ベルギーに渡って1年3カ月。ベルギーのSKロンメルでプレーする斉藤光毅にとって、U−21日本代表のパリ五輪への初陣ともなるドバイカップU−23は自身の成長を示す場となる。10番を託された点も含め、情けない姿を見せるわけにはいかなかった。
誰よりもモチベーションは高かった。久々に着る日本代表のユニフォーム、顔馴染みの仲間たちとともにプレーできる喜び。そして、何より日本のために戦えることが待ち遠しかった。実際にコンディションも悪くない。合流初日からキレのある動きを見せ、実践形式のトレーニングでも仲間とうまくコミュニケーションを取りながら躍動感のある動きを見せていた。
23日のクロアチア戦では左サイドハーフで先発出場を果たすと、DFとMFのギャップでボールを引き出しながら、チャンスと見れば積極的にドリブルで前に運んでいく。ボールが入れば何かしてくれそうな“ワクワク感”があり、大柄な選手が揃うクロアチアの守備網を打開できそうな予感を漂わせていた。22分には俊敏な動きで左サイドを抉り、ゴール前にクロスを入れる。藤尾翔太が決め切れなかったが、仕掛けた時のスピード感はチームの中で群を抜いていた。
その一方でボールロストも散見され、決定機に絡む回数は限定的。65分にピッチを去るまでに結果を残せず、試合後に斉藤が見せた表情は険しいモノだった。その悔しさは試合後のコメントからも伺える。
「個人的には点が取りたくて、結果も残したかった。チームが勝てたことに対してはいいかなと思っています。でも、チャンスも多かったですし、自分自身もボールをロストが多く、まだまだやらないといけないところがあった。個人としてもチームとしても、(次の試合に向けて)振り返ってやっていきたい」
クロアチア戦の出来に納得はしていない。ただ、少なくとも逞しくなって代表に戻ってきたのは確か。ベルギーでの経験があるからこそ、肉体的にも精神的にもタフになった。
合流初日、斉藤は異国の地でのプレーについてこう話していた。
「慣れるまでに時間がかかった。自分のプレーが出せないというか、自分の感情的にも『(このプレーで)合っているのかな?』と感じる部分もあったんです。でも、慣れてくると、伸び伸びプレーして楽しめるようになってきた。そう感じられるようになったのが成長だと思う」
ベルギー2部のサッカーは泥臭く、球際も日本と比べ物にならないほど激しい。「違う競技をしている感じ」と斉藤が話す通り、テクニックやスピードで勝負する者にとっては良さを発揮するのは簡単ではないだろう。実際に入団当初はケガに悩まされ、最初のシーズンは思うように試合に絡めなかった。ただ、厳しい環境の中で自分の強みを発揮する術を徐々に理解してきたのも事実。このクロアチア戦では結果に結び付けられなかったが、東欧の大男たちに一歩も引かずに闘い続けたのは海外でのプレー経験があったからだろう。
残された2試合でどんなプレーを見せてくれるのか。「満足の仕方がわからない。上には上がいる」と話す斉藤はこのまま終わるつもりなどない。大岩剛監督が掲げる“A代表経由パリ五輪”を体現すべく、飽きない向上心を持って闘い続ける。
取材・文=松尾祐希