくれたら『よし!』となる。そういったところで一緒になって頑張りたいです」(村上)

 金久保は日本シリーズで登板機会こそなかったが、全試合ブルペン待機。1年目に右ひじを故障し、手術とリハビリを乗り越え、今シーズンはプロ初勝利を飾るなどチームに貢献した。

 大下は即戦力を期待されて入団したが、過去2年は防御率が5点台と苦しみ、今シーズン途中にサイドスローに転向した。シーズン終盤、大下はこんなことを語っていた。

「ゴールデンウィークに二軍に落ちた時、正直『終わった』と。その時にどうせダメなら最後まであがいてやろうと、思いつきでひじを下げてみたんです。やってダメならあきらめもつきますし。今は投げられることがうれしいとか楽しいとかではなく、とにかく毎日が必死。打たれたら速攻で二軍だと思って投げています」

 日本シリーズでブルペンに入ることは叶わなかったが、シーズンでは中継ぎ投手としてチームの終盤の逆転劇に大きな役割を果たした。

 高津監督は、2017年にドラフト指名された5人が日本シリーズのメンバーに入ったことについてこう話した。

「2017年のドラフト組が本当によく頑張ってくれた。チームにはいろいろな方針や目的があります。そのなかで毎年、新しい選手を指名させていただき、3年後、5年後、10年後にどういうチーム像になっているのかをイメージする。そういう意味で、彼らが頑張ってくれたことは、チームのビジョンとしての成功例の一部だと思います。

 これが2017年組だけじゃなく、今年入った選手もそうですし、これから入る選手もそうです。チームとして成功していくために、これからも選手の育成や成長は大事にしていかなければいけないと思っています」

■青木宣親が4年前に語っていた理想の野球がついに実現

 今年のヤクルト打線を語るうえで欠かせないのが、新外国人のドミンゴ・サンタナとホセ・オスナである。これまでヤクルト打線の最重要課題だった村上のあとを打つ"5番問題"が解決し、打線は12球団ダントツの625得点を記録した。

 高津監督はふたりの獲得について、「まずポジションから考えました」と獲得の経緯について説明した。

「長打力があって、一塁と三塁を守れる内野手をひとり、そして外野手をひとりほしいというのを(球団に)要望しました。動きや守備の面でいろいろと難しいことはありましたが、打線の厚みを最優先して、彼らの獲得になりました」

 日本シリーズでは、サンタナは2本塁打、オスナは第4戦で決勝タイムリーを放つなど、チームの勝利に貢献した。

「来日してすぐに、それもふたり揃って活躍してくれるなんてなかなかないですからね。チームを日本シリーズまで導いてくれたのは、間違いなく彼らの力が大きかった。ともに日本の野球を勉強し、研究しながらここまでやってきたのかなと思います」

 高津監督の言葉どおり、ふたりともあっという間に日本の野球に馴染んでいった。なにより、チームに溶け込むのがとても早かった。

「言ってしまえば、メジャーは自分が活躍して勝利に貢献するという意識ですが、日本はみんなで次の1点をとるという、チームが同じ目的で勝利へ向かっています。自分の調子がよくない時は、ほかの選手がカバーしてくれる。そのスタイルは新鮮でしたし、好きなところです。まだ日本に来たばかりなんだけど、本当に長いつき合いのようで、チーム全員が友だちです」(オスナ)

 4年前、メジャーから日本球界に復帰した青木に、チームスポーツとして日本とアメリカの違いについて質問すると、こんな答えが返ってきた。

「アメリカは個を、日本は組織を大切にして動きます。僕はどっちにもいいところ、悪いところがあると思っていて、ヤクルトはいいとこ取りというか、うまく融合できたらいいですよね」

 今年のヤクルトの戦いを見ていると、それが実現できているように思えた。たとえば、決勝打を放った青木に対して、村上が手荒い祝福をしたシーンがあった。日本の体育会特有の"上下関係"文化のなかでは考えられないことだった。

「自分はプレー中に上下関係は気にしていないですし、ふだんからリスペクトしてくれているのは伝わってきますしね」

 そう語る青木に、今のヤクルトについて日本とメジャーの野球の文化がうまく融合しているか聞いてみた。

「そういうチームになっていると思います。個の部分では、みんながこの世界で生き抜いていかないといけないわけで、チームスポーツとはいえ、自分がのし上がってやろうという気持ちはみんな持っています。

 でもそのなかで、チームは同じ方向を向いていないとうまくいかない。戦力が整っていても勝てないというのは、そういうところがあると思うんです。勝てない時も、うまくいかない時も、みんなで励ましあっていく。そういう些細なことが大切だと思っています」

 11月27日、日本シリーズ第6戦(ほっともっとフィールド神戸)は気温8度のなかでプレーボール。延長12回、5時間に及ぶ死闘はヤクルトが2対1でオリックスを下し、20年ぶりの日本一を決めた。

 共同記者会見が始まったのは、日付が変わった28日午前1時18分。会見が終わり、会場をあとにすると、念願のビールかけがスタートしていて、遠くから選手たちの歓喜の声が響き渡っていた。

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  • テレビ観戦の印象だけど「好機に凡退して打者意気消沈してベンチに戻る」中、ヤクルトベンチには声を張り上げる青木の姿が必ず映った。微妙かつ絶対的な差。
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