『ちむどんどん』『エール』『スカーレット』 朝ドラが描く、三姉妹の奥行きのある人生

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2022年05月15日 06:01  リアルサウンド

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『ちむどんどん』(写真提供=NHK)

 開始間も無くして父・賢三(大森南朋)が亡くなり、母・優子(仲間由紀恵)が倒れ、兄・賢秀(竜星涼)はケンカ沙汰を起こす。極め付けは暢子(黒島結菜)の上京にまつわる借金問題……。


【写真】喜美子(戸田恵梨香)直子(桜庭ななみ)百合子(福田麻由子)『スカーレット』の三姉妹


 『ちむどんどん』(NHK総合)のヒロインが育った比嘉家の暮らしはまさに波瀾万丈だ。その比嘉家に希望をもたらすのが、兄と妹たちの活き活きと個性豊かな表情だろう。今回は、三姉妹としても括ることができる家族を過去の朝ドラ作品と比較しながら改めて振り返っていきたい。


 朝ドラにおける三姉妹は非常になじみのある設定だ。第101作目の『スカーレット』では責任感が強く面倒見のいい長女・喜美子(戸田恵梨香)を主人公に、我が強くて自由奔放な次女・直子(桜庭ななみ)、優等生タイプでおっとりした性格の百合子(福田麻由子)が物語に色を添えた。第102作目の『エール』では主人公の相手役・音を二階堂ふみが務め、『ちむどんどん』のヒロイン・暢子と同じく三人姉妹の次女としてフォーカスされていた。


 『ちむどんどん』が5週目を過ぎて思うのは、比嘉家もまた、これまでの三姉妹と同様、それぞれのキャラクターに明確な性格の違いがあるということ。長女・良子(川口春奈)はしっかり者で責任感が強く、次女でヒロインの暢子は積極的で快活。三女の歌子(上白石萌歌)は幼少期から身体が弱く、引っ込み思案な性格だ。一見、ステレオタイプな長女、次女、三女の性格を当てはめたようにも見えるが、それぞれを魅力的な役者が演じることで、奥行きのある人生が浮き彫りとなる。


 ヒロインが三姉妹であることで、見えてくるものは多い。姉妹の存在は比較を用いてわかりやすくヒロインの性格を炙り出せるし、それが三人となれば対立構図でなく個性とみなされやすくなるだろう。比嘉家では、兄の賢秀が加わることでキャラクターはより深みを増す。良子が家族のために犠牲を買ってで、悩みながらも生き方を模索する姿は、長女である視聴者にとっても共感できる部分があるのではないか。その一方で、末っ子として頼られることの少なかった歌子が、特技の歌を活かして長男の賢秀を救うという構図はドラマチック且つ胸のすく展開でもある。こうして兄妹、そして姉妹の関係を描くことで我々視聴者は分かりやすく共感したり反発したりしながら作品に引き込まれていくのだ。


 朝ドラの醍醐味は、なんと言ってもヒロインの「人生」が描かれること。そしてそこにはヒロインの姉妹たちの人生も付随して描かれる。『スカーレット』で、戦争のトラウマを抱えた次女・直子には我儘なところもあったが、大人になったある日、派手でインパクトのある女性として現れた。鮫島(正門良規/Aぇ! group)という得体の知れない男を連れて「一発当ててやる」と豪語するような向こう見ずさが、ある種の魅力でもあった。『エール』において、三女の梅(森七菜)の芸術家肌な側面は『ちむどんどん』の歌子と通じるところも。


 沖縄本土復帰の日、暢子は希望と不安を胸に東京へと旅立った。今後の暢子の暮らしはもちろんのこと、良子と歌子がどのような人生を歩み、どのような感情を抱き、そしてヒロインである暢子と、どのような家族関係を築いていくのかも楽しみである。


(Nana Numoto)


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