堤真一が語る“親心” 「『ダメ』ではなく『やってみな』と言えるようになりたい」

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2022年01月21日 06:01  リアルサウンド

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堤真一『妻、小学生になる。』(c)TBS

 16年ぶりのTBSドラマ出演となる堤真一が主演を務める『妻、小学生になる。』が1月21日より放送される。


 村田椰融による同名漫画を『凪のお暇』(TBS系)、『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)の大島里美による脚本で映像化する本作は、妻を失った夫とその娘が、10歳の小学生の女の子に生まれ変わった妻(母)と奇跡の再会を果たして描かれる家族再生の物語。


【写真】22年前の『やまとなでしこ』での堤真一の姿


 今回、主演の堤に、16年ぶりのTBSドラマ出演となる本作にかける思いや、再共演の石田ゆり子に寄せる絶大な信頼感などについて、話を聞いた。(編集部)


■共感できるところはないかも?


――脚本を読んだ時にどのようなテーマを受け取り、どんなことを伝えていきたいと感じましたか?


堤真一(以下、堤):とても難しいですよね。大切な人を失って、希望や生きる意味をなくしてしまうことはあると思うんです。でも僕個人として、そういう方たちに「がんばりましょうよ」と面と向かって言うことは難しい。だから、物語を通して少し目線を変えることで、少しでも前に進めるような作品になってくれれば嬉しいです。


――そういうメッセージを伝えたいという思いで、この役を受けられたのでしょうか?


堤:いえ、お話をいただいたのは、もう2年以上前だったかな。もちろん仕事については自分で脚本を読んだ上で判断しますが、正直なところ、「また漫画原作?」と最初は思いました。でも、メッセージうんぬんではなく、この作品は読み物として純粋におもしろかったので、お受けすることにしたんです。


――圭介に共感できるところはありますか?


堤:共感できるところはないかも(苦笑)。今は時代が違うというのはもちろんわかっていますが、世代なのか「俺の人生、全部キミのために」という感覚があまりわからなくて……(笑)。


ーー共感できないなと思うところは具体的にどんな部分ですか?


堤:大切な人をなくして自分自身が落ち込むのはわかるけど、思い切りドツボにハマって娘のことはほったらかし。娘の人生までダメにしてしている気がしますし。むしろ娘のほうが大人で「本当に愛していたからしょうがない」と、お父さんのことを理解してあげている感じなんです。もし自分が同じ状況になったら、子どものためにもなんとか頑張って生きなきゃ、笑顔を見せなきゃって思うだろうなと思うんです。


――共感できない役を演じる時は、どのような心持ちなのでしょうか?


堤:共感はできないとしても、決して僕が思う生き方だけが正しいわけじゃない。それに、客観的にみても、妻に甘えっぱなしの今回の役はすごく楽しいんです。「いいなぁ、このいい加減な生き方」とも思えるんですよね。どんな役でもそうですけど、自分に近づけるというより、その役から学んだり教わったりすることが多いですし、そこが面白いところですね。


――あえて似ている部分を探すような作業はしないと。


堤:今回に限らず、そういうことはしないですね。たしかに若い時は、一生懸命に共通点を見出して、みたいなことをやっていたかもしれない。でも、いろんな役をやっているうちに、どんな人でも何かしら自分の中に共通する部分があるというか。それを無理やり探すよりも、まずはセリフを口に出してみると、意外と抵抗なくすんなり言葉が出たりもする。今回は、甘えるって大事だなと思いました(笑)。


――学びがあったわけですね(笑)。同じく石田ゆり子さんと夫婦役を演じられた映画『望み』の舞台挨拶では、石田さんとのほんわかしたやりとりが印象的でした。


堤:今回は、貴恵さんのセリフを小学生の(毎田)暖乃ちゃんが言わなきゃいけないので、彼女のお芝居について話すことが多いです。とにかくおおらかな人だし、芯が強い。あまりワーッと話すタイプの人ではなくて、「天然」と言うとご本人は否定されますが(笑)、本当におもしろいんですよ。『望み』の時は辛い役だったけど、今、ゆり子さんと演じているのは楽しかった夫婦の時間なので、とても気楽に楽しくやっています。ものすごくパワーのある女性の役なので、本当におんぶに抱っこですね。


――現場での居方について、主演として意識していることはありますか?


