『イカゲーム』や『D.P.』に注目? 第58回百想芸術大賞受賞結果を大予想

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2022年04月23日 08:11  リアルサウンド

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イ・ジョンジェ、パク・ヘス、チョン・ホヨンら『イカゲーム』メンバー(写真提供=REX/アフロ)

 2022年も韓ドラファンにとっては祭りのような季節がやってきた。ノミネートが発表されてから5月6日の第58回百想芸術大賞の授賞式までの約1カ月を切り、この1年で誕生した数々のドラマを振り返りながら、受賞結果の予想を立て、結局「枠が足りない」となるまでが一連の流れだ。


【写真】最優秀演技賞でノミネートのジュノほか


 今年のノミネート作は、『イカゲーム』や『二十五、二十一』など日本でも話題の作品が多いため、百想への注目度も高いのではないだろうか。今回のコラムでは、「百想芸術大賞」とはどのような授賞式なのかを踏まえ、主要部門のノミネートを振り返りながら、それぞれの受賞予測を立てていきたいと思う。


■1年のナンバーワンを決める、権威ある賞「百想芸術大賞」


 「百想芸術大賞」は、韓国の数ある授賞式の中でも、映画・テレビ両方を扱った唯一の総合芸術賞であり、長い歴史と信頼ゆえに「韓国の演技者たちが最も受賞したい賞」とも言われる権威ある賞である。年末に開催される各局の演技大賞のようにチャンネルごとではなく、地上波・ケーブル・Netflix配信などを含む全てのドラマが対象となるため、百想こそ1年のナンバーワンを決める、名実共に最高の授賞式とも言える。


 『愛の不時着』がノミネートを果たした2020年頃から、日本でも百想が爆発的な注目を集めるようになった。だが、『愛の不時着』はノミネートのみで、作品関連の賞の受賞に至らなかったことからも、「百想で受賞すること」がいかに高いハードルかということがわかる。この年は韓国内で高い評価を得ていた『椿の花咲く頃』が、テレビ部門大賞を含む4冠を達成し席巻。昨年は、サスペンスの名作と名高い『怪物』が作品賞、シン・ハギュンの最優秀演技賞を含む3冠を達成している。


 視聴率や話題性だけではなく“芸術性”の観点から、作品性と演技力を優先した選択がされるため、どんなに高視聴率を記録しても、世界で話題になっていても「作品性」が評価されなければ、受賞はもちろん、ノミネートにも至らないのが百想だ。その厳しい判断基準が近年韓国作品がここまで飛躍してきた所以であるとも言える。ノミネートされている全作品がまだ観れないというのもあり、日本を含む海外での人気や評価と、韓国内での評価の違いが顕著にあらわれる賞とも言えるかもしれない。


 さて、その点を考慮して考えたい今年のノミネートだが、世界を席巻した『イカゲーム』が8部門にノミネート、「歴代最高の史劇」とも名高い『赤い袖先(原題)』も7部門にノミネートされており、両作品の競争が予想されている。今年は百想が『イカゲーム』をどのように評価するかが鍵になりそうだ。


■作品賞
『D.P. −脱走兵追跡官−』(Netflix)
『イカゲーム』(Netflix)
『二十五、二十一』(tvN)
『赤い袖先(原題)』(MBC)
『こうなった以上、青瓦台に行く』(wavve)


 さて、初っ端から予想が最も難しい作品賞。今年のノミネートは、『D.P. −脱走兵追跡官−』『イカゲーム』とNetflixオリジナルが2作品、wavveオリジナルの『こうなった以上、青瓦台に行く』と、OTTオリジナルコンテンツの躍進が顕著であり、日本でも話題性の高かった作品が名を連ねた。唯一日本で観ることができないのが、『こうなった以上、青瓦台に行く』だ。政治風刺を描くブラックコメディドラマで、韓国の映画雑誌『Cine21』が実施した映画評論家、テレビ評論家30人が選ぶ「2021年を輝かせた韓国ドラマシリーズ」にて、2位の倍近くの票を集め、堂々の1位に輝いている作品だ。


