ヤクルト・赤羽由紘「去年なかった感情が…」育成2年目の“一軍帯同”で得たものとは?【若燕フォーカス】

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2022年04月21日 07:11  ベースボールキング

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支配下登録を目指しファームで奮闘するヤクルト・赤羽由紘[写真=別府勉]
◆ 自分と向き合い成長

 強い日差しが照りつける戸田球場から輝く一軍の舞台へ。21歳の赤羽由紘は、支配下登録へ向けて必死にアピールを続けている。

 2020年、BCリーグ・信濃から育成ドラフト2位指名でヤクルトに入団し、今年が2年目。今春のキャンプでは一軍メンバーとして名を連ねた。

 「去年、オリンピック期間にエキシビションで初めて一軍の試合に出て、今年春先ずっと一軍にいさせてもらった。キャンプから始まったんですけど、やっぱり独特の雰囲気であったり緊張感だったりというのはすごく感じました」

 昨年、20年ぶりの日本一に貢献した選手たちが集う一軍キャンプ。さらにはその後のオープン戦にも帯同して感じたものとは何だったのだろうか。

 「一軍でたくさん活躍している選手を見て、こういう打ち方をしているとか、自分が見ていたのが山田哲人さんのバッティング。インコースの打ち方や、真後ろでバットの出方を見ていたので、自分とはまったく違う感じだった」

 山田のような高いレベルの選手の技術を間近で見て、将来の糧とした。一方で、一軍にいたことで結果を残したいという気持ちが先行し、自分の本来の持ち味を見失っていたと振り返る。

 「一軍で打席にたくさん立たせてもらい、自分の中でそんなに緊張とかはなかったと思うんですけど、やっぱり何とかしなきゃとか、対投手で戦わなければいけないところを、対自分で戦っていたなと途中で気づきました」

 春季キャンプ中、赤羽に関して大松尚逸打撃コーチは「思い切ってフルスイングできる魅力のある選手」と評価していた。もちろん赤羽自身も自分の売りが何であるかはわかっていた。

 「思い切りの良いバッティングというところが自分のアピールポイントなんですけど、一軍の打席に立ったときに、初球から振ることが少なかったと自分で感じました。初球からいかなきゃと思えば思うほどバットが出てこないものなので、技術どうこうより、考え過ぎちゃって。自分の持ち味をたくさんアピールできたかといえばできていない」

 こうした反省を生かし、「二軍に来てからは対自分ではなく、対投手でしっかりいまは戦えているなという感じはあります」と、手応えを感じている。

 一軍に帯同し、プレーできたことで、自分と向き合い成長することができた。支配下を目指す赤羽にとって貴重な経験となった。


◆ 一軍が気になる…心境の変化も

 広角に強い打球を打てるパンチ力が、赤羽の特長だ。「ホームランをバンバン打つような打者ではない。引っ張って強い打球というのはどの選手もできたりする。右に強い打球を打つ練習を(ファームに)帰って来てからしてきた」と話す。

 4月12日に戸田で行われた社会人チームとの練習試合では「4番・三塁」でスタメン出場。第3打席で右中間を鋭く破る三塁打を放ち、「去年までなら、力んでファウルになっていることも多々あった」という外角の球を、しっかりと捉えた。

 守備面や走塁面でも磨きをかけている。一軍に帯同した際、森岡良介内野守備走塁コーチからの教えを頭に叩き込んだ。

 「自分がどういう選手であるかを考えたときに、守備でも内外野をやっているので、一軍で出るとなった場合は守備固めもあると思います。ランナーで出るとなったときには、もうひとつ先の塁を陥れることができれば、チームにとってもプラスになる」

 内野の守備ではサードやファーストがメインだが、セカンドやショートもこなす。走塁では「判断良く、いかに次の塁、さらにもうひとつの塁を狙えるかというのを日々やっている」と、積極的だ。

 すべては一軍で活躍するため。

 「去年に比べたら(一軍の)試合結果はめちゃめちゃ気になりますし、今年はけっこう気にして見るようになった。一軍にいたことによって、去年なかった感情がかなり生まれてきています」

 ファームで共に汗を流してきた内山壮真、長岡秀樹、同い年の濱田太貴が開幕一軍をつかんだ。彼らの姿に「めちゃくちゃ刺激をもらっていますね」と赤羽。燃えないはずがない。

 チームは若い選手たちが台頭してきた。競争に打ち勝って一軍で活躍するために、どんなプレーを見せていきたいか。思い描く選手像を聞いてみた。

 「ユーティリティープレーヤーで、内外野を守れる。自分が試合に出たときに、バントなどの作戦もやっていかなければいけない。ランナーがいるときは還したい。打点も稼ぎたいと思いますし…。そうなると全部ってなっちゃいますね」と、笑った。

 ファームを指揮する池山隆寛二軍監督は、赤羽について「年も20代と若いですし、若さあふれる思い切ったプレーを目指していってほしいと思う。3ケタの背番号を早く2ケタにして、支配下を目指していってほしい」と期待をかける。
 
 現在の背番号は「023」。背中の番号を軽くするため、走攻守で魅力あふれる21歳は「泥臭さとか必死にやる姿勢をファンの方には見せたいと思う」と、力強く誓った。神宮で輝くその姿をファンも待ち望んでいる。


取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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