出店場所は2019年のリニューアル以降、栗野氏が度々足を運んでいるという渋谷パルコの1階を選択。2021年の9月に自身がプロジェクトディレクターを務める「FACE. A-J」(Fashion And Culture Exchange. Africa-Japan)のポップアップを渋谷パルコで開催した際に、「8階の映画館ではマルタン・マルジェラやデヴィッド・バーンの映画を上映していて、映画を見た人が館を回遊する。そういったところから、ただ服やトレンドを売っているわけではなく常にカルチャーを発信しているというのが改めて感じられました。この素敵な場所で、従来のものとは違うスーツのステージを提案してみたかったんです」と話す。
バブルの「日本の背広」から新たな「自由な背広」へ
ポップアップショップのタイトル「自由な背広」は、栗野氏が用意したいくつかの候補から川久保玲氏が選定。「自由な背広」は「コム デ ギャルソン・オム ドゥ(COMME des GARÇONS HOMME DEUX)」がスタートした1987年の広告のキャッチコピー「日本の背広」をアレンジしたもので、実際同店舗でコム デ ギャルソンは「コム デ ギャルソン・オム ドゥ」のアイテムをメインに展開している。栗野氏は「当時の世の中はバブルだったので、"日本の背広"というキャッチコピーは襟を正して、もう少し矜持を保ちなさいよというメッセージだったと思います。それから約35年が経ち、バブルのときのような浮ついたスタイルが減り、スーツをビジネスシーンに閉じ込め過ぎてしまった。矜持を保った部分を残しつつ、もっと自由に捉えて欲しいと考えこの企画を立案しました」と明かす。
アイテムラインナップは、ユナイテッドアローズが「ユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)」や「ソブリン(SOVEREIGN)」「テゲ ユナイテッドアローズ(TEGE UNITED ARROWS)」といったレーベルのセットアップなどベーシックなアイテムをセレクト。ニューバランスは、メイドインUSAのモデルを中心に、栗野氏や「ディストリクト ユナイテッドアローズ(District UNITED ARROWS)」の店員が普段から着用しているという900番台や1500番をはじめ、「東京デザインスタジオ ニューバランス(TOKYO DESIGN STUDIO New Balance)」の「TDS 574」などを展開している。
誰かが行動を起こさないとなかなかファッションは面白くならない