新会社の名はNEXT NEW WORLD。「石油由来のものを少なくし、環境負荷の低いネイチャーマテリアルを広めていく」ことをミッションとする。事業を展開するにあたり着目したのはシルクだ。最初は「一般的に高いモノでも、サプライチェーンを一本化してコストを削減し、値段を引き下げれば売れるのではないか」という考えからシルクに興味を持ち始めた。シルクは高級素材として知られるが、蚕を原料に昆虫食として食べられるほか、優れた美容成分を含むことからコスメにも応用できるなど、用途は多岐にわたる。「今後世界的に人口が増えていく中で必要になるのがタンパク質やアミノ酸。原料から開発して事業を大きくすることができれば、間違いなく需要を掴むことができるはず」。しかし一朝一夕にことが進むことはなかった。シルクについてリサーチを進めていく過程で、高嶋氏は日本のシルク産業の現状を突きつけられたという。
国産シルクは「絶滅寸前」 世界のシルク市場の実績と予測をレポートにまとめた「Global Silk Market Report, History and Forecast 2016-2027」によると、世界のシルク市場規模は2020年に38億2428万米ドルに到達。生産量は30年で2倍以上に拡大した。しかし農林水産省の調査では、1989年に5万7230戸あった日本の養蚕農家は2020年には228戸に減少し、30年で95%の養蚕農家が消滅したことが明らかになった。高度経済成長で世界一の輸出大国を誇った日本のシルク産業は衰退が進み「絶滅寸前」だという。
衰退の背景は「価格の高騰」。国産よりも海外産の方がコストがかからないことから国内メーカーの多くは海外からシルクを仕入れている。国内のシルク産業に対しては助成金が交付されているが、高嶋氏によると利益が出にくい旧来のビジネスモデルからアップデートされていない状態が続いているため、市場の縮小が続いているという。「日本のシルク産業を救いたい」。高嶋氏は国産シルクの販路を世界に広げることで産業再興を目指すことを決断した。
高嶋氏はサプライチェーンの一本化を実現するため、シルクの産地である群馬県桐生市にラボを構え、自ら養蚕業に着手。新会社の社員は今も高嶋氏のみだが、現地でできたネットワークや自治体などからのサポートもあり、量産に向けて順調に進捗しているという。
2時間で100万円を調達したシルク由来の石鹸 日本のシルクを使ったブランド「ウィズ オア ウィズアウト」では、人体に近いタンパク質だという「加水分解セリシン」を配合した石鹸「Soooo Silk Fluffy Soap」を第1弾商品として開発。ココナッツオイルやパームオイルなど4種類の天然オイルを取り入れ、フラッフィーの泡立ちで使い心地の良さと保湿を実現させた。また、シルクにはUVカットの効果が期待できるという。