軟式球製造メーカー会長が「少年野球メディア」を個人運営する理由

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2022年05月06日 21:22  ベースボールキング

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強豪少年野球チームの監督から、無名チームの監督まで、全国の多くの少年野球監督にインタビューを行う少年野球メディア『ベースボールジャパン』。膨大なインタビュー動画と記事に圧倒されますが、撮影から編集、文字起こしまで全て1人で行われています。このサイトを個人運営しているのは、軟式球を製造・販売する「ナガセケンコー」の長瀬泰彦会長。今回はその取材の現場にお邪魔してお話を伺うことが出来ました。



【発信していくことが私の使命】
——「ベースボールジャパン」の運営を始めたいきさつを教えてください。

仕事柄、野球の専門家の方とのお付き合いも多いんですけども、「今、学童野球はこうなっている——」というようなお話を耳にしたんです。でも「自分が聞いてきた話と違うな……」と感じることがよくありまして、だったら自分の目で見て、体験することが一番いいんじゃないかと思ったんですね。それで、まずは試合の監督さん何人かに話を聞いてみようということになり、そのうちにその様子をYouTubeにアップしてみようとなり、というのが始めたいきさつですね。

——今までどれくらいのチームを取材されてきたのですか?

正確に数えたことはないのですが500チームは超えていますね。

——取材するチームを選ぶ基準はあるんですか?

特に基準はないですけど、地区が偏らないようには意識していますね。同じ地区ばかりだと見ている方もつまらないですよね。もちろん大会などで一度に同じ地区のチームをいくつか取材することもありますけど、なるべく偏らないようには意識しています。

——誰に、どんな風に見てもらいたいと思っていますか?

全国の少年野球の監督さんや保護者の方に向けて発信していますけど、「このチームはこんなことをやっているのか」「もっとこうすればいいのか」など、(「ベースボールジャパン」を見ることによって)自分の引き出しを増やすような感じで見て欲しいなと思っています。技術的な情報や交流はたくさんあると思うんですけど、チームの運営方法などの情報は共有されていないんですよね。そういったことを取材して発信していくことが私の使命だと思ってやっています。

——取材をしてこられて印象に残っているチームや監督さんはいますか?

初心者向けのチームの監督さんの話になりますが「甲子園やプロを目指しているような子ども達は、こっちが何をやらなくても野球をやる。でも野球をやろうかやらないか迷っているような子達に野球を教えるのが自分の使命です」とお話された監督さんの言葉が印象に残っていますね。どこのチームだったか名前は忘れてしまいましたけど(笑)。

——このメディアを始められる前から、やはり少年野球の現場を見る機会は多かったのですか?

そうですね。自分の息子も学童野球をやっていましたから、その頃が一番良く見ていましたね。息子は高校まで硬式でやって、大学でも軟式野球をしていました。

——ちなみに長瀬さん自身も野球はやられていたのですか?

私は少年野球までしかやっていないんです。そのあとはテニスをやっていました(笑)。
【小さい頃はいくつかのスポーツをやった方がいい】


——自分の息子さんがやっていた頃の少年野球と現在の少年野球を比べて、何か変化を感じることはありますか?

少年野球も変わったなと思うチームもありますし、全く変わっていないチームもありますね。レベル的な話をすれば、息子がやっていた頃、15、6年前と比べて4年生以下のジュニアチームのレベルが上がったと思います。昔はフォアボールばかりで試合にならなかったことがほとんどでしたから。それが今はちゃんと試合になっています。あとは少しずつ、「野球を楽しもう」という機運が出てきたように感じます。従来の少年野球のチームって、とにかく勝つことにこだわる、優勝を目指す、そのためには厳しくやる、みたいな1つの種類のチームしかなかったですよね。それが最近は楽しむことに主眼を置いて活動するチームが増えてきましたね。少年野球を楽しむ幅が少しずつ広がってきているんじゃないかと感じています。

——「変わっていないチームもある」というのはいわゆる勝利至上主義みたいなチームのことでしょうか?

勝利至上主義というか、私の意見としては、毎週ガッツリと野球をするチームも良いと思うんです。でも同じようなスタイルのチームが多すぎて、どこに入ってもあまり変わらないのがちょっと気になります。もっと、「野球に興味はあるけれど、そんなにガッツリやるほどでは……」という子達を取り入れる、新しいチームも必要だと考えています。

——少年野球人口が減少していますけど、多くの現場を見て回っている長瀬さんはその原因を何か感じることはありますか?

野球に限らずですが、チームスポーツというものが選ばれにくくなっているというのがあると思います。あとは入部すると親も子もコミットメントみたいなものがありますよね。そこら辺のハードルを少し下げられたらいいのかなと思います。どこかのチームが、チームに入っていなくても「ゲスト制度」として、練習に参加できるようなことをやっていて、すごくいいなと思ったんです。そういうことを取り入れるのも入部の敷居を下げる一つの方法かなと思いますね。チームに所属するほどではないけども、野球をちょっとやってみたい、打ったり、投げたりしてみたいという子どもも多いと思うんです。

——確かに大谷選手のホームランを見て「野球をやってみたい!」「ボールを打ってみたい!」と思う子どもは多い気がしますね。でもチームに入団しないと野球ができないとなると、ちょっと敷居が高い気はしますね。

そうなんです。単純に打ったり、投げたりしたいだけなのに、それなのに入団して、毎週土日の練習に参加しないとそれができないとなると、野球をやってみるハードルがものすごく高くなりますよね。そういう子達が気軽に参加できるような、受け皿になるようなことが、もっとできたらいいなと思います。もちろん高いレベルを目指すチームも必要だと思いますけど。

——最後に、もしも長瀬さんが少年野球界を好きなように改革できるとしたら、何をどうしたいですか?

トーナメント制ではなくて、カテゴリー分けしたリーグ戦にしたいですね。今は年齢と硬式、軟式というボールの違いでカテゴリー分けがされていますけど、その辺のカテゴリー分けを見直したいですね。一部、二部のように競技のレベルで分けるのがいいのか、勝ちを目指すか、楽しくやりたいのかという気持ちの部分で分けるのがいいのかはちょっとまだ分からないですけど。そうすることで全国優勝を目指しているチームと、出来て間もない楽しむことを目的にしているチームがトーナメントの初戦で戦うようなミスマッチもなくなると思いますしね。

長瀬さん、お忙しいところありがとうございました!

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