 今年の作品賞、脚本賞、演出賞など作品関連のノミネート作品をみると、サスペンス色が強かった昨年に比べ、『未成年裁判』『D.P.−脱走兵追跡官−』『こうなった以上、青瓦台に行く』と重いテーマを扱った社会派ドラマが躍進した印象だ。一方で『二十五、二十一』『赤い袖先』『その年、私たちは』といったロマンスドラマ復活の兆しも見えてくる。


 だが、まず作品賞を予想する前に、その上のテレビ部門の大賞を予想しなくてはならない。大賞は、 TV部門に含まれるドラマ・芸能・教養すべてが対象となる。各賞のノミネートの中から選ばれ、作品が受賞する場合もあれば、俳優・制作陣が個人で受賞することもある。


 これまでの受賞結果を見ても百想が極めて“作品性”を重要視することを鑑みると、大賞は、抜群の完成度を誇り、史劇でありながらも、今の女性の生き方にも通じる深いメッセージも投げかけた『赤い袖先』が受賞する可能性が高いと筆者は予想したい。『赤い袖先』が大賞を受賞するならば、作品賞はエンタメとして高い没入度を誇りながらも、軍隊の不条理と「傍観する社会」へのメッセージを投げかけた『D.P.−脱走兵追跡官−』の可能性が高いだろうか。もちろん大賞が『イカゲーム』(俳優のイ・ジョンジェ、ファン・ドンヒョク監督が個人受賞する可能性も)との見方もあるが、『赤い袖先』『D.P.−脱走兵追跡官−』の2作品が作品関連の賞を逃すというのは考えにくい。よって、『イカゲーム』は、演出や俳優関連の賞で受賞する可能性が高いのではないかと考えられる。いずれにせよ『イカゲーム』や『D.P.−脱走兵追跡官−』が大賞、もしくは作品賞受賞となれば、Netflixオリジナル作品として初の快挙となる。


■脚本賞
キム・ミンソク『未成年裁判』
ソンピョン、キム・ホンギ、チェ・ソンジン、パク・ヌリなど『こうなった以上、青瓦台に行く』
ペク・ミギョン『Mine』
イ・ナウン『その年、私たちは』
ファン・ドンヒョク『イカゲーム』


 大賞、もしくは作品賞を受賞した作品が、脚本賞を受賞する流れがここ6年間続いているが、作品賞にノミネートされている『赤い袖先』や『D.P.−脱走兵追跡官−』が脚本賞には並んでいない。『未成年裁判』と『こうなった以上、青瓦台に行く』の接戦が予想されるが、ここは未成年犯罪の実情を深く掘り下げた『未成年裁判』が一枚上手に見える。視聴者に多くの質問を投げかけた新人脚本家の筆力に感心せずにはいられない。


■演出賞
ユン・ソンホ『こうなった以上、青瓦台に行く』
イ・ナジョン『Mine』
チョン・ジイン『赤い袖先』
ハン・ジュニ『D.P.−脱走兵追跡官−』
ファン・ドンヒョク『イカゲーム』


■芸術賞
クォン・テウン『覆面歌王』『シンガーゲイン2』など
キム・ファヨン『赤い袖先』
オム・ヨンシク、キム・ダヒ『ユミの細胞たち』アニメーション
チョン・ジェイル『イカゲーム』音楽
チェギョンソン『イカゲーム』アート


 演出は、やはり五感を刺激する破格的なビジュアルを誇り、9話を通して緊張感を失わなかった『イカゲーム』、そして芸術賞も、一目見ても脳裏に焼き付くような、ポップでキャッチーな世界観を創り出した『イカゲーム』アートが有力だろう。


■最優秀演技賞(男性)
キム・ナムギル『悪の心を読む者たち(原題)』
イ・ジョンジェ『イカゲーム』
イ・ジュノ『赤い袖先』
イム・シワン『トレーサー』
チョン・ヘイン『D.P.』


■最優秀演技賞(女性)
キム・テリ『二十五、二十一』
キム・ヘス『未成年裁判』
パク・ウンビン『恋慕』
イ・セヨン『赤い袖先』
ハン・ソヒ『マイネーム:偽りと復讐』


