「子どもに見せるべき動画、見せてはいけない動画とは?」 チャイルド・ラボ所長・沢井佳子インタビュー

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2022年01月18日 12:01  ウレぴあ総研

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ウレぴあ総研

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今や至る所に映像が溢れている「ネット社会」。早くから子どもたちは、スマートフォンに興味を持ち触りたがり、映像を見たがります。

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さらに親たちもYouTubeやネット配信の番組を子どもに見せて、自分の時間を作ったり、家の用事を済ませたりしがちです。

こうした映像コンテンツが親たちを助ける一方、子どもに悪影響を与える映像もネット上には溢れています。

映像の視聴を通して、わが子が汚い言葉を覚えたり、悪ふざけしてお友達を傷つけてしまったりしては大変です。

実際に、どんな番組を見せてはいけないのか?それが、子どもにどんな影響を与えてしまうのか? 事前に知っておくことで、問題を防げることもあるのではないでしょうか。

そこで、BPO(放送倫理・番組向上機構:放送の表現の自由を守りつつ視聴者の基本的人権を傷つけることがないよう、NHKと民間放送が2003年につくった第三者機関)の青少年委員会の委員で、認知の発達支援と視聴覚教育コンテンツの開発を専門とするチャイルド・ラボ所長、(一社)日本こども成育協会理事の沢井佳子(さわいよしこ)さんに「子どもに影響を及ぼす映像コンテンツ」についてお話を伺いました。

■幼少期の子どもと映像を見る上での注意点

ーー子どもにスマートフォンを触らせるのはいつ頃からがいいのでしょう?

「しまじろう」で知られる、ベネッセの「こどもちゃれんじ」が、幼児向けのタブレットを2022年度から出します。

これは教育コンテンツ以外には繋がりませんので、「しまじろう関係の内容だけを見てね」という感じで、発達段階に合った情報を視聴し、インタラクティブに学ぶシステムです。

このように、子どものためにデザインされたシステムの中で視聴していれば、害のある刺激にさらされることはありません。

しかし実際は、親のスマートフォンでYouTubeなどの映像を見て過ごしている乳幼児は、相当数いるようです。

実は、1歳半で、スマートフォンのロックを外すことも出来てしまうし、大人と同じように扱ってしまうんです。

「これからのITが理解できるように、スマホにさわらせています」と親が言うのは間違っていると思います。

子ども向けYouTube動画を見せていたつもりが、悪影響を及ぼす動画に繋がってしまうこともしばしば。

自由に見せたいのなら、子どもの横に親がピタッとついて「この動画は良くないね、他のものを見ようね」と監督するしかないんです。

できることなら、テレビも、おうちの方と一緒に視聴して欲しいところです。

2〜3歳のときはもちろん、5歳でも子どもだけで見ないで欲しいですし、本当は毎回、親と一緒に見て欲しいわけです。

実は今流行っている『鬼滅の刃』も幼児が視聴するには、危ぶまれる点があります。

主人公や正義の味方が、敵である鬼を斬る流血場面が多出しますから、それを子どもは真似すると思ってください。

映像の動作のマネは、大人もします。つまり見れば誰でも動作や言葉の真似をする、模倣する。

だから「真似して欲しくないこと」は原則として見せないと考えて、おうちの方は、子どもに見せる番組を選んでほしいと思います。

ーースマートフォンを自分の物として持たせるのは、何歳からが良いのでしょうか。

子ども自身が持つとなったら、やはりどんなに早くても小学生に入ってからです。幼児期には持たせない方がいいですね。

ひとつの目安としては形式的な操作ができるようになる頃から。言葉や記号のレベルで論理がわかる年齢からがおすすめです。

論理というのは、赤ちゃんの頃からの理解が積み重なって、モノやコトの関係を学んでいきます。

そして「映像の中で、こう言っているけど、それはおかしい。これは駄目だよね」とコンテンツの良し悪しが本気で理解出来るようになるのは、早くて10歳ぐらいと言われています。

10歳からだったら「今、悪いものを見ている」という“悪い”と思う判断ができ、“後ろめたい”という気持ちを持ちながら視聴することが出来るんですね。

少し早いかとは思いますが、その判断が出来る10歳からなら、「キッズ向け」のスマートフォンを持っても良いだろうと考えています。

でも、子どもはメディアの初心者なのですから教習所に通うような感じで、おうちの方がマンツーマンでついてあげて、半年ぐらいは「どうやって選んで、何を見るべきか。文を書き込むときは、どういう言葉づかいをするべきか、プライバシーをどう守るか…」等々を、かなり詳しく教えてあげて欲しいんです。

「あなたの勝手にどうぞ」が一番危険です。

■10歳が節目となる「映像の認知のしかた」

ーー10歳という年齢で見る番組へのとらえ方が変わってくるということですか?

