『3月のライオン』二海堂晴信の存在はなぜ重要なのか 物語に吹き込む明るさと情熱

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2022年01月22日 10:11  リアルサウンド

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写真『3月のライオン(16)』
『3月のライオン(16)』

 羽海野チカによる将棋マンガ『3月のライオン』は2007年から「ヤングアニマル」(白泉社)で連載中で、2016年にTVアニメ化、2017年には実写映画化された、累計発行部数300万部突破をした大人気作だ。


 本作では家族を事故で亡くし、孤独な少年・桐山零がプロの棋士として、大人として成長していく姿が描かれる。物語としてのクオリティが高く、2011年に第35回講談社漫画賞一般部門、2014年には第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞、202年は第24回文化庁メディア芸術祭賞マンガ部門大賞を受賞している。


■ムードメイカーとして欠かせない二海堂の存在


 桐山が将棋を指したり、思考を巡らせたりしているシーンは、全体的にベタで塗りつぶされていることが多い。1巻を例にとれば、桐山が義父である幸田と対局するシーンは全体的に絵が明るい。しかし、桐山の内面は重々しいという言葉だけでは言い表せない葛藤に満ちており、そのことが如実に伝わる表現がなされている。


“――一手一手 まるで素手で殴ってるような感触がした――
殴った肌の あたたかさまで 生々しく残っている気がする
父さん……”


参考:【画像】『3月のライオン』第1巻表紙


 この桐山のモノローグは黒い背景に、白い縁取りをした黒い文字で書かれている。桐山の深い自責の念が現れている言葉にも取れる。


 川本三姉妹との微笑ましい交流や、将棋好きで生徒思いの林田先生とのやりとりにおいては、心温まるシーンが少なくないが、桐山が将棋を指しているシーンが明るく描かれることは極めて少ない。仕事であり、ライフワークともいえる将棋でこそ、桐山には救われてほしい……そう願う読者に寄り添ってくれるのが、桐山のよきライバルである、二海堂晴信だ。


 二海堂の登場は早く、2話から存在感を示している。桐山の親友を自称する二海堂は本作の登場人物としてやや異質で、終始、明るい。


“普通そういうモンだろ⁉
ライバルとか努力とか
そーいう色んなアレを
乗り越えて
最後にはお互いバチーンと
ハイタッチ☆で
「親友誕生☆」みたいな…
――読めよ!! 流れを!!”


 桐山のモノローグと比べてみると、この二海堂の明るさは、時に別作品なのではないかと錯覚してしまうほどだ。彼の存在は常に、桐山が決してひとりきりで将棋を指しているわけではないのだと、読者に訴えかける。島田研究会の島田開など、他にも桐山の理解者は登場してくるが、序盤の将棋のシーンは、二海堂がいるからこそ、息が詰まるだけではない、明るさがもたらされている。


■苦しみは表に出さず、人を鼓舞する二海堂


 もっとも、二海堂はただ楽天的なお気楽キャラではまったくない。二海堂には持病があり、腎臓機能系の病気だと描写されている。対局中に気分が悪くなって、倒れてしまったこともある。それでも「努力と才能の世界」である将棋の世界で、桐山と同様に、孤独を友として自身を高め続ける二海堂の姿。自分の苦しみは表に出さず、周囲に明るさをもたらしさえするその姿勢に、励まされる読者も多いだろう。


 そして将棋の実力も、“盛り上げキャラ”の枠にはとどまらない。将棋ファンの中には、二海堂と、1998年に夭折した天才棋士で、同じく腎臓系の難病を抱えていた村山聖(むらやま・さとし)を重ねて見る向きもあるが、その成長ぶりと盤に向き合う姿勢には、鬼気迫るものがある。


 2022年1月現在の最新刊である、『3月のライオン』16巻では、桐山と二海堂のライバル対局が始まったばかりだ。その行方とともに、淡々と、深く沈み込むような描写も多い本作に、“明るさ”と“熱さ”という彩りを与えてくれる二海堂の今後にも、引き続き注目していきたい。


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