『水樹奈々』の歌はなぜ心を揺さぶる? “841日ぶり有観客ライブ”に見た真価【濃密ライブレポート】

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2022年01月24日 10:21  ウレぴあ総研

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声優アーティストのトップランナー・水樹奈々が、2年4ヵ月ぶりの有観客ライブ『NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022』をさいたまスーパーアリーナで1月3・4日に開催した。

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スタジアムライブ、オリコン1位、紅白歌合戦出場と数々の“声優初”を切り拓いた歌手デビュー20年の軌跡を振り返りつつ、その先の未来へ向かう意図が込められた公演だった。

1月21日には4日の公演のライブ配信も行われ、アーカイブ配信も今月30日まで視聴可能。なぜ水樹奈々が多くのオーディエンスを魅了し続けるのか。その答えが散りばめられたようなステージは、何度でも観る価値があるだろう。

■841日ぶりのステージ、「攻めてこそ水樹奈々のライブ!」

2020年、水樹奈々は歌手デビュー20周年を迎え、過去最多の全17公演に及ぶツアーが予定されていたが、コロナ禍ですべて中止になった。ファンはもちろん、彼女自身も待望だった今回の2Days。有観客では2年4ヵ月、841日ぶりのライブとなった。

水樹奈々のライブといえば熱く飛ばすのが真骨頂だが、2年を経て世の中も自身の環境も変わった中で、変化はあるのか? 事前に「今回のセットリストは攻撃的」と話していた通り、1曲目から高速のシンフォニックデジタルロック『Synchrogazer』で幕を開けた。ステージ2階に姿を現し、超ハイトーンのファルセットで颯爽と歌い出す。

2012年のリリース時は、どこでブレスをしているのかと思うほどの爆走感が驚きだったが、その後、激しく速い路線はさらにエスカレート。相対的に「今となってはかわいいもの(笑)」と水樹が言う曲になり、この日も熱は込めながら余裕を感じさせた。

序盤は以後も、炎が噴き上がる演出が定番の『ETERNAL BLAZE』などロックチューンをたたみ込みつつ、ヴォーカルは伸びやか。軽く投げても剛速球がバシバシ来る感じだ。

「じっくりお届けするバラードゾーンがあってもいいんじゃないかとか、いろいろ考えたんです。でも、攻めてこそ水樹奈々のライブ! しかも841日分の想いが詰まっていたら、飛ばしていかなきゃいけないでしょう!」

MCで高揚気味に話した水樹。手練れのベテランミュージシャンを揃えたバックバンド・Cherry Boysの重厚なサウンドに乗り、巨大なさいたまスーパーアリーナの奥の席にまでグイグイ迫ってくるような歌を聴かせる。その中で<なんでなんでなんでなんでなんで>と繰り返す『glitch』など、歌詞の情感もしっかり伝えていた。

レトロポップな衣装に着替えると、ロカビリー調の『Knock U down』からはキュートなナンバーを続けていく。笑顔を浮かべて軽やかに、『Lovely Fruit』ではアイドル風の振りも付けて和ませる。

こうした曲では年齢を重ねてもキラキラした歌声を聴かせられるのは、声優ならではかもしれない。そのうえで張りのある歌いっぷりは、シャレた大人のかわいさも醸し出していた。この辺は特に水樹の表情にも、配信では注目して見たいところ。

■歌声、身体…各界のプロが認める水樹奈々の凄さ

さらに、ヘッドセットでミリタリー風の衣装になると、ディスコ調の『Inside of mind』とハロウィン風マーチ『Love Fight!』では、8人のバックダンサー・team YO-DAと共にダンスも披露。

歌は幼少期から演歌歌手を目指して父親に鍛えられてきた水樹だが、ダンスは元々は経験がなかった。最初はライブでの企画として踊り始めたが、いつしかダンスコーナーは毎回の恒例に。今回も腕を大きく使うしなやかな振りがダンサーたちときれいに揃い、歌を聴かせながら目も奪った。

まさに縦横無尽なステージを展開していく水樹奈々。その根幹にあるのは間違いなく、卓越した歌唱力だ。ファルセット、ロングトーン、ヴィブラートと駆使しながら、楽曲ごとに世界観を絶妙に引き立たせていく。

水樹は過去3回、『LIVE GRACE』と銘打ったフルオーケストラでのライブを行った。

指揮を務めた藤野浩一氏によると、リハーサルで演奏者たちは当初、見た目は小柄で普通のお嬢さんというたたずまいの水樹を様子見していたが、歌い出すや「最高峰のオペラ歌手と同じ音域だ」と色めき立ったという。

藤野氏は「普通は女性の声域でおいしいのはDくらいまで。ところが奈々ちゃんは、上のGで平気で歌うからビックリした」と話していた。

また何気なくやっているように見えるが、水樹はダンスコーナーで大きく踊りながら歌っても、決して音がブレない。間奏中にステージの端から端まで走ったあとに歌っても同様で、声量も落ちない。体幹や腹筋の強さ。彼女の徹底した体作りの賜物だ。

