「パパはいっしょにくらせないの?」日曜の夜、6歳の娘が泣いた 単身赴任の意味は?「次は転職考えます」

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2022年01月29日 07:00  ウィズニュース

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写真「会社員なら仕方ない」と粛々と転勤の辞令を受け入れた男性ですが、気持ちも変わり始めます(画像はイメージです)=Getty Images
「会社員なら仕方ない」と粛々と転勤の辞令を受け入れた男性ですが、気持ちも変わり始めます(画像はイメージです)=Getty Images

連載『父親のモヤモヤ』
「なんで、パパはいっしょにくらせないの?」――。ある日曜日の夜。家族が暮らす自宅の玄関先で、首都圏の単身赴任先に戻ろうとする男性に、当時6歳だった娘は泣いて問いかけました。「パパは行かないといけないの」。そうなだめる妻の言葉を、男性は聞くことしかできませんでした。「会社員なら仕方ない」と粛々と転勤の辞令を受け入れた男性ですが、気持ちも変わり始めます。(朝日新聞記者・高橋健次郎)

【マンガ】猝疑牲个壁廰瓩飽貎即発です。結末は衝撃的。転勤や単身赴任も「火種」になりそうです。

粛々と受け入れた転勤
男性は30代の会社員。製造業の会社に勤めています。共働きの妻と、小学生の長女と保育園児の長男の4人家族です。

始まりは8年前の転勤でした。

長女が生まれて半年ほど経った頃です。当時、男性は首都圏の職場に勤務していました。育休中だった妻も復帰に向けて動き出した矢先です。

西日本への異動を告げられました。

「ただ、会社員なら仕方がない。粛々と受け入れるしかない。そんな思いでした」。幸い、妻の勤務先の配慮で西日本の職場へ異動。家族そろっての転勤となりました。

「初めて」に立ち会えた
転勤先の西日本では夫婦で子育てをしていました。

男性が登園を担当。長女を迎えに行った妻が自宅に戻る頃には、男性が夕食を作り始める――。そんな生活でした。「初めて立った日」「初めてしゃべった日」。子どもの「初めて」にもたくさん立ち会うことができました。

2年ほど経った頃、妻が2人目の子どもの妊娠をしていることも分かりました。

妊娠は会社に報告。家族が増える喜びを感じていたところ、再び転勤を命じられます。

首都圏の事業所への異動でした。

4年半の単身赴任
「事業の統廃合のあおりでした。やむを得ない部分もあるのだと理解します。でも…」

妊娠中の妻とも話し合いました。

男性は首都圏で単身赴任。妻は出産後に、実家のある地方へ異動させてもらうこととなりました。

月2回、週末は家族の元へ帰る生活が始まりました。両親の全面的なサポートを受けていたとはいえ、妻の負担が気がかりでした。つらかったのは日曜日の午後8時ごろ。終電に乗って首都圏に向かうため、家族の元を離れないといけませんでした。「パパ!」と泣く娘の姿が目に焼きついています。

娘は、知らぬ間に逆上がりができるように。小学校の入学式には参加できませんでした。

あれほど「初めて」に立ち会えたのに。「子どもたちの成長を感じ取れない。そばにいられないことはつらかったです」。普段何を考えているのか。子どもたちの心の機微も分かりませんでした。

そこへコロナが追い打ちをかけます。半年間、家族と会えない時期もありました。

そんな単身赴任生活は、4年半ほど続きました。

次は転職を考える
このまま単身赴任が続くのか。家族と切り離されて暮らす生活に意味はあるのだろうか。家族を離ればなれにする転勤は、本当に必要なのだろうか――。

男性の心境にも少しずつ変化が生まれました。転勤の是非にも関心が高まりました。

単身赴任が解消されたのは1年半ほど前。会社と交渉の末、妻の実家のある地方で働くことができるようになりました。

「家族と一緒に住むことで安心感を覚えます」。男性はそう話します。子どもたちとのたわいない会話に心が満たされるのを感じます。

男性が仕事上の専門性を高めるためには、別の地方にある拠点で働いた方がよさそうです。ただ、「家族と離れて暮らすことがイメージできません」

そしてこう考えるようになりました。

「私の転勤で、妻のキャリアも少なからず停滞してしまいました。妻がキャリアを築くことを応援したいです。もちろん、家族とも一緒に暮らしたい。次に転勤辞令があれば、転職を考えます」

転勤、見直す動きも
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「企業の転勤の実態に関する調査」(2017年)によると、「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」「正社員でも転勤をする者の範囲は限られている」と回答した企業は、調査対象のおよそ6割でした。

ただ働き手にとっては大きな変化を伴います。調査では、転勤に関して、企業が社員からどのような理由で「配慮」を求められているかも聞いています。子育てに限らず、「親らの介護」「結婚」「配偶者の勤務(共働き)」など、さまざま。影響の広がりがみてとれます。

転勤が引き金となって退職につながるケースも散見されます。このため、企業によっては、転勤や単身赴任を減らすなど、見直す動きも出ています。

あなたのモヤモヤ、お寄せください
記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(dkh@asahi.com)で、朝日新聞「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

【#父親のモヤモヤ】仕事と家庭とのバランスに葛藤を抱え、子育ての主体と見られず疎外感を覚える――。共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、このようにモヤモヤすることがあります。

一方、「ワンオペ育児」に「上から目線」と、家事や育児の大部分を担い、パートナーとのやりとりに不快感を覚えるのは、多くの場合「母親」です。父親のモヤモヤにぴんとこず、いら立つ人もいるでしょう。「父親がモヤモヤ?」と。

父親のモヤモヤは、多くの母親がこれまで直面した困難の追体験かもしれません。あるいは、父親に特有の事情があるかもしれません。いずれにしても、モヤモヤの裏には、往々にして、性別役割や働き方などの問題がひそんでいます。

それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながるはずです。語ることに躊躇しながら、でも、#父親のモヤモヤについて考えていきたいと思います。

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