「保護者からも賛同を得た」 練馬区中学校の「SNSパスワード」提出問題、教育委員会に聞く

3

2021年12月09日 11:31  弁護士ドットコム

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

弁護士ドットコム

写真記事画像
記事画像

東京都練馬区の教育委員会が策定した「SNS練馬区ルール」にもとづき、練馬区の中学校で、生徒にSNSのパスワードを記載した書類を提供させるという事案が生じた。


【関連記事:親友の夫とキスしたら、全てを親友に目撃され修羅場  】



このルールが作られた経緯について、策定した「いじめ対応等支援チーム」の議事録を確認したうえで、教育委員会の事務局に取材した。



パスワード記載のリーフレットは、そもそも教育委員会の事務局が作成したものだが、保護者からも賛同を得られたことから、実現に至ったという背景があった。



事務局は素直に反省する一方、SNSやインターネットの利用をめぐる「いじめ・トラブル」を念頭に、場合によっては子どものパスワードを親がいつでも見られるようにする家庭内の約束も必要だとの考えを示した。



●どんな問題だった?

練馬区が12月3日、問題の発生を報告した。



区教委では、家庭でのSNSルールづくりの啓発や、家庭で作成したルールづくりの確認のために、「SNS練馬区ルール」のリーフレットを生徒に配布している。このリーフレットには、SNSのパスワードの記入欄があった。



そのため、区教委はパスワードを記載せずに提出することを各学校に通知していたが、区立中学校の一つで「学校への提出にあたってSNSのパスワードの記載は不要」との説明を失念したため、提出した生徒のパスワードを学校が知り得る事態が起きた。



11月30日に保護者からの連絡をうけて、ミスに気づいたものの、すでに276人から提出を受けたという。他校では同様のミスはなかったそうだ。



●保護者「パスワードの開示で、親がいつでも携帯を取り上げられる環境は大切」

区教委は、有識者や保護者などから構成されるいじめ対策チーム(いじめ対応等支援チーム)において、2015年に策定した「SNS練馬区ルール」を活用し、ネットのトラブル防止や、学校・家庭と連携して、児童生徒および各家庭の主体的なルールづくりに取り組んでいる。



問題になったリーフレットは、2019年10月8日以降の会議をもとに作られていった。当時の議事録を見ていく。



2019年度の東京都のSNSルール改訂をうけて、練馬区SNSルールの改訂が議題となった。各家庭におけるSNSルール「SNS家庭ルール」作りを促すことが第一の目的とされた。



そこで、リーフレットの素案がチームに提出された。これは事務局が作ったもので、すでに「パスワード」記載欄が用意されている。



学校関係者やPTAから選ばれる保護者らの意見が出る中、中学1年と小学6年の娘を持つ保護者代表は「パスワードを開示するというのは、子供たちの中でもある程度勇気の要ることだと思うので、パスワードの開示というのは、親に預けなくても、何かあったら君の携帯は全部見るよというような約束事は最低限あっていいかなと思う」「パスワードの開示で、親がいつでもその携帯を取り上げられるという環境は大切だと思う」との意見を出した。



●「あなたたちに何かあったときに、ケータイを開けないとすごく困る」

次の会議(2020年1月15日)では、SNS練馬区ルールの文言に以下のような修正がなされた。



(素案)子供の利用状況を把握し、いつ、どこで、どのくらい使うかなど、保護者が責任をもって管理します。





(修正案)子供の利用状況を把握し、いつ、どこで、どのくらい使うか、必要なときは保護者が確認するなど、保護者が責任をもって管理しましょう。



前回の会議で「保護者が子供のパスワードを、いざというときには解除する必要があるという文言を明記したほうがよいという意見を受けて加えたものである」としている。



パスワードの記載欄はそのまま残っている。



この会議で、先とは別の保護者代表は、リーフレットを「宿題」とすれば、家庭内でSNSの利用等について話し合うきっかけになると受け止めた。



この保護者は、子どもたちに話したエピソードとして、知人が亡くなった際に、携帯電話のパスワードがわからず、遺族が大変な思いをしたとの話を紹介した。




「そのときに私の子供たちに言ったのであるが、チェックをするためもあるのだが、あなたたちに何かあったときに、その携帯電話を開けないと、すごく困ると。中の情報もそうだし、解約は親がするからいいのであるが、誰にお伝えするとか、中に入っている人のことの情報とかも。なので、パスワードは絶対に変えたら教えてねという」(議事録より引用)




そのような体験もあるからこそ、「なので、私はこれ、せっかく、すごくいいものだと思っているので、親も宿題として出したほうがいいのではないか、学校に出したほうがいいかなと思う」と賛意を示した。



●リーフレット作成される。配布・回収状況の報告

前回会議で作成が決まったリーフレットが2020年6月以降、各校に配布され、7月22日段階で、区内小・中学校の95%がすでにSNS練馬区リーフレットを配布している。



2020年7月27日の会議で報告があった。



パスワードを含む「SNS家庭ルール」の記入を促したうえで、リーフレットを回収して、児童・生徒の「SNS家庭ルール」の記入状況を確認したのが約20%だと報告された。



