川端慎吾の打撃は「川上哲治レベル」。八重樫幸雄は日本一を決めたヒットを「わざと詰まらせた」と分析

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2022年01月20日 11:22  webスポルティーバ

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「オープン球話」連載第98回 第97回:川端はプロ入り時点で「完成されていた」>>

【一球で仕留める代打稼業の難しさ】

----さて、今回も「代打の神様」としてヤクルト日本一に貢献した川端慎吾選手について伺っていきます。今回は「代打稼業の難しさ」を中心に伺いたいと思います。現役晩年は八重樫さんも代打の切り札として活躍されましたね。

八重樫 現役選手なら誰でも、「レギュラーで試合に出たい」と思うものですよ。でも、監督から、チームから「代打」という役割を与えられた時に、どうやって気持ちを切り替えるか。そのへんがとても難しいんです。




----八重樫さんの場合、その切り替えはスムーズにできたんですか?

八重樫 僕の場合は40代になる頃だったし、野村(克也)監督時代には兼任コーチだったので、その切り替えはスムーズだったと思います。キャンプに入る時には「絶対にレギュラーに」と思っていても、キャンプが終わり、オープン戦が始まって監督の起用方法を見ていると、自然に自分の役割も理解できますからね。

----でも、川端選手の場合は故障明けとはいえ、まだ34歳です。そのあたりの切り替えは大変だったんでしょうか?

八重樫 大変だったでしょうね。真中(満)も、30代後半は代打の切り札として活躍したけど、川端の場合はさらに若いですから。彼の「もう一度レギュラーに戻りたい」という思いは強いと思います。

----実際に、昨年オフの契約更改の席上でも「もう一度レギュラーに」と発言していますね。あらためて、「代打稼業の難しさ」を教えていただけますか?

八重樫 とにかく「一球勝負」なんですよね、代打というものは。自分の打てるボールがきたら、それをいかにして初球から逃さずに仕留めることができるか。これが本当に大切で、本当に難しいんです。これは極端な例かもしれないけど、僕の場合はよっぽどのボールじゃなければ、リラックスするために必ず初球から振っていました。慎吾には慎吾なりのリラックス法があるんじゃないのかな?

【たったの一打席なのに倦怠感がハンパない】

----昨年の川端選手の打席を見ての、彼のすごさを教えてください。

八重樫 慎吾は一球にかける集中力が本当にすごかった。もともと、低めの対応力は並外れたものがあったけど、相手ピッチャーの高めの速球にも力負けせずに、軽く振っているように見えました。あれは相当な集中力で打席に臨んでいる証拠だと思いますよ。

 僕の場合は暑さ寒さに関係なく、自分の打席が終わったあとにものすごく汗が出ました。きっと慎吾のユニフォームも汗でビチョビチョだったんじゃないかな?

----それぐらい緊張感を伴うものなんですね。

八重樫 代打の一打席が終わった時は、めちゃくちゃランニングをした時と同じぐらいの汗が出ましたよ。そして、試合が終わってクラブハウスに戻った時には倦怠感というのか、グッタリしました。

--------代打というのは、いつ出番が回ってくるのかわかりませんよね。それに、自分が「よし、ここでオレの出番だ」と思った時に指名されなかったり、その反対に意外な場面で「さぁ、ここで頼むぞ」と言われたり、メンタルの維持もかなり大変だと思います。

八重樫 そうですね。そこは本当に大変でした。代打専門になったばかりのシーズン序盤は、そのタイミングがつかめなかったこともあったけど、試合を重ねて夏場になる頃には自分の考えと監督の考えが一致するようになりました。野村監督も、僕に気を遣ってくれて「おいハチ、打席に立ってみるか?」と聞いてくれるんです。それで準備ができていない時は「今日は結構です」と言ったり、「はい、行きます」と言ったりしたこともありましたよ(笑)。

----2021年の川端選手は代打の切り札としてシーズン30安打を記録しました。これまで培ってきた技術と、メンタルコントロールがうまくいったからでしょうか?

八重樫 まさにそうでしょうね。かつては苦手にしていた高めのストレートにも力負けすることなくスイングできたのは長年の努力の成果だったと思うし、代打で起用されて初球からフルスイングできるのはメンタルを整えて集中力を高めたから。技術とメンタルの両面が充実していたからこその結果だったと思いますね。

【川上哲治レベルの匠の技】

----日本シリーズでも、第5戦はアウトにはなったけれど、オリックス・平野佳寿投手の甘いフォークボールを見逃さずにライトに弾き返しました。そして、第6戦では延長12回に日本一を決める決勝タイムリーヒットを放っています。

八重樫 第6戦の決勝タイムリーこそ、2021年の、いや、プロ野球選手としての川端慎吾の集大成じゃないですかね。究極の技が詰まったヒットだったと思います。

----「究極の技」について、詳しく教えてください。

八重樫 しっかりとバットを振りきった上で、わざと詰まらせて逆方向、相手ショートのうしろにポトリと落とす。あれは単に「詰まった当たりがたまたまいいところに落ちた」のではなく、「技術でショート後方に打ったヒット」です。技術的には左手を上手に使ってはいるけど、むしろ全身を上手に使ったヒットですよ。

----決していい当たりではなかったけれど、それでもヒットにする長年の技術の集積こそ、あのヒットだったんですね。

八重樫 自分のポイントではなくても、しっかりと振りきってヒットにする。決してボールに合わせにいってないんです。「どうやってバットを振れば、どこに打球が飛ぶのか」ということを理解して、それを実践した。これはもう「令和の川上さん」レベルですよ。

----「ボールが止まって見える」という名言を残した「打撃の神様」川上哲治さんクラスの技術ですか!

八重樫 そう言いきってもいいんじゃないかな? あの日本シリーズ第6戦の決勝タイムリーヒットは、それぐらいのすばらしいヒットだったと思います。代打専門として頑張ってきた、慎吾の技術と執念が生み出したヒットでしたよ。

----日本一が決まったあと、大粒の涙をこぼしていましたね。

八重樫 自分の体のこととか、これまでのリハビリのこととか、日本一にかける思いとか、いろいろなものがこみ上げてきた涙だったんでしょうね。今後については、まだまだ若いんだから、本人が言っているようにもう一度レギュラーを目指してほしい。体が動く限りは1年でも長く現役を続けてほしいな。そして、現役引退後はその技術をぜひ後進に伝えていってほしいです。

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