 毎年「全員受賞でいいのでは?」と言いたくなるほど、錚々たる俳優たちが並ぶ最優秀演技賞。今年も大激戦が予想され、誰が受賞してもおかしくはない面々だ。


 最優秀演技賞(男性)は、海外の各種授賞式でも主演男優賞を獲得している『イカゲーム』のイ・ジョンジェと、『赤い袖先』でイサンの内面を繊細に描き出したジュノの一騎打ちのムードが強い。強烈なオーラで劇を導いた『悪の心を読む者たち』キム・ナムギルの受賞も大いにあるだろう。


 最優秀演技賞(女性)は、今年を代表するホットな女優たちが並んだ。『二十五、二十一』のキム・テリや、『恋慕』のパク・ウンビン、『マイネーム:偽りと復讐』のハン・ソヒと、日本でも話題に上がっていた今年の主人公たちがノミネートを果たしている。


 ここはやはり独特のオーラと圧巻の演技力で劇を導いたキム・テリと、変わらぬカリスマ性で圧倒的オーラを示した『未成年裁判』のキム・ヘスが有力に見える。聡明で一途、そして一本筋の通ったヒロイン像を描き出した『赤い袖先』のイ・セヨンの可能性も捨てきれず、最も結果が読めない項目だ。


■助演賞(男性)
イ・ドクファ『赤い袖先』
イ・ハクジュ『こうなった以上、青瓦台に行く』
イ・ヒョヌク『Mine』
チョ・ヒョンチョル『D.P.−脱走兵追跡官−』
ホ・ソンテ『イカゲーム』


■助演賞(女性)
カン・マルグム『39歳』
キム・シンロク『地獄が呼んでいる』
キム・ジュリョン『イカゲーム』
オク・ジャヨン『Mine』
チャン・ヘジン『赤い袖先』


 助演賞も、男女共に全世界の人々の心を捕らえた演技派俳優たちが並んだ。助演賞(男性)は、重みのある演技で作品に深みを加えた『赤い袖先』のイ・ドクファと、傷によって壊れていく人間の姿を繊細に描き出した『D.P.−脱走兵追跡官−』のチョ・ヒョンチョルが有力に見える。イ・ドクファは『社内お見合い』で、チョ・ヒョンチョルは『調査官ク・ギョンイ』でそれぞれ180度異なる演技を見せており、昨年今年と多彩な顔を見せているのもポイントだ。


 助演賞(女性)は、『怪物』『ある日ー真実のベールー』でも印象的な演技を見せ、『地獄が呼んでいる』で“演技の怪物”と呼ばれた、キム・シンロクの受賞が有力ではないかと思われる。


■新人賞(男性)
ク・ギョファン『D.P.−脱走兵追跡官−』
シン・スンホ『D.P.−脱走兵追跡官−』
ユ・インス『今、私たちの学校は…』
チェ・ヒョヌク『二十五、二十一』
タン・ジュンサン『ラケット少年団』


■新人賞(女性)
キム・へジュン『調査官ク・ギョンイ』
イ・ヨン『未成年裁判』
イ・ユミ『今、私たちの学校は…』
チョ・イヒョン『今、私たちの学校は…』
チョン・ホヨン『イカゲーム』


 一生に一度しか受けることが出来ない新人賞は誰が受賞するだろうか。新人賞(男性)は、映画部門でもノミネートを果たし、今年大活躍だった『D.P.−脱走兵追跡官−』のク・ギョファンと、『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』での熱演も記憶に新しい『ラケット少年団』のタン・ジュンサンが有力か。


 新人賞(女性)は、27歳という年齢で中学生役を演じ、1話から視聴者に強い衝撃を与えた『未成年裁判』のイ・ヨンと、心を掴む演技で一躍グローバルスターとなった『イカゲーム』のチョン・ホヨンが有力に見えるが、『調査官ク・ギョンイ』で、強烈な印象を残したキム・へジュン受賞の可能性も捨てきれない。


 多大なヒット作と共に、常に変化し、進化し続けている韓国ドラマ。この激戦ラインナップの中で、今年は誰が、どの作品が栄光を手にするだろうか。韓国で5月6日に開催される授賞式が待ちきれない。


(Nana)


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