神の足・鈴木尚広が「走りにくかった」捕手5人。「走ることの怖さ」を教えられた選手は?

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2022年01月18日 11:31  webスポルティーバ

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 巨人時代に12年連続で2ケタ盗塁を記録し、代走での通算最多盗塁数(132)を誇る鈴木尚広氏。「代走のスペシャリスト」「神の足」と言われた同氏が、2002年に一軍デビューを飾ってから2016年に現役を退くまで、とくに「走りにくい」と感じた捕手は誰だったのだろうか。盗塁をめぐる緻密な駆け引きについて聞いた。




【どうしたら盗塁できるのか】

 僕が一軍に上がったばかりの頃、一番走りにくいと感じたのはヤクルトの古田(敦也)さんです。キャッチングがうまくて、捕ってからの動作も速いし、送球もブレない。かつ、ランナー心理もわかっている。

 僕にとってテレビでずっと見ていた方なので、「古田さん」という特別なイメージが植えつけられていました。だから古田さんと勝負しようというより、「ああ、古田さんか......」という感じになり、圧倒的にマウントを取られていました(笑)。

 ヤクルトでは館山(昌平)さん、(オーランド)ロマンもクイックと牽制が速かったですが、僕が一軍に上がったばかりの頃によく対戦したのは高津(臣吾)さんと古田さんのバッテリーです。一軍で1年目の2002年には9回二死から盗塁を試みて、刺されてゲームセットということもありました。

 それで走ることの怖さを知り、盗塁の技術をさらに研究し、どうしたら成功できるかを突き詰めていくきっかけになりました。いかにして、古田さんから盗塁を決められるか。そこから頭を切り替えたのが、いかに古田さんを意識しないで、自分を信じてスタートを切れるかです。そうして視点を切り替えることができて以降、走る回数を増やしていけました。

 トータルで見れば、古田さんに対して8割くらい成功していると思います。それでも最初のイメージとして「現状ではかなわない」というのがあったので、古田さんには走りにくいという印象があります。そこから自分のなかで起きた盗塁改革みたいなものは、古田さんによって教えてもらった部分が大きく影響しています。

 一軍に上がって2年目以降は盗塁数を増やしていきましたが、その頃に最も走りにくかったキャッチャーは谷繁(元信)さんです。特別な「苦手意識」というより、当時の谷繁さんはセ・リーグのナンバーワンのキャッチャーでしたから。捕ってよし、投げてよし、コントロールよし。二塁ベースの上に送球して、走者と勝負してくるキャッチャーです。

 谷繁さんはピッチャーに対して「クイック、クイック」と口酸っぱく言っていて、試合後半になればなるほどクイックをできるピッチャーが出てきます。とくに浅尾(拓也)投手はクイックも牽制のターンも速いから、なかなか盗塁できませんでした。変化球が来そうなカウントなどで仕掛けるしかなく、全体的に中日バッテリーはすごく走りにくかったです。

 でも谷繁さんと勝負できることは、ランナー冥利に尽きます。谷繁さんから盗塁を決められることと、ほかのキャッチャーから成功できるのでは、自分のなかで意味合いが違いました。

 基本的に盗塁する際は、自分のなかで80%以上の精度で"いいスタート"を切らなければいけないと考えていましたが、谷繁さんに対しては90〜100%近くまで上げる必要がある。ほかのバッテリーなら、投げミスや、「走られてもいいや」という感覚を向こうから感じましたが、谷繁さんは投げミスがないし、ピッチャーに対しては「絶対走られるなよ」、谷繁さん自身からは「絶対刺すぞ」という雰囲気が常に出ていたからです。

 だからこそ、谷繁さんに対して完璧に上回って盗塁を決められた時には、「勝利できた」という感覚がありました。そうした意味で谷繁さんは、自分がランナーとして磨かれたキャッチャーです。

【相性が悪かった捕手は?】

 苦手意識ということで言えば、唯一感じていたのがヤクルトの中村(悠平)選手です。人間には相性があるので、自分の中で「何かこのキャッチャーとは合わない」という感覚があるんです。

 中村選手とは呼吸が合わせづらいというか、読みづらいというか、裏をかかれていたのか。なぜか、僕の時には必ず完璧な送球をするんです(笑)。ギリギリアウトというより、一呼吸置いてからのタッチアウトなので、「えっ?」という感じでした。

 中村選手に対して企画数は少ないですが、ほとんど成功せず、よく刺されたなというイメージがあります。むしろ、中村選手にしか刺されなかったというくらいのイメージです。

 ほかのキャッチャーで意識したのは、阪神に移ったあとの城島(健司)さんです。人って、イメージがすごく重要じゃないですか。城島さんとの対決はあまりなかったですが、一塁に立って「対城島」ということが出てくると、やっぱり意識せざるを得ないというか。座ったまま二塁に投げられるくらい肩も強いし、年齢を重ねても衰えが見えない。城島さんと勝負する時は、息をのんで戦っていました。

 パ・リーグとの対戦ではほとんど刺されたことがありませんが、嫌だと感じたキャッチャーは細川(亨)さんです。肩が強かったですからね。それでも、高低や左右に投げミスはありましたし、西武にはクイックが速いピッチャーはそんなにいませんでした。パ・リーグは全体的に、「クイックが速い」というイメージはそれほどなかったです。

 ピッチャーのクイックが緩いと、ランナーは走りやすくなります。いいスタートさえ切れれば、キャッチャーが慌ててくれるから、自動的に投げミスが生まれやすくなります。キャッチャーからすれば、捕った時点で走者がどれだけ進んでいるか、感覚的にわかります。だからランナーのベースにあるのは、必ずいいスタートを切って、キャッチャーが投球を捕った時点でどれだけセカンドの近くまで行けているかということです。

 逆にクイックがよくて、牽制が速くて、キャッチャーの総合的なクオリティが高かったら、ランナーはなかなか初球から走れません。カウントや状況を読んだり、「ここ」という場面で仕掛けたりしていくことになります。

 ただ不思議なもので、相手の対策が緩くなると、自分も少しホッとするというか、いくらでも行けるなと思って強引にスタートを切る場合もありました。そうなると、どこかにスキが出て、刺されることもありました。

 僕の場合、いいバッテリーと対戦した時のほうが、成功率が高かった気がします。スタートに対して、より集中できていたのでしょう。

 人間はどうしても相手に合わせるところがありますが、盗塁は自分のタイミングで仕掛けることが重要です。妙な安心感は人を動かなくさせるような感じがあるので、多少緊張感や不安みたいなものがあったほうがいいスタートを切れましたね。

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  • 晩年の古田にマウント取ってるところがショボいわ。
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