夢を追う「売れない俳優」の夫、ついに無職状態に… 働かない=経済的DVと言えるのか?

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2022年04月06日 09:51  弁護士ドットコム

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「売れない俳優である夫から経済的に依存されているのですが、このような状況で離婚した場合に、経済的DVを受けたとして慰謝料を請求できるのでしょうか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。


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相談者の女性の夫は「売れない俳優」だといいます。バイトもコロナ禍でやめてしまったためほぼ無職状態。夫は自分の小遣い程度も稼ぐことができず、「女性から夫への貸し付け」として貸したお金は、すでに300万円を超えているそうです。



女性は非正規雇用で、家事や育児の多くを担いながら必死の毎日だといいます。なけなしの貯金をほとんど使い尽くしてしまいました。夫には持病もなく、かといって主夫として家事や育児をしているわけでもありません。



相談者が考えるように、生活費を稼ごうとしないことは「経済的DV」に該当するのでしょうか。また経済的DVを受けたとして離婚や慰謝料を請求することはできるのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。



●経済的DVに該当するケースとは?

ーー夫が働かないことは「経済的DV」に該当するのでしょうか



「経済的DV」という言葉が独り歩きをしている感がありますが、「経済的DV」は、何か明確な定義が存在する言葉ではありません。



もっとも、「DV」という語感からすれば、配偶者間で行われる物理的暴力に匹敵するような、故意の経済的な追い詰め行為を指すものということができると考えられます。たとえば、「稼ぎがあるのに、生活費を故意に渡さない」ようなケースです。



今回のご相談では、夫は夢を追いかけて無収入となっているのであって、意図的に相談者に対する嫌がらせ目的で生活費を渡さないというものではないと思われますから、配偶者間での不法行為としての経済的DVにはあたらず、慰謝料請求もできないという結論に至ります。



●「婚姻を継続し難い」と認められるか否か

ーーDVに該当しないとしても、生活費を稼ごうとしないことは離婚理由になるのでしょうか



稼得能力がなく、家事や育児への参加もしないことを理由に、「婚姻を継続し難い」と主張して、離婚請求をすることは可能ではないかと思われます。



が、いずれにせよ、夫の意思如何にかかわらず離婚したいということであれば、家裁での調停手続を通して、離婚協議を始めざるを得ません。



ーー相談者の女性は、このような状況で別居した場合、相手が拒んだら婚姻費用分担をしなければいけないのでしょうか



稼ぎの少ない夫から、婚姻費用の分担を求められるおそれは十分にあります。



もっとも、婚姻費用には、子どもの生活費という面もあります。もし別居にあたって子どもを相談者の側で監護することになった場合には、子どもの生活費を負担すべきは非監護親たる夫であると主張するなどの対応策はあります。



すみやかに弁護士に相談して、適切な方法を迅速に実行することが肝要だといえます。




【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp


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