10歳以上なら、ドラマなどで登場人物達の行動を見ても、そこから色々な選択肢を想像することができます。

色々なメディアで色々な表現方法がある、誇張や嘘もあるということを、10歳なら知識として知っています。

その段階ならメタ認知(自分の認知活動を客観的にとらえる。考える、判断することを冷静にコントロールすること)を使って、その作品のストーリーの意図や、演出のよしあしを考えることも可能となるんです。

ーー10歳以下の子どもと、映像でいじめのシーンや残虐なシーンを見た場合は、親はどう対応すればいいんでしょうか。

10歳の判断力が優れていると申しましたが、本当は10歳でも隣に親が居て欲しいんです。

子どもに自分用のスマートフォンを持たせるということは、親が見ていない所でも映像を見ることが可能になるということですよね。映像のスマホ視聴の時間を長時間にするのは、やはり危険です。

だからこそ、Netflixなどの配信ものを見るならば、大きなテレビで親子一緒に作品を見て欲しい。

それが無理で、もし子どもが残虐な作品を見ていたと知ったら、そのことについて、おうちの方は、子どもと話して欲しいんです。

戦争映画につても、もちろん語り合い、歴史上の悲惨な出来事について、子どもと一緒に考える姿勢が大切です。

ましてや8歳頃の子どもは、物を隠すなどの動作的いじめの最盛期です。

『どっきりカメラ』のようなバラエティショーでは、人をからかい、人の痛みを笑うような場面がたくさん出てきますが、そうした行為の真似を8歳頃の子どもはしたいんです。

そんな番組を見た時は、子どもに「これは、してはいけないこと、お母さん(お父さん)は気分が悪くなるなぁ」としっかりと伝えて欲しいんです。

子どもは、映像のマネよりも、やはり、大好きな人の態度の模倣を好んでするからです。

子どもにとっての教育の近道は、「親が良い言動・態度を見せて、子どもの摸倣のモデルになること」につきます。

テレビで、人の痛みや困惑をタレント達が笑っている様子を見て、「これは良くないこと。こういうことをされたら、おとうさんはイヤだな」という番組批判を親が明確にする、そういう姿勢=モデルを見せる必要があります。

ーー暴力的なものは影響を及ぼす危険性があるということなんでしょうか?

そうですね。視聴する量が多ければ多いほど、影響を受けることになります。暴力場面がある番組って対話が長く続かないものが多いんです。

議論があっても喧嘩腰だったり、英語ならFワードと呼ばれる、使ってはいけない言葉ばかり話していたり。暴力シーン以外でも、対人関係やモノの扱いなど、あらゆる面で真似しないで欲しい映像が多いんです。

「暴力的な映像の視聴が、暴力的な行動の出現に影響があるとは言い切れない」と言う方がいますが、米国や西欧諸国における60年間の心理学研究のエビデンスを見ると、「子どもが暴力映像を視聴したあと、約10年後に影響が出る」という結果も出ています。

スマートフォンで見る動画も、テレビドラマや映画も、「親と一緒なら見てもいいコンテンツ」について、「なぜ、安全なのか?」という情報と共に、事前に知っておきたいと思う親御さんは多いでしょう。

そうした教育的レーティングサイトがあるといいですね。

ーー視覚から得た情報は脳にダイレクトに届きます。SNSの動画には、人の行動(事件や事故の場合も含む)を目撃者がスマートフォンで撮影したものが上がっています。

そうした動画を見れば“自分もやれるかも”と思ってしまう危険性があるということなんですね。

BBC(英国放送協会)では厳しい基準があります。当然、自殺は見せないし、死体も見せません。報道番組においてもフラッシュなどの点滅がある場合は予告もします。

つまりディレクターたちがファクトや映像の危険性をチェックする、フィルターが厚いんですね。

その点で安心して見ることが出来ます。私は日本でも“大人向けの映像であっても、子どものことを配慮したものを作るようにする仕事をしたい” と思っていますが現実はなかなか難しいようです。

子どもへの配慮が必要であることは、映像作品だけでなく全てのことに言えます。建物(オフィスビル)などの公共施設もそうですし、シュレッダーなどの備品もそうです。

「大人向けだから、子どもには関係ない」ということではなく、あらゆるものが子どもに対して影響を与えうるのだ…ということを考えるべき時代になったと思っています。

■考える力をはぐくむために役立つ映像とは

ーー小さい頃からYouTubeに触れているからか、長尺の映像を見られない子どもが増えています。子どもがYouTubeなどに触れるようになった時、どうすればいいですか?

やはり子どもと一緒に選んだ1時間〜2時間の作品を見ることが大事です。私は1930年代の映画、ディズニーの『白雪姫』(公開:1937年)などもおすすめします。

もちろん、最新作のアニメなどにもいいものがありますが、作品に文学的な要素があるようなものを選ぶといいでしょう。

文学的要素は、時間をかけて醸し出されるようなものなので、8分や10分の尺の動画ばかりを見ていたら、物語の深いニュアンスがわからないだろうと思うんです。

コンテンツを作る人の立場で考えましても、視聴者の目と思考力を育てておかないと、内容の深いコンテンツを作っても誰も理解してくれないようになってしまい、文化が退廃していってしまいます。

時間をかけて議論する、時間をかけて読む、そうすることで、内省する力が増し、より深く考えられるようになる。常識を超えるだけの想像力を得るには、ある程度の、長い見聞の時間が必要なんです。

