高校時代は「帰宅部」の東大出身力士が3戦全勝 琉球大出の元三段目一ノ矢も「プロ向き」と太鼓判

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2022年05月17日 11:00  AERA dot.

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写真東京大学出身の須山(写真:日本相撲協会提供)
東京大学出身の須山(写真:日本相撲協会提供)
 大相撲初の東京大学出身者・須山が、夏場所のデビュー戦を白星で飾った。コロナ禍をきっかけにプロを志望した遅咲きの力士に期待が集まる。AERA 2022年5月23日号の記事を紹介する。


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 大相撲夏場所3日目の5月10日、史上初の東京大学出身力士が国技館の土俵に上がった。文学部人文学科哲学専修在学中の須山穂嵩(180センチ、104キロ、木瀬部屋、24)。新弟子同士が対戦する「前相撲」で、山田海(出羽海部屋、16)を相手に踏み込み良く右を差すと、そのまま前に出て一方的に寄り倒す堂々たる取り口。その後、昨年の全国学生相撲選手権(インカレ)で日本体育大学の団体優勝に貢献した今関(玉ノ井部屋、22)にも快勝するなど、3戦全勝と上々のデビューを飾った。


■大学で相撲を始める


 埼玉県ふじみ野市出身。中学時代は野球部で、さいたま市立浦和高校では「帰宅部」。相撲を始めた東大相撲部で、秘めた才能を開花させた。大きな大会での上位入賞経験はないものの、勝負度胸が良く、まわしを取っての思い切り良い投げや、土俵際で回り込んでの突き落としを武器に、日本大学、東京農業大学、専修大学、早稲田大学など格上の大学の経験豊かな選手を何度も破っている。


 コロナ禍で3、4年生時は大会数が激減。不完全燃焼の思いを抱えるなか、プロ入りを志望した。ネックになったのが25歳未満という新弟子検査受検の年齢制限。“2浪1留”の須山は今年9月に制限を超えてしまう。それでも、思いは揺るがなかった。在学中のまま入門。来春の卒業を目指しながら二足の草鞋(わらじ)を履くことになった。


 東大出身のプロ野球選手は、現役の宮台康平(ヤクルト、26)を含めて6人いる。大洋(現DeNA)でプレーした新治伸治は投手として通算9勝。元中日の井手峻は投手から外野手に転向して通算359試合に出場し、本塁打を1本放った。


 初の東大出身力士である須山には、一人前の力士の目安である十両昇進が大きな目標となる。過去に国公立大出身の力士は4人いるが、いずれも十両昇進は果たせていない。私立の強豪大学で須山をはるかに上回る実績を残してきた力士でも、関取になれなかった者は多い。



 壁を破るためには何が必要か。国公立大出身力士の先駆者で、46歳まで現役を務め、引退後は高砂部屋のマネジャーも務めた元三段目一ノ矢の松田哲博さん(琉球大学理学部物理学科卒、61)はこう話す。


「大学時代のことは全部忘れて、真っ白な気持ちで臨むことが大切」


 生活のすべてを相撲に捧げるプロの世界は、学生相撲とは大きく異なる。毎朝の稽古は、技術だけでなく、プロとしての体をつくることから始まる。学生相撲でトップクラスだった力士から、入門当初は体力的にきつくて稽古についていけなかったという声も聞いた。


 相撲部屋は集団生活。ちゃんこ番などの雑用があり、付け人として関取の世話もしなければならない。急激な環境の変化になじめず、力を発揮できずに土俵を去るケースも多い。須山は大学も親元から通っており、その点が心配される。


■物おじせずにプロ向き


 しかし、松田さんは、


「おそらくだいじょうぶだと思います」


 と語る。入門前に東大相撲部主催の壮行会で会って話をした時の印象から、「おおらかで物おじせず、プロ向きの性格」と感じたという。


 24歳での入門は年齢的には遅いが、相撲経験は4年足らず。伸びしろはまだまだある。今は細い体も、稽古して食べて寝る相撲部屋での生活を過ごせば、自然とプロの体になっていくだろう。


 相撲部に限らず、全国各地の大学の体育会やサークルは、コロナ禍で新入部員勧誘活動がままならず、危機に陥っているところも多いという。大学から相撲を始めた須山の活躍が、存続に向け奮戦する学生や関係者の励みになることにも期待したい。(相撲ライター・十枝慶二)


※AERA 2022年5月23日号



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