ミクロな世界に凝縮されたディティール ガラス容器に入った極小ジオラマ

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2022年01月28日 12:01  おたくま経済新聞

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おたくま経済新聞

ミクロな世界に凝縮されたディティール ガラス容器に入った極小ジオラマ

 手の中に収まる小さなガラス容器の中に入っているのは、地下室のある喫茶店。テーブルの上には、ティーポットやソーダ水のグラスも見えます。


 これは、極小サイズのジオラマ作家「猫耳工廠」さんが手がけた、東京都内に実在する喫茶店のジオラマです。ミクロな世界に凝縮された、リアルなジオラマについて話をうかがいました。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


 今回の作品は、東京・笹塚にある琥珀糖が有名なギャラリー併設の喫茶店「シャララ舎」から、「猫耳工廠さんなりに1年かけて店舗を再現してください」という依頼を受けて作られたもの。


 こういった依頼は初めてだったそうで「店舗、建具、什器、琥珀糖ソーダの再現に1年取り組んだ結果、良い勉強になりました」と、最も印象深い作品とのことです。


 小さなガラス瓶や試験管といった容器の中に、極小サイズのリアルなジオラマを作り上げる猫耳工廠さん。中学生の頃からジオラマ作りをしていたそうですが「高校生ぐらいの頃に、瓶の中にジオラマ作れば埃(ほこり)を被らず破損も防げるのでは?と思い作りはじめました」ときっかけを語ってくれました。


 元々は鉄道模型の部品を流用して作っていた、というジオラマ。「それが何か分かる程度のディティールを保った状態で瓶の中で再現できること、自力で作れること、他人が見て認識できる限界だと思ったので」1/144スケール相当の大きさで作品を作るようになったといいます。


 容器に入っているということもあり、世界の一部を切り取った上で周囲を想像させるものを心がけているというジオラマ。色々な角度から見てもそれぞれ異なって見え、世界を感じさせるものが好きだそうで、しいて挙げるならば「建物に関しては断面図」と猫耳工廠さん。


 確かに、壁で仕切られている建物は部屋ごとに異なる表情を見せてくれますし、それぞれの関係性を同時に見ることもでき、想像の世界が大きく広がります。まるで実際の建物をくり抜いて保存したようにも見えますね。


 使われている素材は、建物の躯体(壁や床など)は石粉粘土、建具は模型材料の材木を使い、シタデルカラーで彩色。それ以外では「エポキシパテから酒瓶の口に巻いてあった金属まで、使えると思ったものは何でも使っている」そうです。


 蓄音機の場合、ラッパ部分は酒瓶の口に巻いてあった金属を加工。載っているレコードはポンチで打ち抜いた紙が素材になっているとのこと。


 また、椅子の骨組みは線はんだ。座面と背もたれには、薄くスライスした建築模型用の木材が使われています。


 これまでに作った最小サイズの作品についてうかがうと、2020年に作ったという水槽を模した小瓶を挙げてくれました。直径10mm、高さ20mm程度と指先よりも小さな瓶の中に、水草と熱帯魚が泳いでいます。


 逆に最大は、というと、大学時代の作品で直径65mm、高さ140mmのガラス瓶に入った建物。これだって手の中に収まるサイズですから驚きです。


 年間で100点以上作るという多作の猫耳工廠さん。創作系同人誌即売会のCOMITIAや、アートイベントのデザインフェスタに参加されているほか、BOOTHにも出展されているので、作品を手に入れる機会もあります。


 SNSで写真を見てスペースにいらっしゃった方は、現物が想像以上に小さいと驚かれることが多いとか。また、たくさん作品があるので、どれを選ぼうかとずいぶん悩まれるんだそうです。


 細かいながらも、隅々まで神経の行き届いた猫耳工廠さんのガラス容器ジオラマ。リアルさゆえに、様々な物語が小さな容器の中で展開していくような気がします。



<記事化協力>
猫耳工廠さん(@nekomimikoushou)


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