世間では、「多様性、多様性」と言われますが、私は「本当にそれで終わっていいの?」と考えています。

スイスの心理学者ジャン・ピアジェは「発達の初期は、違いに注目し、発達が進めば、共通性に注目するようになる」と語っています。

実際、小さな子はパッとふたつの物の違いに気づき、2〜3歳の幼児のほうが大人よりも、違いを見分ける検知器が優れています。

が、5歳ぐらいになると、2つの物の見かけが違っていても、そこに何らかの共通性を見出せるようになるのです。その頃から、仲間集めや仲間分けが上手になるわけです。

だから「多様でいい。みんな違っていい」だけではなく「例え人種が違っても人間に必要なものは皆同じだよね。大事なのは違いを乗り越えて共通するものがあるということ」に気づいて欲しいと思っているんです。映画もそうですよね、全世界でヒットするものには何か普遍性がある。

それは作品に、文化の多様性を超えた「真理の共通性」があるからです。

「色々な違いを認めてあげましょう」ではなく「違いを認めたうえで、でも共通性があることを探しましょう、学びましょう」というところまで考える力を培って欲しいんです。

だから短い映像ばかり見せるのではなく、長く時間をかけるものを見たり読んだりして、深く考える能力を養う機会を、増やして欲しいと願っています。

■現実と非現実の時間のバランスで寛容さをつちかう

ーー子どもには映像を何時間以上見せてはいけないんでしょうか?

「ベネッセ教育総合研究所」で『小さな子どもとメディア』というサイトがあります。

そこには、「親と子のメディア研究会」からのメッセージがあり、私もコメントしています。

研究会には教育学者の汐見稔幸先生や小児神経科医の榊原洋一先生ら、各分野の専門家が、科学的エビデンスをもとに、子どもがメディアを利活用するときのアドバイスをしています。

年齢別の視聴時間の制限については、こうしたサイトの情報を、ご覧になるといいでしょう。

私は、子どものテレビ視聴の調査をしてきましたが、2歳児は盛んにテレビを見ています。0歳児だって見ています。

かつて0歳児のための『ソニー・キッズビデオ』の制作の事前視聴調査もしました。

映像は、おうちの方と一緒に視聴すれば、学習に役立つものが多くありますから、時間を制限すれば大いに見せて良いと思います。

2000年代の初めの調査では、テレビを毎日5時間ぐらい見せる家庭がたくさんありました。1日に6時間〜7時間と答えるお母さんもいらしたほどです。

子ども(幼児)は10時間ぐらい寝ますから、残り14時間中の活動時間の中で、テレビ視聴が6時間〜7時間って相当な長さですよね。テレビ以外の遊び時間がないことになってしまいます。

五感を使った遊びとのバランス、発光する画面を見つめる目の疲れなどを考えて、どんなに長くても、1日2時間、それも連続視聴はしない方がいいですね。

ーー子ども向けの番組は実写とアニメが融合した番組が多いですよね。実写で表現するおかげで子どもが真似しやすいということはあるのですか?

それはあります。教育的な効果を考えれば、やっぱり実写で見せないとわからないものは山ほどあります。世界を教えようとするとき、オールアニメでは駄目なんです。

もちろんアニメだからこそ描ける世界もありますが、実写映像はリアルワールドをしっかり見せられ、そこでどう振る舞うのか?という、行動のモデルを明快に示すことが出来ます。

例えば、数量の概念を教えるとき、「7個のものはどう配置を動かしても、7個に変わりはない」という「数の保存」は、アニメだと魔法のように見えてしまうことがあり、実写で見せたほうが、納得しやすいわけです。

実写もアニメも適材適所に使い、子ども番組はミックスメディアでないといけないと思っています。

ーー「子どもにとってアニメだと非現実過ぎてしまう。実写から学ぶことがある」確かにそうですね。

メディア・リテラシ―を学ぶためには、今までに集積された映像の文化遺産に触れてほしいですね。

手塚治虫の『鉄腕アトム』の漫画から初期アニメへ、それからコマをいっぱい使って表現された宮崎駿のアニメなど、多様なメディアで表現されたものを5歳までに幅広く見て欲しいんです。

実写もアニメも、ほぼ均等に見ていないとその後、それぞれのメディアへの愛着がわかないんです。幼児期に形成される、愛着の気持ちは重要です。人間は愛がないものに対しては、続けて見ることが出来ないからです。

もしYouTubeで動画を見るなら1970年代の「セサミストリート」をご覧になってみてください。

マペット(操り人形)を製作者であるジム・ヘンソン自身が動かしているんですが、動きが全く違うんです。あの柔らかな絶妙な動きを見て、映像の楽しさを感じて欲しいんです。

そうやって多様なものを見て、長い物語表現を飽きずに楽しんでくれる子どもたちを、育てていかないといけませんね。

親の好きなものだけを子どもに見せるというのは危険です。おうちの方も努めて、いろいろなメディアで、多様なコンテンツを選び、いい映像を探そうと心がけてくだされば、親子で映像を見る時間は、フレッシュで楽しいものになるでしょう。

沢井佳子編著『6歳までの子育て大全』(アーチブメント出版)

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