コロナ禍でも「脳動脈瘤」治療の手術数を増やした病院とは? 前年比142%の理由

0

2022年05月17日 08:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真福岡脳神経外科病院(同院提供)
福岡脳神経外科病院(同院提供)
脳卒中の一つで発症すると致命的になる「くも膜下出血」は、脳動脈瘤(りゅう)とよばれる血管の瘤(こぶ)の破裂が原因となる。その破裂を予防したり、あるいは破裂した瘤の再破裂を防いだりするする治療が脳動脈瘤治療だ。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査を実施し、回答結果をもとい手術数の多い病院のランキングを掲載している。今回調査した2020年の実績は新型コロナウイルス感染症が蔓延している年で多くの病院が治療数を減らす中、福岡脳神経外科病院(福岡市)は脳動脈瘤治療数を前年比142%と増やした。その理由について、理事長の風川清医師に聞いた。


*  *  *


 福岡脳神経外科病院は脳動脈瘤治療の治療数ランキングで、2019年の全国13位(治療数156件)から2020年の全国6位(治療数221件)へと順位を上げ、治療数も65件増やした。同院は2017年に開院したばかりの病院で、年々大きく治療数を伸ばしている。


「コロナについては、他の病院と同様にマイナス面の影響を受けたのは事実です。ただし、当院は脳外科の単科病院という性格上、脳疾患で入院している患者さんが、コロナに感染することは命に関わりますので、コロナの検査をして陽性だった場合は、他の総合病院を紹介してそちらで対応していただくことにしていました」


 そう話す風川医師は、同院がコロナ禍でも治療を増やした理由についてこう続ける。



「コロナのタイミングで治療数が増えたのは事実ですが、コロナとの因果関係はあまりないと思います。確かに『東京の大学病院で手術の延期を言われたので当院でやってほしい』というようなケースもありました。しかしコロナの影響で他院が対応できずに脳卒中の患者さんが送られてきたというようなことは、1〜2%程度に過ぎません。たまたま2019年ころから当院は脳血管内治療のフローダイバーターという治療が増え、それがコロナ禍のタイミングと重なったことが大きな要因だと思います」



 同院の脳動脈瘤の治療数は、未破裂動脈瘤に対する脳血管内治療がほとんどだ。そして近年、脳血管内治療では、従来の瘤のなかに金属性のコイルを詰める治療以外に、フローダイバーターという治療が増えている。瘤の出口のところでステントという細かいメッシュの金網の筒を広げ、ステントに瘤内の血流がブロックされ、血栓ができて固まり、瘤が半年から1年で脳動脈に吸収され徐々になくなるという治療法だ。


 同院はその治療が、2019年あたりから増え続けていて、2020年の治療数の増加はそれが理由だと風川医師は説明する。


 2020年、コロナが一番猛威を奮っていた6月、7月あたりは入院患者も手術数も若干減った時期はあったが、コロナが収束しはじめた2020年9月から手術は再び増えたという。


「予防的な手術ですから、一時期は躊躇して受診控えをしている患者さんが少なからずいたとは思います。しかしその間に、症状が悪化したという経験は幸いここ2年ありません。そして、当院は外来で診て手術が必要である多くの患者さんは2週間から1カ月以内には手術をおこなうようにしています。こんなに多く手術をしていても1カ月以上先の予定は通常ほとんどありません。未破裂動脈瘤は予防的な手術なので、患者さんの仕事の都合などで2カ月先に予定を組むということはありますが、原則は1カ月以内に手術をします」


 近年、未破裂脳動脈瘤では、開頭手術ではなく脳血管内治療を希望する人が増え、同院が脳血管内治療の数が多く、治療に定評があることを知って来院する患者が増えている可能性はあると、風川医師は話す。


「当院は、私の指示のもとでないと手術はおこないません。そして脳血管内治療に関しては緊急も含めて、夜中の手術でもすべて私が入ります。直接執刀しなくても必ず手術室に入ります。もちろん10人いる執刀医それぞれが常に全力投球で最善を尽くしています」


 現在、日本において脳動脈瘤の患者数が増えているというデータはない。しかし、今後はますます主要な病院に治療が集約化されていく可能性があるため、症例数の多い病院がさらに手術数を増やすことになるだろうと風川医師は話す。



「未破裂脳動脈瘤に関しては特に、特定の施設に集約していくと思います。福岡県では昔から北九州の小倉記念病院が有名です。我々は5年前に開院したばかりですから、小倉記念病院を目標にしてがんばってきました」


 同院の脳動脈瘤の治療数はコンスタントに増え続け、2020年実績では、目標であった小倉記念病院を上回った。


「励みになっています。ただし、このくらいの手術数が当院としてのキャパシティーの限界だと考えています。それで、来年度は近隣に新病院をつくる予定です。現在の病院の機能を3分の1程度そちらへ移転させ、さらに治療態勢の充実を図ります」


 脳動脈瘤の治療で助けることのできる潜在的な患者はまだまだいると風川医師は言う。


「だから、地域の信頼と要望に応えられるように、これからも尽力したいと考えています」


(文・伊波達也)



【おすすめ記事】コロナ、脳動脈瘤で死を意識したクロちゃんが朝5時半からジムに通って準備する老後


    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定