「決裁と会計のシステムが別々」で業務にムダ発生 縦割り設計に悩んだ三井不動産がクラウドでスッキリするまで

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2021年12月07日 13:12  ITmedia NEWS

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写真旧システムと新システムの比較
旧システムと新システムの比較

 業務の関連性が高いのに、縦割りシステムのせいで連携ができない──こんな悩みは多くの企業に付き物だ。三井不動産もそんな企業の一つで「総務部が所管する決裁システムと経理部が所管する会計システムが分断され、各事業部の利用者はこれらのシステムを別々に利用する必要があった」と、同社の山本将人さん(DX本部DX一部技術主事)は振り返る。



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 業務によっては同じデータをシステムごとに2回入力しなければならないなど、多重入力が効率化の妨げになっていたという。



 しかし、2019年にこれを刷新。従来はオンプレミスだったところ、Azureや各種SaaSなどを活用してフルクラウド化し、決裁・会計システムの連携性を高めた結果、受発注や会計の業務量を35%削減できた他、働き方の改善にもつながった。



 分断されていたシステムの連携性を改善し、業務効率化を実現した三井不動産のクラウド移行はどのように実現したのか。ガートナー ジャパンのオンラインイベント「ガートナー IT IOCS コンファレンス」(12月1〜2日)で山本さんが解説した。



●DX本部主導でプロジェクト発起 きっかけはハードウェア更改



 プロジェクトが始まったのは16年。きっかけはハードウェアの保守期限切れという。当初は機器の入れ替えも視野に入れていたものの、当時使っていたハードウェアがもともとは08年に導入し、12年に更改したものだったことから「今回はバージョンアップではなく、システムを入れ替えよう」と決定。山本さんが所属する部署「DX本部」を中心にプロジェクトが立ち上がった。



 クラウドの活用を決めたのは、もともと三井不動産が社内システムのクラウド化を進める方針だったためだ。すでに「Salesforce」「Sansan」といったSaaSの利用やその検討が始まっていた他、IaaSに移行するサーバも増えつつあったため、新システムもクラウドを活用することに決めた。



●「使いやすいシステム」目指し総務・経理・DX本部が横断で協力



 プロジェクトの目的は主に2つ。一つは分断されていたシステムの連携性を上げ、業務を効率化することだ。いくらクラウドを導入し、システムを刷新しても、従来通り2つのシステムで連携が取れていないのでは意味がない。



 そのため今回のプロジェクトには総務や経理部以外にも、DX本部が参加。業務の切り分けや設計の判断に携わることで、社員にとって使いやすいシステムを目指したという。



 もう一つは紙の削減だ。旧システムは紙の利用が前提で、こちらも業務が煩雑化する一因になっていたため、刷新を機に改善したかったという。



●新システムはハイブリッドクラウド構成、狙いは?



 決裁・会計システムの連携性向上と、ペーパーレス化を目指した三井不動産のシステム刷新プロジェクト。新システムの開発は17年10月ごろに始まり、各種テストなどを経て19年4月から運用している。全てオンプレだった旧システムとは違い、受発注や契約審査といったワークフロー用システムをパブリッククラウド、会計システムはプライベートクラウドで運用し、経費精算などにはSaaSを活用する体制を採用した。



 まず受発注などのワークフローを管理するシステムは、Azure上にNTTデータイントラマートのシステム構築基盤ソフトウェア「intra-mart」を使って構築した。基盤にAzureを選定したのは、すでに社内別システムでも利用しており、運用の経験があったためという。



 一方の会計システムには、独SAPのERP「SAP S/4HANA」、会計管理用のBIツール「SAP BusinessObjects」を採用。これらの基盤には同じくSAPのプライベートクラウド「SAP HANA Enterprise Cloud」を選んだ。SAPのマネージドサービスを使うことで運用負荷を削減できると判断したため、パブリッククラウドを使わず、基盤を含めSAPのサービスで統一した。



 経費精算システムとしては、SAP S/4HANAなどとの接続性を基準に、コンカーが提供するSaaS「Concur Expense」を採用。併せてOCR技術を活用した記帳サービス「Streamed」も導入し、社員が領収書などをデータ化しやすくすることで、ペーパーレス化につなげた。



 しかし各システムをクラウド化しても、それぞれを接続できなければ従来の縦割りシステムと変わりがない。そこで、アステリアが提供するノーコード開発環境「Asteria Warp」を導入。新たに開発したデータ連携システムでファイルをやりとりする仕組みを採用し、システム間の連携性を高めた。



 Asteria Warpを活用したのは、会計年度などの問題で19年4月からの運用開始が必須だったことから、遅延を発生させないために開発期間を短縮しやすいノーコード環境が必要だったためという。



●業務がすっきりひとまとまりに 働き方改善にも寄与



 ハイブリッドクラウド体制で構築した新システム。DX本部が設計を見直し、Azure、プライベートクラウド、SaaSをそれぞれ接続したことで、旧システムにあった多重入力の問題が解消。決裁時の契約審査、受発注の手続き、伝票への計上といった業務を、システムを切り替えることなくひとまとまりに行えるようになった他、総務部など各部門が入力した各種データを経理部が確認できるようになったという。



 社員の働き方の改善にもつながった。三井不動産はシステム刷新と並行して働き方改革を推進するプロジェクトを進めており、その一環として19年8月〜20年3月にかけてオフィスを移転した。



 システム刷新でペーパーレス化も実現。新しい拠点では社員が自席を持たないフリーアドレス制を採用でき、出社する社員同士が部門を超えて交流しやすい環境を整えられた。SaaS活用で外部からのアクセス性を高めていたため、シェアオフィスなどでも本社と同じ業務ができる効果もあったという。



●「各部門の巻き込み」が重要



 業務効率化だけでなく、社員の働きやすさも向上した三井不動産のシステム刷新。山本さんは一連の取り組みをこう振り返る。



 「経営層はもちろん、各利用部門を巻き込んで議論したことが働き方の改善にもつながったと考えている。ただ、現在の働き方が今後も続くとは限らないので、引き続き働き方改革への検討に向けたBPR(業務プロセスの見直しと再設計)を続けていきたい」


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