「草をとってきて食べている家も」 飢餓の危機に直面するアフガニスタンの窮状、現地NGO職員に聞く

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2021年12月09日 08:00  AERA dot.

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写真干ばつでカラカラに乾いた農地。農業県ナンガルハル県でも作物の収穫量が前年より大幅に減った(写真提供/ジェン)
干ばつでカラカラに乾いた農地。農業県ナンガルハル県でも作物の収穫量が前年より大幅に減った(写真提供/ジェン)
 8月中旬、イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタン。長引く干ばつに海外からの経済制裁などが加わり、国民は深刻な食料危機に見舞われている。いま、現地の事情はどうなっているのか。緊急食料支援を行うための資金を募るクラウドファンディングを立ち上げた国際NGO「ジェン」(JEN、本部・東京都港区)の現地事務所長が、アフガニスタンの国民が直面している窮状を、オンライン取材で語った。


【写真】首都カブールでは、物乞いをする少女の姿も…
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「国連世界食糧計画(WFP)のリポートによれば、アフガニスタン全34県のうち13県が、食料不安の度合いを示す5段階のうち3番目に厳しい『危機』の状況にあり、21県がさらに厳しい4番目の『緊急事態』のフェーズにあります。私たちが主に活動しているナンガルハル県はもともと農業県なのですが、干ばつなどによって作物の収穫量が昨年より急減し、11月には『緊急事態』となりました。このままタイムリーな支援がないと最悪の『大惨事』のフェーズに入ってしまうおそれがあります」


 アフガニスタン東部、パキスタンと国境を接するナンガルハル県で活動するジェン現地事務所長のムハンマドさん(仮名)はこう語る。


 WFPは10月25日、「アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人以上が深刻な食料不安に陥るおそれがあり、そのうち870万人が飢餓に直面する」という報告書を発表。「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」と警鐘を鳴らした。


 ジェンは、2001年からアフガニスタンで学校建設や水衛生環境の改善などの支援活動を実施してきた。タリバン政権掌握後の現在も、28人の現地スタッフがナンガルハル県を中心に支援活動を続けている。11月16日には約480世帯(約3360人)の人びとに2カ月分の食料を届けるため、目標額1000万円のクラウドファンディングを立ち上げた。


 ムハンマドさんは11月末、首都カブールを訪問したときの驚きをこう話す。




「家財道具を売るための即席の市場ができて、それがどんどん大きくなっていきました。多くの人がここで食料を買うお金を得るために家財道具を売っているのです。道路には物乞いをする子どもの姿もありました」


■「ほとんどの家庭がパンとお茶だけ」


 タリバンによる政権掌握後、アフガニスタン中央銀行の米国内資産が凍結されるなどの経済制裁によって経済が停滞。海外からの送金も途絶えた。ムハンマドさんによると、資金不足で国内42のダム建設プロジェクトがすべて止まり、企業、銀行、大学などの規模縮小も相次いでいる。


 それに伴い、失業率が増加。さらに深刻な干ばつが追い打ちをかけ、食料などの物価は高騰している。国民は食料を買うお金を得るため、生活に必要な家財まで売る事態に陥っているのだという。


「8月中旬以降、食料価格は高騰しています。例えば、小麦1袋の値段は1500アフガニ(約1760円)から2500アフガニ(約2925円)に高騰しました。私たちが支援活動をしている地域の家庭を訪問して、食事の様子を見せてもらいましたが、ほとんどの家庭がパンとお茶だけの食生活でした。なかには、ふだん食べないような草をとってきて火を通して食べていた家庭もありました。農村部には家畜を飼って生活している人もいますが、干ばつで家畜が食べる草もなくなってしまい、家畜を手放さざるを得ない人たちも増えてきました。これまで1頭8万アフガニ(約9万3600円)で売れていたものが5万アフガニ(約5万8500円)でしか売れなくなってしまいました」(ムハンマドさん、以下同)


 ムハンマドさんによると、10人を超える家族の備蓄食料がわずかな量の乾燥トマト、小麦粉、塩、豆類だけというところも珍しくないという。


 500万人の子どもが「栄養失調に陥っている」(国連)といわれるが、ジェンが進める食料支援のプロジェクトは、授乳中の母親をサポートするための栄養補助食タイプのビスケットや粉ミルクなども含む。




■地域医療も崩壊の危機


 農村部の医療を支えてきた世界銀行の資金がストップしたため、地域医療も崩壊する危機に瀕している。人びとは現金がないため処方薬も満足に買えない。医師から出された処方箋を薬局に持っていくと、まず聞かれるのが「現金を持っているか」。2週間分の薬を処方されても、1週間分のお金しかなければ売ってもらえないこともあるという。


「8月以降、新型コロナウイルスを気にする余裕もないのが現実ですが、11月中旬ごろから新型コロナの感染が再び拡大しているようです。発熱や体の痛み、頭痛などを訴える声が増えています。コロナ以外にも、干ばつで空気中に土ぼこりが舞っていることや、暖をとるために木材だけでなく古タイヤも燃やしていることも、体調不良に影響していると思われます」


 ジェンでは食料のほか、子どもたちたちの就学や学校建設などの支援活動も行っている。就学支援では、地域の「シュラ」という自治組織や若者たちで構成される「ユースシュラ」、宗教指導者と連携して就学を促進し、鉛筆、ノート、ルービックキューブ、定規セットなどが入った就学キットを配っている。学校建設では校舎、トイレ、太陽光パネルで発電した電気を使って井戸から水をくみ上げる貯水槽などを備えた学校建設などを進める。


「子どもが就学できない理由はたくさんあります。貧困で子どもを学校に行かせる余裕のない家庭が多いこと、学校の建物自体がないこと、女子用トイレが整備されていないこと、学校までの距離が遠いことなどです。特に教員の数が圧倒的に足りません。ある学校では1人の教員が2クラス160人の生徒を教えている学校もあるほどです」


 ムハンマドさんたちはユースシュラの人たちと協議し、地域社会が教員の給料を支払う形で3人、さらにボランティア教員6人を雇用することができたという。


 厳しい冬を迎えているアフガニスタン。ムハンマドさんは国際社会、特に日本からの支援に期待していると話す。


「アフガニスタンにとって日本は友好国です。一般の国民も日本にとてもいい印象を持ち、国連などを通じた日本の支援に感謝しています。国連だけでなくNGOなどを通じた支援もぜひお願いしたいと考えています」


(西島博之)


※JENのアフガニスタン緊急食料支援のクラウドファンディング(2021年12月17日まで)のURLは下記の通り。問い合わせはJEN(https://www.jen-npo.org/)まで。
https://readyfor.jp/projects/jen_af


このニュースに関するつぶやき

  • タリバンが政権を獲ったということは、海外からの援助が期待できないということだ。
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  • 常日頃から食べれる身近な野草チェックする事は大切。渓岩井氏や野食ハンター氏等のYouTuberは勉強になるね。日本は食料自給率低い事が大問題。
    • イイネ!5
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