漫画やイラストで“恐怖”を表現するポイントは? プロイラストレーターが明かす「情報量」の魔術

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2022年05月02日 08:31  リアルサウンド

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リアルサウンド

動画サムネイル(https://www.youtube.com/watch?v=qCU0hbb8654)より

 漫画やイラストにおける「恐怖」とはどんな技術で表現されているのか。 そんなことを学べる動画がYouTubeにアップされた。


(参考:【写真】一見恐ろしいキャラクターイラストが、プロの添削でより怖く不気味に変化していく様子


 動画を公開したのは「ポケモンカード公認イラストレーター」としても活動するさいとうなおき氏。さいとう氏は視聴者のイラストに対して上達のためのアドバイスを送る「気まぐれ添削」と題した動画を、YouTubeで発信している。チャンネルは2019年10月1日に誕生し、以降、着実にファン数を拡大、現在では登録者数95万人超を誇る(※5月1日確認時)。


 4月30日にアップされた動画「【気まぐれ添削90】『恐怖』の描き方、解説します!」では、ペンネーム・スミカさんによる、不気味で恐ろしい男性キャラクター「エンラ」のイラストを添削することに。スミカさんは「色塗りについて教えてほしいです。特に洋服や髪の毛のところです」とリクエストした。


 まずさいとう氏はイラストを受け「怖くて不気味な絵の内容に反して、やりたいことがすごくはっきりしていてすごく気持ちの良いイラストです。独特なセンスの色使いを持っていて、鈍い色を使っているんだけれども鮮やかに見える工夫が行われていて、センスが素晴らしい方です」と評価した。


 その上でさいとう氏は「恐怖を描きたいとのことですが、その恐怖が画面全体に分散されてしまっています」「全体的に恐怖の色使いがなされているが、いまいち見ている人にそれが直感で伝わってこないんです。一枚のガラスを隔てた世界での出来事のような感じに見えてしまいます」と指摘した。不気味さを詰め込み、画面を恐怖で満たせばいい、というわけではないというのは、目から鱗だ。


 それからさいとう氏は大幅な変更を施していく。キャラクターをドアップで映し、見る人に与える情報量をグッと狭めた。そしてキャラクターの目線を真っ正面に直すことで、ガラス越しの世界ではなく、より恐怖感がダイレクトに伝わってくるように工夫した。


 さらにまつ毛や下まつ毛、目尻の部分などの密度をアップさせて、迫力を加えていく。それからさいとう氏は「恐怖を表現する時の1番のポイントは線を増やすことです」と断言。「楳図かずおさんのマンガを見てほしいのですが、あれも線を重ねに重ねてシワや陰影を強調しています。そうすることで見てる人に恐怖感を与えることができるのです」と解説した。


 さらにここから、キャラクターの持つカッコよさを排除して、徹底的に「恐怖」にアプローチした添削を行っていくさいとう氏。想像力を膨らませて、イラストで恐怖を表現していく姿は圧巻だった。


 さいとう氏が伝えたのは、「目鼻口のバランスは保持しつつ、線を増やすことで、恐怖感を強調する方法」。そして「人間のバランス感をあえて崩すことで不安感と恐怖感を掻き立てる手法」の2点だった。これから夏に向けて、ホラー作品の需要が上がっていく中で、参考になったクリエイターも多かったことだろう。絵から感じる「恐怖」の正体を知りたい人は、ぜひ動画をチェックしてみよう。


(中山洋平)


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