日本を襲う「オミクロン危機」 またも後手に回り隙だらけ

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2021年12月08日 07:00  AERA dot.

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写真水際対策などについて会見する岸田文雄首相
水際対策などについて会見する岸田文雄首相
 束の間の落ち着きを見せていたコロナ禍に急展開がやってきた。感染力の強い新たな変異「オミクロン株」が、あっという間に世界を席巻。危機に対して相変わらず“隙だらけ”な対応が続く日本は、この脅威を乗り越えられるのか──。


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 新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」の感染が、欧米などで急拡大している。日本でも12月1日に空港検疫で2例目が見つかるなど、感染再拡大の火種になりかねない状況だ。


 警戒すべきは、驚異的な感染力だ。起源とされる南アフリカでは、10月時点ではデルタ株が感染例の92%を占めていたのが、11月に入るとオミクロン株がデルタ株を凌駕し、74%を占めるようになった。WHО(世界保健機関)は早々に、最も警戒するレベル「VOC(懸念すべき変異株)」に指定した。防衛医科大学校感染対策室長の藤倉雄二准教授は「まだデータは少ない」と前置きしたうえで、こう指摘する。


「一時期、ラムダ株やミュー株が南米で発生して騒がれましたが、既存のものと置き換わる力はありませんでした。オミクロン株にはヒトの細胞に取りつきやすくなる『N501Y』や、効率よく感染する機能に影響する『H655Y』『N679K』などの変異が、ウイルスの突起状のスパイク蛋白質にある。これらは世界で猛威を振るうデルタ株にすら入っておらず、より感染力が強くなっている可能性はあります」


 スパイク蛋白質はワクチンのターゲットになるが、デルタ株の変異は10カ所程度だったのに対し、オミクロン株の場合は32カ所にも及ぶ。このため抗体の攻撃を逃れやすくなり、ワクチンの効果低減が懸念される。


 だが、既存のワクチンでも、感染後の重症化を防ぐ効果が期待できるとのデータもある。ファウチ米大統領首席医療顧問は、既存のワクチンが一定程度有効だとして、追加のブースター接種を早期に受けることを推奨。英国政府は、3回目接種について多くの国が「2回目接種から6カ月後」としている間隔を3カ月に短縮すると発表した。




 ところが、日本では医療従事者への3回目の接種が12月1日に始まったばかり。しかも、世界標準から外れた「原則8カ月後」との政府方針を、ようやく「6カ月後」へ前倒しすることを検討している始末で、またも後手に回っている。英医師会誌「BMJ」がイスラエルの成人約8万人を対象にした研究によれば、2回目のワクチン接種から3カ月経つとだんだんと感染が増え始め、6カ月後には感染率が15.5%に上った。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう指摘する。


「こうしたデータから、諸外国では早くからブースター接種を進めており、これから実施するという先進国は日本くらいです。1月から高齢者に接種するといいますが、本格的に行えるのは2月以降でしょう。いま国内の感染が抑えられているのは、若年層への接種が遅れたため、まだ免疫が効いているというケガの功名でしかない。冬場のピークの規模はまだわかりませんが、重症化する高齢者の増加が危惧されます」


 ワクチンの在庫が枯渇しているわけでもないようだ。自治体の集団接種に協力してきたナビタスクリニック理事長の久住英二医師はこう明かす。


「私たちのクリニックには、数百人分の在庫を抱えているところがあります。市からワクチンを保管する超低温フリーザーごと預かっており、電気代もすごく食うのでブースター接種で早く使い切りたいが、打たせてもらえない。追加接種はとにかく可及的速やかにやるべきで、在庫を抱えているところからどんどん打ち始めるべきです。行政は、それでは平等ではないというようなことを言いますが、遅いところに合わせて接種を止めているのはナンセンスです」


 肝心の水際対策にも“穴”がある。日本の空港検疫では、PCR検査より精度が低い抗原検査を利用しているからだ。


「その理由について、厚生労働省は『最新定量型抗原検査を用いれば、PCRと感度は変わらない』としていますが、そんなことはない。抗原検査ではウイルス保有量が少ない患者を見逃す可能性があり、オミクロン株の検疫にふさわしくないのは明らかです」(上医師)




 突然の“オミクロン・ショック”は、国際的な移動を伴う各種スポーツイベントを直撃している。


 オランダ遠征を終え1日に帰国した女子サッカー・なでしこジャパンの選手たちは14日間の隔離が必要になるため、4日に予定されていた国内リーグ「WEリーグ」全5試合の延期が決まった。


◆スポーツ界直撃 イベント中止も


 バドミントンは19日までスペインで世界選手権が、25日からは東京で全日本総合選手権がある。世界選手権に出場する代表選手たちは、隔離期間があり全日本に出場できなくなる。


「こうした事態ですので、それもしょうがないと考えています」(日本バドミントン協会)


 ボクシングでは、29日に埼玉で行われる予定だった村田諒太のミドル級統一戦が来春に延期、31日に東京で予定されていた井岡一翔のスーパーフライ級統一戦は中止と、年末の2大イベントがふいになってしまった。


 2月4日に北京冬季五輪開幕を控えるウィンタースポーツも大きな影響を受けている。


 フィギュアスケートでは、9日から大阪で開催予定だったグランプリファイナルが中止になった。出場が決まっている外国人選手の入国ができなくなったためだ。また、北京五輪の代表選考会も兼ねた全日本選手権が23日から予定されているが、紀平梨花や高橋大輔・村元哉中ペアら海外に練習拠点を持つ選手たちが帰国後の隔離期間中に練習ができるかも不明のまま。スピードスケートは、選手たちがワールドカップで世界を転戦中だ。3日から米国、10日からはカナダで大会に出場した後、27日から長野市で北京五輪代表選考会があるが、規定どおり14日間の隔離措置が求められれば、選手たちは出場できない。


「現状ではJOCとスポーツ庁の結論待ちで、何も決まっていません」(日本スケート連盟)


12月4日には、北京五輪・パラリンピックを目指す選手たちに対して、厳格な行動管理のもとで隔離期間中の練習を認めるなど、何らかの特例措置を政府が講じる見通しだと報じられた。


 こんな状況で北京五輪は開催されるのか。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏はこう話す。


「北京五輪はコロナの感染拡大で早くから海外の観客を入れないと決めている。国外をシャットアウトして、もう五輪の体をなしていないのに、そこまでしてやる意義はあるのかということです。オミクロン株がどこまで感染力があるかはまだわかりませんが、命の問題をないがしろにして、開催すべきではありません」


 まだまだ謎も多いオミクロン株。せめて備えだけは万全にしておきたい。(本誌・亀井洋志、鈴木裕也)

※週刊朝日  2021年12月17日号


このニュースに関するつぶやき

  • 仲良くしとけアカヒ。日本を壊したいという意味では同志だぞコイツ。…まぁ本腰入れて自分の周囲に害が及ぶようになったら戦争だがなぁ!!?
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  • USAで12万人、南アフリカでは1万人、日本は100人程度(1日あたり感染者数)。こう見たら日本はとても優秀だと思わんか?
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