金髪セーラー服のゴリラ像に15mの黄金聖徳太子…カオスすぎる展示品に「精神が崩壊する」 伊豆『まぼろし博覧会』館長が語る“価値の基準”とは?

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2021年12月06日 07:30  ORICON NEWS

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写真まぼろし博覧会
まぼろし博覧会
 静岡県・伊豆半島に、東京ドーム規模の敷地を持つ巨大テーマパークが存在するのをご存知だろうか。『まぼろし博覧会』という摩訶不思議な施設だ。展示物は金髪セーラー服のゴリラ像や全長15mの黄金聖徳太子像のほか、昭和レトロなグッズの数々、はく製やマネキン、突如出現する恐竜、巨大般若のお面…挙げていくとキリがない。その様相にSNSでも「入場5分で精神が崩壊する」などと投稿され、話題を呼んだ。だが同博覧会館長の“セーラちゃん”に話を聞くと、「来ると無邪気に楽しめて笑顔で帰れる場所を目指した」と話す。このギャップは何なのか? そして『まぼろし博覧会』が目指すこととは?

【写真】金髪セーラー服のゴリラ像や15mの黄金聖徳太子など…見てもよくわからない展示物の数々

■魔界・伊豆に作られた一大テーマパーク 拡がり続けて現在は東京ドーム級

 温泉地として知られる伊豆半島。だが、リゾートとは別に“魔界”としても知られている。「熱海秘宝館」や「アトリエロッキー万華鏡館」、「伊豆極楽苑」など珍スポットが集まっているのだ。ここに『まぼろし博覧会』もある。スタートしたのは10年前。廃墟となった植物園を利用して作られ、今もなお、そのスペースは、謎の生物のように増殖を続けている。

 「精神が崩壊するという言葉はきっと褒め言葉だと思うんですが、ここは確かに価値観が全部崩壊して、何がいいか悪いか分からなくなるという場所ではあると思います。普通だったら、美術館のようにケースに入れたり、スポットを当てたり、整理整頓してお見せするじゃないですか。でも僕は時代の空気を肌で感じてほしいので、そういうことはあまりやりたくないんです」(セーラちゃん/以下同)

 コンセプトは「キモ可愛い」。「気持ち悪いぐらい可愛い」の略で、セーラちゃんも、普通の女性だったら気持ち悪がるぐらいの可愛い、突き抜けた衣装(セーラー服やビキニ、人魚姿)などをして、すべてのお客さんをお出迎えしている。

 そんなセーラちゃんが最も大切にしているのはお客様が帰られる時だ。先述した、突き抜けた、気持ち悪いぐらいの可愛い衣装を着たセーラちゃんは、帰るお客さんの車を、旗を振りながら、館長本人が自分の足で“どこまでも”全力疾走で追い続けていく。というか、体力の限界まで“ついてくる”。「70億という人口のなかで、せっかくここで知り合ってくれたんだから、友達だと思って見送るんですよ。涙もこぼれる。触れ合った人と別れ際にしんみりできる関係を作りたいんです。友達ならお見送りは大切じゃないですか。分かり合う、心が通じ合う、それって大事だと思うんですよね」とセーラちゃんはしみじみと話す。

■なぜ人は行列に並ぶ? 情報があふれる社会で“自分で考えること”の意義

 ではなぜ、美術館のような展示法をあまりやりたくないのか。ここにセーラちゃんの哲学がある。「例えばテレビでラーメン屋さんが紹介されると行列ができるじゃないですか。それはその“情報”に並んでいるんですよね。自分の頭で考えてない。体験から来ていない。美術館にしても、その道の専門家が“これは価値があるものですよ”と教えてくれている。体系的に学問や芸術を学ぶことも大切ですが、それは習い事。まったく否定しませんが、それよりも僕は“自分で考えること”に意義があると思っているんです」

 そんなセーラちゃんは、現在はフェイクニュースも含め、情報があふれていると話す。また、政治家、権力者、お金持ち、大手メディア、コマーシャル文化に取り上げられることで“価値”が生まれ、人はその“情報”や“価値”に振り回される。そして“自分で考えること”を阻害している可能性があるのだと言う。「価値は自分が決めるもの」、それがセーラちゃんの考えだ。

 こうした“価値”を各人がもう一度問い直すために、セーラちゃんは『まぼろし博覧会』を作った。ちなみに名前の由来は“夢”や“頭の中”。「夢の中って、子供の頃の友達と今の友達と、時空を超えて一緒に登場しますよね。かように、夢では時間軸も整合性もなく、ごちゃごちゃになっているんです。分類できてないなら、そのまま出してあげればいい」。ゆえに“まぼろし”。

 だから博覧会内も、展示物を整理してない。お客さんも自由で、自分の持ち物を、自分の好みの場所に勝手に置いていくことも少なくないという。「夢や頭の中が“まぼろし”に満ちているのだったら、この場所に来て、今一度、頭の中の原点を見せてあげたいんです。情報過多の社会から解き放たれ、自分の脳に原点回帰。そこで無邪気な笑顔を取り戻してもらえたら。おかげで10回以上もリピートしてくださるお客さんも多い。客層的には20〜30代女性、カップルやファミリーも多いですね」

■専門的な知識がないと楽しめない美術品こそが“サブカルチャー”

 実はセーラちゃんは、『サザエさんの秘密』や『危ない1号』などニッチな分野の書籍ながらもヒット作を連発した出版社の社長という顔もあり、知る人ぞ知る90年代サブカルチャーの立役者の一人。「面白がっていろいろ作ったんですけど、過激だというだけではやっぱりどこかで行き詰まる。また面白いテーマでも、荒削りな“衝撃”がウケていただけで、洗練され完成度が高くなったころには、皆さん興味を失って引いていってしまったんです」

 しかし、セーラちゃんは「これこそがメインカルチャー」と言い切る。「同博覧会にあるのは、日常的なものばかり。例えば誰かの、亡くなられたおばあちゃんが子供の頃に集めていた玩具であるとか、過去に普段、目にしていたような看板や旗、物。乱雑に置いてありますが、日常と地続きの展示品ばかりという意味でメイン。寧ろ一点物の高級茶碗や美術品の方が、専門的な知識がないと楽しめないという意味でサブカルチャーじゃないでしょうか。ピカソの絵と子どもの絵、どっちが好きかは、見る人がどう感じるかだし、僕はすべてその感覚で考えています。これを勝手にニューカルチャーと呼んでいますけどね」と、あっけらかんと話す。

管理も一切しない。へたに修復をすると“今”だからこそ見られるものではなくなるからだ。採算はギリギリ。だがいまだ敷地は拡大しており、それだけ世の中は人の喝采を浴びないものであふれていることが分かる。

「世に遺したいと思う人、物があれば遺せばいい。でも僕はまったく趣味でやってますから」と笑いながらも、「お子様からお年寄りまで、みんなが無邪気な笑顔になれて、楽しい明日が迎えられるような、そんな気分になれるパラダイスを目指しているんです」と熱く語るセーラちゃんを、なぜだか無性に守りたいと感じる。

(文/衣輪晋一)

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