堤:そもそも主演という意識があまりないんですけど、今回は家族の物語なので、コミュニケーションをちゃんと取るよう心がけています。親子役なので、蒔田(彩珠)さんとはいろいろな場面で喋っていますね。


――役どころや物語によっても居方は変わりますよね。


堤:そうですね。でも、『望み』の時もゆり子さんとはしんどいシーンばかりだったんですけど、合間にはいろんな話をしていました。芝居している時が大変だから、それ以外は楽にいられるように。なるべく気楽に、感覚で芝居できるように、やっぱり会話をすることはすごく大事。監督ともそうですし、それはどの現場でも一緒ですね。


■「ダメ」ではなく「やってみな」と言えるようになりたい


――今回はファンタジー要素のある物語ですが、説得力を持たせるために工夫されていることを聞かせてください。


堤:落ち込んで希望をなくしているシーンでは、情けない奴、嫌な奴に見えるようにと思っています。奥さんといる時にも、“素敵な奥さんをもらって浮足立っている感じ”というか、観ている人が嫌悪感を抱く、共感できないようなキャラクターにしたいなと。監督ともそういう話をしていますね。


――第一報の際に「妻が小学生になるっていうのを考えても想像できない」とコメントされていましたが、実際にはどのように役を作り上げていったのでしょうか?


堤:芝居についてはその時、その時で監督ともよく話をしますけど、何より助かっているのは、ゆり子さんが自分の撮影がなくても現場に来てくれていることです。何を言うわけではないけれど、来てくださっているだけで僕はすごくやりやすくて。小学生の暖乃ちゃんに対して“貴恵さん”として話しかける時に、ゆり子さんと会ったばかりだと脳裏にイメージが浮かびやすいんですよ。ゆり子さんは「暖乃ちゃんが心配だから」と彼女のために来ているけど、僕が一番助かっています。


――クランクイン前の想像よりは、スムーズに演じることができている?


堤:いやぁ、これから難しくなると思うんですよね。圭介は「本当に妻の生まれ変わりなんだ」と思えた喜びから、いろんな現実にぶち当たっていく。人生は前を向き始めたかもしれないけど、これからどうやっていくことが家族にとっての幸せだったり、正しいことだったりするのか。それを考えさせられる話になっていくと思うんです。後半は「なぜ前世の記憶が蘇ったのか」を追求していくことにもなると思うので、このまま3人で楽しく暮らしていける感じではなくて。ここからが大変だと思うので、ゆり子さんには是非、全シーンに来ていただきたいです(笑)。


――第1話の台本を拝読して、小学生として現れた貴恵に圧倒された圭介の「……」が多い印象でした。


堤:セリフを覚えなくていいから楽っていうのはあるんですけど(笑)、あまり意識してないですかね。とにかく相手をちゃんと見て、感じて、芝居するだけなので。僕、ト書きも読んでいるつもりなんですけど、(叩かれた時に)「ここでペシンッとやられるんだ」と思ったりもしますから(笑)。構えずに、起きていることに対して素直に動こうと思っているので、「……」は気にしていないです。


――まだ撮影も序盤かと思いますが、どのあたりが見どころになりそうでしょうか。


堤:僕が主演ではあるけど、明らかに子役の毎田暖乃ちゃんが中心の作品です。彼女をどうサポートしていけるか。おそらくオンエアされたら「天才子役」と言われて引っ張りだこになると思いますが、でも、お芝居に関しては子どもだからと遠慮せず、きっちり話していきたいなって思います。見どころとしては、内容はぶっとんでいて不思議な要素もあるけど、人間の再生の話なんです。最終的にこの家族が一体どうなるのか楽しみですし、脚本を読んでいても「とにかく次を早く読みたい」と思えるくらい、いい作品になると思っています。


――「天才子役と言われると思う」とのことでしたが、現段階で堤さんが毎田さんに対して“すごい”と感じている部分は?


堤:圧倒的に僕よりセリフが多いのに、きっちり覚えてきているし、関西人だけど標準語のセリフを一生懸命に話している。お母さんと一緒に練習してるんだなって思うと、その努力はやっぱりすごいですよね。僕は年を取ってきて、セリフが全然入ってこなくて困ってしまうんですよ(笑)。


――(笑)。ドラマには、圭介にとって妻・貴恵が「信じるもの」だというセリフがあります。最後に、堤さんにとって信じるものを教えてください。


堤:自分の娘に対しては、いろんなこと心配しても始まらないんですよね。年を取ってからの子どもだから、この子には将来どうなってほしくて、そのためには何を伝えていけばいいんだろうと考える時期もあったけど、今はもう子どもたちが目指すことについて、「ダメ」ではなく「やってみな」と言えるようになりたい。子どもが何かを選択する時には、後押ししてあげたいなと思いますね。


――子どもを信じられる親になりたい、と。


堤:今は小学生と幼稚園児ですけど、それでもすべてのことを言うわけではないし、監視するわけにもいかない。それにこの先、僕がいなくなったとしても“きっと強く生きていける”というのは、信じるしかないですから。


(取材=nakamura omame)


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