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連覇と、昨年果たせなかった日本一を目指す2022年のオリックス。監督、コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。
第10回は、入団7年目の昨季キャリアハイとなる8勝を挙げ、今季は2ケタ勝利を目指す山��福也投手（29）です。
いつも明るく爽やかな笑顔で、ファンからも「サチヤさん」と親しまれますが、高校進学直前の健康診断で脳腫瘍が見つかり、手術で一命をとりとめた経験を持ちます。
今季からは脳腫瘍で苦しむ人たちを助ける活動などに寄付するため、登板1イニングにつき1万円を積み立てることを計画。より多く投げてチームの勝利に貢献することが、病気で苦しむ人たちを励ますことにもつながります。
◆ 「14回目の誕生日」
プロ野球解説者で、元巨人の鈴木康友さん流に言えば、山��福也にとって今年の3月21日は“14回目の誕生日”になる。
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日大三高への入学を控え、偶然に受けた健診が、命を救うことになったエピソードはよく知られている。
生存率10％といわれる中で、6時間に及ぶ手術が成功。驚異的な回復ぶりもあって、医療関係者から「奇跡の子」と呼ばれたそうだ。
その後、日大三高では3年春の甲子園でエースとして準優勝。打者として記録した、1大会の通算安打の歴代タイ記録（計13安打）はいまだに破られていない。明治大学でも投打に活躍したほか、3年時には春秋連覇に貢献した。
2月の宮崎キャンプ。「11番がすっかり似合いますね」と声を掛けると、「ありがとうございます」と満面の笑みが返って来た。
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9日の中日戦（バンテリンドーム）では、2番手として5回から登板。球数が少なかった（打者13人に50球）ため、予定の4回から1イニング延長したほど、仕上がっている。
キャンプでのテーマは、直球を磨くことだった。
直球に大きく割れるカーブやチェンジアップ、スライダーなどの緩急で打たせて取るのが身上。その変化球をさらに生かすため、制球の精度を上げ、右打者の内角を突くストレートを求めた。
「変化球に頼っている自分がいる。このままでは手詰まり感があったので、直球を練習してきた。球速を上げるのではなく、正確に投げられるコントロールを磨く」と、その狙いを明かす。
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◆ 病気で苦しむ人、その家族を勇気づけるために
昨季は1年間ローテーションを守り、キャリアハイの8勝（10敗）を挙げた。目指していた2ケタ勝利には手が届かなかったものの、5勝から3連勝で8勝まで積み上げた。
「自分の中では、なんとしても差を縮めるんだという気持ちで投げていたので、そこは自信になった」
8年目の今季の目標は、「最低でも、規定投球回数と2ケタ勝利」と高い。
思えば、昨年12月10日の契約更改では「このくらいの成績は残せるかなと思っていた。まだまだ満足していないし、もっといい成績を残せる自信はある」とも語っていた。
2年前の先発ローテ入り前からフォームの微調整を重ね、「いい感覚がつかめ、しっかりと投げ切れば成績はついてくると感じていた」という。
手術前日の2008年3月20日に、札幌ドームで行われた日本ハム−ロッテ戦を観戦。その試合では、2年連続で開幕投手を務めたダルビッシュ有が9回・124球を一人で投げ抜き、4安打・10奪三振の完封。6回に挙げた1点を守り抜き、1−0で勝利した。
「翌日に手術を控えており、死の恐怖や不安もあり試合の印象は強く残っていない」そうだが、「あの時に、将来プロ野球選手になって、ローテーションを守っている今の姿は想像できなかった」と振り返る。
高校・大学で野球選手として活躍する中で、過去の病歴も知られるようになり、同じ病気で苦しむ少年らから目標にされる存在になってきた。今も交流がある家族もいるそうで、様々な形で力になりたいと考えてきた。そこで昨季、プロ野球選手として実績を残すことが出来たことが、社会貢献活動への背中を押してくれたようだ。
リリースの瞬間、ロジンが大輪の花のように白く舞うマウンドで、打者を手玉に取る山��福。その姿が病気で苦しむ人や、その家族を勇気づける。そのためにも、腕を振り続ける。
取材・文＝北野正樹（きたの・まさき）
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