ただ、この会議において資料として提出されているリーフレットからは、パスワード記載欄がなぜかなくなっていた。



これについて、事務局は弁護士ドットコムニュースの取材に「これは誤掲載です。実際はパスワード記載欄のあるものが正しいです。いずれ、正しいものに切り替えます」と説明した。



さて、この会議から、保護者代表が新しい委員に切り替わり、SNSのパスワードを人に教えることについて、初めて疑問が投げかけられた。




「セキュリティ面から考えると、SNSのパスワードは人に教えてはいけない。もちろん親、例えば小学校時代だと親も一緒に知っていてやるという。あなたの、知っているから、親も見るよ。という気持ちは分かる。しかし、だんだん大人になっていく場合に、こういうセキュリティ、パスワードは教えるものではないというのを逆にちゃんとしとかないと、友達に教えるのである。あ、貸してってやって、ああ、いいよってやっちゃうのである。結構昔からこういうパターンはある。ゲームをやりたいから、貸して、じゃあ、何って言って。そのまま変えないとずっと使われっ放しになる」(議事録より引用)




その後、教育委員会は、2020年8月20日付で、パスワードの扱いについて、該当箇所を未記載にするよう通知したのだが、2020年10月21日の会議で、事務局から説明がされた。



「実はこれも指摘をもらい、パスワードをここに書いては、パスワードの意味がないのではないかと。まして、これを学校が集めるというのは、提出して集めるというのはいかがなものかと。まさにおっしゃるとおりであり、じゃあここの欄についての対応方法ということで、今資料3の説明をさせていただいた次第である。実はもう既に印刷して配付済みなものだから、これを回収してまたつくるというのが、なかなか今年度内にはできそうもないということで、緊急の対応ということの通知を出したという報告である」(議事録より引用)



そして、2021年11月になって、今回の問題が発生する。



●パスワードを書いてきたのは36人だった。

弁護士ドットコムニュースは12月8日、会議の内容等を踏まえて、練馬区教育委員会の事務局に話を聞いた。



リーフレットは最終的に276人のものを集め、そのうちSNSのパスワードを記載したのは36人だったという。



LINEやツイッターなど、記載したパスワードがいずれのSNSのものかは把握していない。



パスワードを集めて知り得る状態になったことについて、各家庭にお詫びの文書を配布した。



今後、生徒たちには、パスワードなど個人情報を第三者に知らせるものではないと指導していく考えだ。



パスワード記載欄等を設けたのは、各家庭でSNSのルールについて話し合うきっかけをつくりたかったとの意図がある。リーフレットを配ったとしても、親子が話し合うことはおろか、なかなか読んでもらえないとの考えがあったからだ。



そこで、パスワード記載欄の素案を作ったのは、事務局であるが、作成される前の会議のなかで疑問はあがらなかった。



「保護者からも(賛同の)意見をいただいたのは、(リーフレットが実際に配布されるうえで)大きかった。それだけでなく、現状、身のまわりで起きているトラブルを考えますと、こうした意見は一定程度同じように考えているものと推察できるものでした」(事務局の担当者)



だが、会議において、パスワードを第三者に知らせるものはいかがなものかと疑問が投げかけられたのは、作成後のことだった(2020年7月の会議)。



そうした保護者からの意見もあって、事務局は会議後に、「パスワードを意図せず集めてしまうことを避けなければいけない」として、各校に通知を出すに至った。



●親にパスワードを伝えるかどうかは家庭内で判断してほしい

なお、このリーフレットは、昨年6月に配布した際は、印刷業者を通じて練馬区の児童生徒の数(約4万7000人)にあわせて紙で印刷し、各校に配布したという。



それ以降は、リーフレットのデータ保管場所にアクセスして、各校が必要なだけ印刷するという仕組みにしているそうだ。



事務局の担当者は、取材に「結果的に、このような事態を起こしてしまったので、私どもの至らない部分はありました」と素直に謝罪する一方で、「パスワード記載欄を設けることの意味も、われわれは意義があると思っている部分もあった」と話す。



当然ながら、その念頭にはSNSやインターネットのいじめをなんとかしたいという目的がある。



2018年10月の会議では、小学6年生の事例として、児童がギターを弾く映像をYouTubeにアップしたところ、友だちから誹謗中傷されたという事例が紹介された。校長から「SNSに関しては、小学校の喫緊の課題」と問題意識が示されたところだ。



事務局では、パスワードを学校が集めることは不適切と認識しているが、子どもがパスワードを親にまで教えてはいけないとまでは指導しない考えだ。



「ご家庭で判断することになると思います。年齢や使用状況にもよると思う。小学生で初めてスマホを与えるときに、子どもに自由に使わせるというと心配する部分はあって、親がいつでも見られるようにするよという約束も必要だと思います」(事務局の担当者)


このニュースに関するつぶやき

  • パスワードは変えるものという教育にもなるな!
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

ニュース設定