2011年の初の東京ドーム公演の前からトレーナーを付けて、アスリート並みのメニューをこなして肉体改造。2015年のツアーでは“見せる体と動ける体の両立”という難題に挑み、各会場で本番前もトレーニングに励んだ。西武ドームでは100m以上あるステージを全速力で走りながら歌うという、驚異的なパフォーマンスも見せている。

トレーナーの佐藤公勇氏は「どんなアスリートも全力疾走しながら歌うことはできない。どんなアーティストも音を外さず歌いながら走ることはできない。水樹奈々さんだからできる特許みたいなもの」と語っていた。

ブランク明けの今回のライブに向けては、「年齢を感じさせない動きをしたい」と、HIITトレーニングなどもこなし、体力や筋力を取り戻したそう。「今は20代の頃より体力があります」とも言う。

今回の公演は、リハーサルまで完了しながら中止になった20周年ツアーをベースに再構成され、過去の幾多のライブシーンを繋いだ映像も流された。「当時のマネージャーがホームビデオで撮っていた」という原宿アストロホールでの2001年のライブから、日本武道館、東京ドーム、甲子園球場、出雲大社……などと僅かずつだが流れて、懐かしさを呼ぶ。

この日のセットリストで一番古い楽曲は、2001年の1stアルバム収録の『TRANSMIGRATION』。初期の水樹の転機になったナンバーだ。

もともとラジオ番組の企画で、ロック系アニソンシンガーの草分け・奥井雅美に作詞を依頼。のちに水樹の楽曲を多数制作した矢吹俊郎が作・編曲。

まだ演歌の歌い方が染み付いていた水樹が、奥井の仮歌を手本に16ビートのリズムやアクセントの取り方を徹底的に鍛えられたという。ロックを歌う足場を築き、今や威風堂々と歌い上げていた。

デジタルリリースしたばかりの新曲『Red Breeze』では、激しいビートに乗って歌う側で多色の炎が噴き出す。サビに入ると、バックで滝のような火花が落ちていき、さらに花火が10mまで打ち上がるという、過去最大の火薬量による演出も。その中で水樹のヴォーカルもスパークしていった。

■ライブ終盤! 圧巻の迫力、そして深い感動へ

ラストスパートは『Get up! Shout!』から、さらにギアを上げる。爆発的にエネルギッシュで、ステージから突風が吹いてくるかの勢い。だが、水樹は軽々と飛ばしていき、歌の強い波長が心地良かった。圧巻の迫力は配信の画面越しでも伝わりそうだ

そして、本編最後はピアノから始まるラブバラード『ALL FOR LOVE』。<そばにいて それだけで 他に何もいらないよ>というこみ上げる想いをミックスボイスで歌い上げ、ドラマチックなフィナーレとなった。

アンコールでは、『LIVE RUNNER』だけに長さ277cmのスニーカーを模したトロッコに乗り、アリーナの外周を回りながら『No Rain, No Rainbow』に定番曲『POWER GATE』と歌っていく。ステージに戻るとセンターまで走って、ジャンプも決めて、躍動感が最後まで漲っていた。

自身が作詞・作曲した『UPSETTER』の明るい余韻が残る中、締めは「モヤモヤしたこの時代をぶち壊して、輝く扉を開いていける曲」と告げた『VIRGIN CODE』。10枚目のアルバムの1曲目に収録された疾走感溢れるロックだ。

2014年の横浜スタジアムのライブではプロペラ機に乗って登場して歌ったりと、水樹のライブを彩ってきた。この夜もステージを上手へ下手へと走ってはシャウトし、体の中から勇気を呼び起こされるようだった。

さらに、Wアンコールに応えたのが『深愛』。2009年に『紅白歌合戦』に初出場したときも歌ったバラードで、「言葉にできない溢れる想いがたくさんありますが、この1曲にすべて込めさせていただきます」と、手を胸に当てて染みわたる熱唱を聞かせた。ぶっ飛ばしてきたライブの最後に、深い感動が残った。

2年4ヵ月の間に世の中は変わった。これからどうなるかもわからない。でも、水樹奈々がライブに戻ってきた。以前と変わらない熱さで、以前よりも軽やかに。それがこの時代にどれだけ力をくれるものか、実感するステージだった。

新作アルバムや夏のツアーも発表されて、水樹奈々はまた進んでいく。彼女の音楽に触れてきた者として、その勢いに乗っていきたいと思わずにいられなかった。

本公演の1月21日のライブ配信では、アーカイブ視聴も30日まで可能。「今年は最高に弾けられる幸せな時間をたくさん作っていきたい」と話した水樹奈々の、息吹き溢れるリスタートは必見だ。

写真:上飯坂一 高田真紀子

■『NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022』配信概要

・アーカイブ配信

2022年1月30日(日)23:59まで

■アーカイブ配信チケット・1月30日(日)18:00まで発売中!

・チケット料金
[一般チケット] 3,900円(税込) ※配信メディアにより各種手数料がかかります。
[アフタートーク付きチケット] 2,900円(税込)

※アフタートーク付きチケットはPIA LIVE STREAMで販売。※10月27日(水)発売「Get up! Shout!」に封入の購入用シリアルが必要。
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