「厳しいけど強い」ではなく「楽しくて強い」|江戸崎ボーイズ

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2021年12月14日 23:14  ベースボールキング

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年末年始の30日間はチームの活動を行わない。そんな「積極的休養」を取り入れながらも創部5年で全国大会ベスト4になったチームがあるらしい—。どんなチームなのか気になり、グラウンドに足を運んだのがコロナ禍前の2年前。江戸崎ボーイズの「それから」が知りたくて再びグラウンドを訪ねました。



【自主性に委ねられた平日練習】
BTS 、あいみょんといった中学生たちにも人気の高いアーティストの音楽が流れる新利根総合運動公園野球場(茨城現稲敷市)。平日のこの日は17:30から20時まで練習が行われていた。ナイター施設が完備された野球場でほぼ毎日練習ができる。練習場の確保に奔走する都市部のチームには垂涎の練習環境だ。

この秋の選手権予選に優勝した江戸崎ボーイズは四期連続の全国大会出場を決めただけでなく、茨城県内では2年間公式戦無敗、3学年全ての大会を制してグラウンドスラムも達成。今や県内の中学硬式野球を代表する強豪チームになっている。2年前の全国大会ベスト4は偶然ではなかった。

恵まれた環境でほぼ毎日練習をしているのだから強くなるのもうなずける。しかし平日練習は強制ではなく自由参加。遠方の子や塾に通っている子など、平日練習にほとんど参加していない子もいるという。
「出席も取っていないので今日も何人来ているとか、誰が来ていないとか分からないんです。来たいときにきて休みたいときに休んでいい。選手に自覚や責任が芽生えていれば、そこは強制ではなく選手の判断でいいと思っています」
そう話してくれたのは2年前にもお話を伺った渋谷泰弘監督。



この日は、マシン2台とバッティングピッチャー1人の三カ所バッティングとノック、トレーニングが行われていた。しかし、監督とコーチは誰に何をしろなどと指示は行わない。平日練習に参加するかどうかだけなく、その日に何の練習をするかも選手の判断に委ねられていた。監督とコーチの主な役割は選手達が練習をやりたいと思った時に集まれる場所と環境を用意しておくこと。聞きに来れば教えるが、基本的には練習を見守るというスタンスだ。



「こうじゃないといけない、というような型にはめることはしません。だから自分でネットで調べたりYouTubeを見て色んなバッティングフォームを真似したり試したりするのも全然OKです。悩んでいる時にはこちらからアドバイスをすることもありますが、基本的には本人が聞きに来るまでは何も言いません」

子ども達の自主性が重んじられているチームだからこそ、茨城を代表する強豪になってもピリピリした緊張感がない。監督やコーチの目を気にする選手もいない。大人の罵声や大声が響き渡らないから、流行の音楽が流れる中で選手達は伸び伸びと練習に打ち込めているように見えた。

【根底にある「楽しく、強く」というチームの方針】
高校野球へ直結する中学野球では「楽しく」と「強く」の両立が難しい。強いチームであればあるほど「楽しく」とは対極に位置するように思える。江戸崎ボーイズではなぜ両立ができているのだろうか? 篠田優也コーチはこう話す。



「休むときは休む、野球をやるときはしっかりとやる。このあたりのON・OFF、メリハリがはっきりしていることが大きいのではないでしょうか。それが選手達のリフレッシュにも繋がって良い状態で練習ができていると思います。選手達が前向きになっていない「やらされる練習」では意味がないですからね」



2014年にチームを立ち上げた藤田大輔オーナーもこう話す。
「強いチームの監督=怖いみたいなイメージがありますけど、江戸崎は穏やかでしょ?(笑)。大人の怒声、罵声って子どもを萎縮させてしまいますよね。そういうのは今時のやり方ではないですよね」


【そんなに休んでなぜ勝てる!?】
家族と過ごす時間を大切にしてほしいから年末年始は30日休む。コロナ禍前にはそんな「積極的休養」を取り入れていたことは2年前にもお伝えした。長い休み期間は自分で考えて練習、トレーニングを行わなければいけない。そうやって先輩たちは全国ベスト4まで勝ち上った。そんな素地があったからこそ、コロナ禍で長期間チームで練習ができなくても江戸崎ボーイズは強さを維持することができた。



「現場ではもう少し練習をやらないと厳しいな、と思うことも初めはありましたけどね」と今では笑って話す渋谷監督だが、現在は土日の練習でさえも16時には終わっているという。

「野球も大事ですけど、家族との時間も大事にしてほしいですから。だから家族に練習が終わる時間やチームの予定を早くアナウンスしてあげることも常に意識しています」

こういった方針の根底にあるのは藤田オーナーの実体験だ。中学時代に毎日夜遅くまで野球を頑張っていた息子さんは卒業後に県外の高校へ進学した。当然家族と離ればなれの生活になった。その時になって「息子と一緒に過ごす時間をもっと大切しておけば良かった」と思ったのだという。
選手と家族が過ごせる時間もあと少しかもしれない。だからこそ、家族と過ごす時間も大事にしてほしい。チームの休日の多さ、練習終了時間の早さにはそんなオーナーの強い思いがある。

【子ども達が集まる理由】


2年前に取材したときから部員はさらに増えて現在は70人。その活躍ぶりから多くの子ども達が集まってくるようになった。来る者は拒まず、セレクションも行っていない。
県内の強豪、全国大会の常連チームに成長しながらも江戸崎ボーイズは学習塾と提携して子ども達の学力強化にも取り組んでいる。「楽しくて強い」だけでなく、「文武両道」にも力を入れているチームなのだ。

2014年に創設されたチームの一期生は今年大学1年生になった。江戸崎ボーイズ出身の選手達がこれからどんな活躍を見せてくれるのか、注目してみたい。(取材・文・写真:永松欣也)

このニュースに関するつぶやき

  • 結局、上手くなる一番の要因は、野球がやりたい!上手くなり!どうすれば上手くなれるだろうと考えてやる子ってことね、さらに素質があればぐんぐん伸びる。下手な指導よりよほど良い。
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