床に這いつくばり「女子中学生」の靴ペロペロ、「強制わいせつ罪」は成立しないのか?

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2022年03月05日 07:31  弁護士ドットコム

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床にはいつくばって、女子中学生の靴をなめたとして、男性が暴行の疑いで群馬県警に逮捕された。


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上毛新聞などによると、男性は1月30日夕方、高崎市内の商業施設で商品を見ていた女子中学生に近づいて、床にはいつくばって左足に履いていたスニーカーのつま先をなめた疑いが持たれている。



県警の取り調べに対して、「性欲を満たすためだった」などと容疑を認めているということだが、暴行以外の罪に問われることはないのだろうか。わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。



●強制わいせつに該当するかは検討が必要になる

――床にはいつくばって女子中学生の靴をなめる行為は、暴行罪にあたるのでしょうか?



暴行罪(刑法208条)における「暴行」は、人の身体に対する有形力の行使のことをいいます。



必ずしも、それが人の身体に直接接触することを要しませんが、少なくとも、相手の五官(目、鼻、耳、舌、皮膚)に直接、間接に作用して、不快ないし苦痛を与える性質のものであることが必要とされています。



その意味では、「床にはいつくばりスニーカーのつま先をなめた」行為があれば、暴行罪に該当する可能性があります」



――「性欲を満たすため」と供述しているようですが、暴行以外の罪には問われないのでしょうか?



強制わいせつ罪(176条前段)の「暴行」は、人の反抗を抑圧するか、著しく困難にするに足りる有形力の行使をいうので、「床にはいつくばりスニーカーのつま先をなめた」程度であれば、該当しないでしょう。



ただし、相手方が13歳未満の場合の強制わいせつ罪(176条後段)には、暴行が不要になっていますので、わいせつ行為を検討する必要があります。



●「性的意味合いが弱く、わいせつ行為とは言いがたい」

――具体的にはどのような検討になりますか?



わいせつ性については、有名な定義があります。



「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」



実は、この定義については、強制わいせつ罪の関係で最高裁は採用していませんし、採用することもないとされています(最高裁大法廷・平成29年11月29日 馬渡香津子「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」最高裁判所判例解説 刑事篇 平成29年度)。



最近、わいせつ性は、定義を示さないで
(1)行為の性的意味合い
(2)性的意味合いの程度
(3)社会通念
によって判断されています。(薄井真由子「強制わいせつ罪における「性的意図」刑事事実認定重要判決50選 上 第3版」P519)



最近では、メール等で求めて裸の画像を撮影させる行為(大阪高裁・令和3年7月14日、大阪高裁・令和4年1月20日)など、「非接触型」わいせつ行為についても、強制わいせつ罪とする高裁判決が出ています。



――今回のような行為はどうなるのでしょうか?



足関係では、靴下を脱がして足裏を舐める行為(名古屋地裁岡崎支部・平成27年4月28日、静岡地裁浜松支部・平成30年11月20日)、ブレーキペダルを踏むと被告人に顔も同時に踏まざるを得ない位置に頭を置いて、足裏部を顔面に密着させて足裏部に唇を押しつけ舐める行為(京都地裁・平成29年2月10日)を強制わいせつ罪とした事例があります。



これらの裁判例に照らすと、「床にはいつくばりスニーカーのつま先をなめた」程度であれば、短時間で執拗性もなく、靴の上からという点で、性的意味合いが弱く、わいせつ行為とは言いがたいと考えます。せいぜい『卑わい行為』(迷惑防止条例)止まりでしょう。




【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/


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